#とれいち 今年もありがとう
もうすぐ、「キリン一番搾りとれたてホップ生ビール」が全国発売しますね。皆さんは飲んだことありますか?
私はこのビールが大好きです。毎年、発売日を楽しみにしています。
今年もこの季節がやってきたね、ということで、「キリン一番搾りとれたてホップ生ビール」に関する個人的な気持ちを書いてみようと思います。
このビールは地域と密着していて、地域の人にとって大事なものなんだよ、という感謝の気持ちを、原料のホップの生産地・遠野に住む1人として伝えたいのです。
「キリン一番搾りとれたてホップ生ビール」、文字数が多いですね。この先は、普段から呼んでいる「とれいち」という愛称で紹介します。「とれいち」って可愛くないですか。では、本題です。
『遠野の地ビール飲む?』
私は2016年に岩手県遠野市に移住しました。なぜ遠野に移住したのかについては割愛しますが、東京の大きな会社を辞めて、衰退していく日本産ホップの再興、ビールによるまちづくりに挑戦することになりました。
ホップというのはビールの重要な原材料で、遠野は半世紀以上栽培を続けている地域です。しかし、ホップ農家の高齢化や新規参入が難しい農業ということもあり、生産量はピーク時の1/5に減るほど衰退しそうになっています。そんな状況を乗り越えて、日本産ホップの価値を広め、農業と地域を盛り上げていこうというのが私の取り組むプロジェクトです。
ホップとビールを盛り上げていくぞ!と遠野に移住したばかりの頃、どのようにプロジェクトを進めていこうかと悩みました。まずは地域を知るために、地域の人が集まる色々な場所に顔を出して話を聞いてまわっていました。
ある時、地域の方の家にお邪魔して夕食をご馳走になった際の出来事です。
おばあちゃん:「遠野の地ビール買っておいたけど、飲む?」
私:はい!(ズモナビールかな...?)
ズモナビールというのは、上閉伊酒造が遠野で20年前からつくっているビールです。当時、”遠野の地ビール”というと、ズモナビールを想像するしかありませんでした。
出てきたのは、今回のテーマでもある「とれいち」でした。
もちろんこの商品のことは知っていましたが、地元のおばあちゃんが”地ビール”として出してきたことに驚きました。
おばあちゃんはビールについて紹介してくれます。
「これはね、遠野のホップを使ってるんだよ。ラベルにも書いてあるでしょ。遠野はね、ホップが有名なんだよ。」
誇らしげに、移住したばかりの私に教えてくれました。
この時、自分がこれから取り組むプロジェクトはうまくいきそうだな、と思ったのを覚えています。
この出来事の前までは、衰退していくホップ農業を、「かつては地域の誇りであったが今はもう違う」というように捉えていました。事実として生産者や生産量が減っているので確かにそういう側面もあったと思います。でも、このおばあちゃんの言葉は、これからプロジェクトを進める私にとって希望だったのです。
遠野には、ホップに対する「地域の誇り」がまだまだ残っていました。「とれいち」がその誇りを繋ぎ、大事な役割を果たしていたのだと個人的には思っています。全国発売されるビールに、遠野のホップを使っていることを大きくPRしてくれて、缶のラベルに「遠野」という文字も刻まれています。一時は、嵐を起用したCMも放送されていたのです。人口27000人弱の小さなまちの名前が全国発売されるビールに刻まれるって、それは本当に嬉しかっただろうな、と想像します。
小さな出来事ですが、この時に感じた希望が、私が遠野でホップとビールのプロジェクトを進めていく原体験なようなものになっています。
『今年のとれいちは特別に香りがいいんだよ』
「とれいち」をめぐる出来事はまだあります。
遠野では、この「とれいち」を全国販売される前日に飲むことができます。「初飲み会」というイベントが開催され、そこで樽生の「とれいち」を飲んでお祝いをします。もちろん、地元のホップ農家の皆さんも招待され、今年も素晴らしいホップを栽培してくれてありがとう、と感謝を伝える場でもあります。そのイベントでのお話です。
毎年の「とれいち」に使用されるホップを栽培したのは◎◎さんというように、プロモーションに使ったりするわけではないのですが、キリンやホップ農協側では生産者が認識されています。ホップ農家の方にとってみれば、全国に発売され、地域でもたくさん飲まれる「とれいち」に自分が大事に育てたホップが使用されるということは、本当に嬉しいことで、誇りなのです。
