【Razz】見た目が不利な状況下でのコール/フォールド判断について
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はじめに
はじめまして、たみると申します。
MIXゲームが好きで、アミューズやオンラインなど色々な場所でプレーしています。
NLHE以外のポーカーが日本で流行りつつあるというのは誰もが認めるところだと思いますが、その中で私が感じていることが一つあります。スタッドゲームとドローゲームの人気の差です。
確かに、スタッドゲームは地味です。ドローは引くという行為自体が楽しいですし、私自身2-7のNo.1程度であれば幾度となく引いてきましたが、未だに引く度に脳汁が溢れ出します。
それに対して、スタッドゲームにはそういった瞬間はあまりありません。
強いハンドを早々に引けても見た目が強すぎることから降りられて終わりになることが多く、一番稼げるのは見えにくい形のストレートやロー完成に見せかけたツーペアなどの陰湿なハンドです。
しかしながら、スタッドゲームはそんな脳汁要素に頼らずとも、戦略が分かってくると非常に面白いゲームであると私は考えています………が、残念ながら具体的な戦略について触れている日本語の文章は非常に少ないように感じます。またスタッドに限った話ではないですが、ソルバーがないゲームをどのように勉強すればよいのか悩んでいる人は多いのではないでしょうか。
というわけで、自分から発信したいと思います。今回は最初ということで、地味なスタッドゲームの中でも地味極まりないRazzについて書きます。
ルールなどの基本的な知識については、木原さんのブログなど既に良質な記事が公開されているので割愛します。本記事では基礎はある程度分かっている前提で、Razzで頻出かつ難しいと思われる「こちらが不利な状況でコールすべきかどうか」という状況の対処と、その判断力を身につけるための方法について説明します。
以下、実戦を想定したコール判断の問題を3問出し、解説でそのポイントについて取り上げます。それぞれコールすべきか、すべきでない場合はどの程度マシなハンドであればコールなのかも含めて考えてみてください。
問題
前提:
6handed、2-3-10-20
(Ante2、Bring-in3、Small10、Big20)
Effective Stackは十分大きい(>10Big)
Q1.
全員のドアカード: 3 5 J 6 8 K
Hero: 5(76)
3rd: 3のコンプリートに対してHeroがレイズ、3がコール
4th: 5A(76) vs 32(xx)
相手チェックにベットして32がコール
5th: 5A9(76) 324(xx)
324にベットされてコールできる?
Q2.
3 7 5 A 2 T
Hero: 3(62)
3rd: Heroがコンプリートして2がコール
4th: 3J(62) vs 2J(xx)
相手チェックにベットして2Jがコール
5th: 3JQ(62) vs 2J4(xx)
2J4にベットされてコールできる?
Q3.
3 8 Q J 6 K
Hero: 6(T5)
3rd: Heroまでフォールド、コンプリートしてKがコール
4th: 6Q(T5) vs K7(xx)
Heroチェック、ベットされてコールできる?
解答・解説
Q1. 5A9(76) vs 324(xx)→コール
相手のxxを3でない8以下の異なる2枚とした場合、9765Aは36%のエクイティがあります。
5th打たれる前のポットが75、5th〜7th全部確実に打たれるとすると出す額が60なので必要オッズは31%となり、オッズに合うのでコールすべきです。
必要オッズは20/(75+40)=17%では?と思うかもしれませんが、この5thの瞬間のオッズでオッズコール判断をしてはいけません。
今回のケースであれば次に相手がハイカード、こちらが2などを引いてチェックしてもらえる or こちらがリードベットを打てる可能性はありますが、Razzはアップカード(=見た目)が強い側が一方的に打てる、かつStud HiやStud8と比較してもアップカードの強さの逆転が起こりにくいゲームであるため、こちらが不利なストリートの次は必ず打たれるものと仮定して、その全額を出すことを念頭に置いてオッズを考えるべきであると言えます。
ハンドの話に戻ると、432xxは5ロー6ローなどの強いハンドがあり得るのでドローイングデッドを恐れて降りたくなるかもしれませんが、こちらに捲り目がある8ローの場合も多く、そもそも2や4がペアになっている場合はこちらがフェイバリットということを忘れてはいけません。この「少なくとも片方がペアになっている確率」は40%前後もあります。
じゃあ7ドローは全部コールでよいのか、という話ですが、例えば9765AではなくJ765Aの場合、エクイティは32%とかなり際どくなります。これは相手がペアになっている場合のエクイティが影響しており、
84432 vs 9765A:34 vs 66
84432 vs J765A:44 vs 56
