ハロー!ワーク!

【シークエンス】

 

あれからわたし考えてみたんだ、ハローワークで順番待ちしながら

何を考えてみたの?

どうすれば世界が生まれ変われるのか、に決まってるじゃない。ほかに考えるべきことなんてある?

そうだった。ぼくらは世界を生まれ変わらせるんだ

忘れていたの?

いや、忘れてないよ

きみにとってはその程度だったの、世界を生まれ変わらせることって

そんなことないよ。それ以上に大事なことなんてぼくにはない。それで、何かわかった?

そうだね、わかったようなわからなかったような

うん

見えたような見えなかったような

うん、うん

それに触れられたような触れられなかったような

・・・それで、どっちなの

しっ、答を急がないで!

えっ

それは至るところでわたしたちを監視してるの。あの窓際のサングラスの男、きみの後ろで不自然にイチャつくふたり、ほかにも何組みか配置されてる。見ちゃだめ!

『ミッション:インポッシブル』みたいだね。いったい何の話?

この世にはわたしたちには想像もつかないような真実がまだまだ隠されてるってこと

想像もつかないような真実?

そう、想像もつかないような真実。いま、わたしたちを監視している連中は、あの世界から潜ってきたんだと思う

あの世界って?

いつも本棚の向こう側から覗いているひとたち

ああ、『インターステラー』の話ね

きっと電話ボックスであの世界と行き来してるのよ

えーと、それは『マトリックス』だ。でも、いまの時代電話ボックスないよ

彼らから見たらわたしたちなんて二進法で構成されたドットの集合体みたいなものなの

コンピュータのなかにいるみたいな?

そう、だからそれに気づいたわたしたちはバグみたいなもので、システムから排除されてしまうかもしれない

でも、きみは気づいているようだけど、ぼくは気づいてないよ

・・・その減らず口にこのタバスコを突っ込んでヒーヒー言わせてやろうか、ぺっ

え、ここで噛み煙草のクリント・イーストウッドなんだ

あー、つまんない。

それで、いい仕事あった?

うーん、あったようななかったような

うん

よかったようなわるかったような

うん?

ねぇ、仕事ってなんだろうね

うーん、この行数で振る話としては重いから、続きはまたにしない?

じゃあ、ひとつだけ。ハローワークって、ハロー!ワーク!的な西海岸風なカラッとした明るさを意図した名称だと思うんだけど、なんか、どんよりしてるんだよね、空気が

うん、そうかもね。みんな切実だから

そうか、ハローワークの雰囲気を変えることが世界を生まれ変わらせる第一歩なんだ

え、そうなの?

そうだよ。言ってみて。はい! ハロー!ワーク!

ハ、ハロー、ワーク

もっと明るく!

ハロー、ワーク!

もっと元気にー!

ハロー!ワーク!

はい、OK! じゃ、わたし行くね。

あ、うん、じゃ、また

 

 

tamito

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