去年の初飲み会で、「とれいち」に使用されたホップを栽培した農家の方に呼び止められました。「もう飲んだ?今年のは特別に香りがいいんだよ。天候も良くてね。いいホップができたんだよ。」と嬉しそうに教えてくれたのです。その農家さんは、素敵な笑顔で、同じ話をいろんな人にしていました。
ホップ農業は高齢化が進み生産量が減っていますが、現場では農家の皆さんが毎年大事に育て、その栽培の歴史を少しでも未来へと繋げてくれています。大変なことも多いでしょう。通常、原料を栽培する農家にはスポットライトが当たらないことがほとんどです。そんな農家の皆さんにとっても、この「とれいち」は自分たちが続けてきたホップ農業が注目される大事な機会になっていると思います。ここでもホップに対する誇りが醸成されていたのです。
地域から見ると「とれいち」はただのシーズナル商品ではない
全国発売日の前日、スーパーにはたくさんの「とれいち」が並べられ、地元の人がどんどん購入していきます。解禁日の夜からは、地域の人のSNSには「今年のとれいち飲んだよ!」の投稿があふれます。そして、遠野の飲食店のほとんどで「とれいち」を飲むことができます。普段、キリンのビールを置いていないお店でも。みんなこの日を待っているのです。
そんな風景を見ると、「とれいち」は地域に愛されていて、地域から見ると数あるシーズナル商品のひとつという事では片付けられないなと思います。
地域のホップに対する誇りを紡いできた役割を考えると、ソーシャルグッドな商品でもあると思っています。
遠野に住んでいるからこそ見える景色、商品に対する想い、地域への影響、そんなことを、これから全国で「とれいち」を飲んでくださる飲み手の皆さんに少しでも届けられればと思い、ここまで書かせていただきました。スーパーなどで見かけましたらぜひ手にとっていただけると嬉しいです。
今回は私自身が感じたこと、私から見えていることを書きましたが、たぶん遠野に関わる方にもそれぞれの「とれいち」への想いがあると思います。いつかそういったストーリーも掘り起こしていきたいなと思っています。
最後に。キリンの皆様へ。
仕事柄、キリンの社員の方々と打ち合わせをしたり、交流することが多いのですが、この文章は、飲み手の皆さんだけでなく、キリンの中の人にも届くといいなと思っています。皆さんが長く販売を続けてくださっている商品は、地域においては、本当に大事な存在になっていますよ、ということを改めて伝えたいのです。
今年の「とれいち」。本当にありがとうございます。
今年もたくさん飲みますね!
「とれいち」キリン一番搾りとれたてホップ生ビールhttps://www.kirin.co.jp/products/beer/ichiban/toretatehop/
遠野市のふるさと納税でも「とれいち」が手に入ります
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追記:
このエントリーを書いた翌日に、KIRINの公式noteで、遠野で一緒に活動する浅井さんの記事が公開されました。私のnoteも最後の方に載せていただきました。(私のnoteが公開されてすぐに、掲載してもいいですか?とお問い合わせをいただきまして、嬉しかったです)
https://note-kirinbrewery.kirin.co.jp/n/nf04ad6298504
◎書いた人◎
田村淳一
株式会社BrewGood 代表取締役/ 株式会社遠野醸造 取締役
2016年にリクルートを辞めて遠野に移住し、遠野醸造というマイクロブルワリーと、BrewGoodという会社を経営しています。BrewGoodではまちのブランディング(http://brewingtono.jp/)、制作、ホップやビールにまつわる新規事業の立ち上げと支援、新規ブルワリー開業の支援などをおこなっています。
twitter : https://twitter.com/tam_jun Mail:info@brewgood.jp
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