と、Jローの場合はフェイバリットであるもののエクイティは大きく低下します。
34 vs 66はホールデムにおけるQTo vs AKs、44 vs 56はKQs vs A5sに相当すると考えると、いかにJローが心許ないか分かるかと思います。相手がペアってれば圧倒的有利、ペアってなくても7ドローでそれなりに逆転の目があるという二つの要素が両立して初めて、これだけアップカードが不利な状況でもコールに見合うようになるのです。
Q2. 3JQ(62) vs 2J4(xx)→フォールド
相手も現状最高でJローと弱く、632という強い3枚があるのでコールしたくなるかもしれませんが、素直にフォールドが正解です。
相手のxxを2以外の8以下2枚とした場合、5thのQJ632のエクイティはわずかに27%です。5th〜7th全部打たれるとした場合の必要オッズは(今回SRPなので)34%となり、6thや7thでチェックを貰える可能性を考慮してもコールには見合いません。相手のレンジにT92のようなT以下2枚が含まれるとしてもこちらのエクイティは31%で、やはりオッズコールのラインには足りません。
QJ632はフォールドでよいですが、もしQT632である場合はエクイティが36%となり一転コールが可能になります。
これは次こちらが良いカード(632以外のロー)、相手が悪いカード(ペアかピクチャー)を引いた場合にこちらのハンドはTロー、相手は最高でもJローとなり必ず逆転することができるためです。
このような、「次にこちらが最高のカード、相手が最悪のカードを引けば必ず逆転できるときはほぼコール可能」というのはRazzをプレーする上で最も重要な原則と言っても過言ではありません。あくまで「ほぼ」であって例外がある点は注意が必要です。また「必ず逆転」ではなく「逆転できそう」な場合は大体降りと考えてよいです。
Q3. 6Q(T5) vs K7(xx)→コール
相手の手の内は確実に2枚ともローのためローの枚数で負けているのが確定で、自分のハンドも全然強くないのでフォールド……ではありません。4th打たれる前のpotは32、5thも確実に打たれるとして出す額は30となり必要オッズは33%ですが、相手をこちらの6より小さい5以下2枚とした場合、QT65のエクイティは41%もあります。
ちなみにQJ65の場合は35%となり、今度はオッズギリギリでフォールドも検討できるラインになります。先ほどのQ2でも上から2番目のカードがJならフォールド、Tならコールという結論でしたが、お互いアップカードにハイカードが1枚見えている状況では6thでTローできていれば合格点という意識が重要です。無論お互いのレンジや残りのアップカードの強さによってTローでは足りないこともありますが、6th時点のJローとTローにはかなりの差があります。それに伴って5thでのJドローとTドロー、4thでのJ+ロー2枚とT+ロー2枚も大きく価値が異なるということです。
なお、6thのTローは相手の全てのドロー(Tローが現状勝っているJロー以下)に対してフェイバリットになります。これは2-7のJロー、A-5のTローが1枚ドローに対してフェイバリットなのと同じ原理です。
コール/フォールド判断に必要な要素
Q1では5A9(76) vs 324(xx)はコールできる、という結論になりましたが、こういった5枚対3枚のエクイティだけを覚えてもあまり意味はありません。なぜなら、Razzにはこういうカードの並び以外でエクイティ自体に影響するもの、エクイティには影響しないがコール判断を左右するものの二通りの要素の影響が大きいためです。
エクイティに影響を与えるもの
・相手のレンジ
(xx)の部分のことなので影響があって当然ですが、極めて重要な要素です。一般に、Razzのレンジは以下のように分類できます。
(1) 超タイトレンジ
6以下の異なる3枚が目安で、3rdで2betや3betを返すレンジです。Razzにおいては、ルースなレンジに対する2betはともかくタイトなレンジへの2betや3betをブラフで行う意味はほぼ皆無なので、3rdでアグレッシブにプレーされた場合はこのレンジ想定になります。
(2) タイトレンジ
8以下の異なる3枚が目安です。基本的にこのレンジでプレーすることが多いので、特に相手のレンジが狭かったり広かったりしない場合はこの想定で考えることになります。先ほどのQ1とQ2もこのレンジで考えています。
(3) ややルースレンジ
T以下1枚+8以下2枚が目安です。コンプリートに対しての広めのコールや、スチールがそこそこ狙えそうな状況でコンプリートするレンジです。必ずTや9を含むというわけではなく、キャップされたレンジとは限らないという点は注意が必要です(実際にはコールレンジはキャップされてることが多い気はしますが、、)
(4) スチールレンジ
8以下の異なる2枚+anyが目安です。後ろにローカードがいない状況を除き、スチールがかなり狙えそうな状況でコンプリートするレンジです。(3)との境界は曖昧で、エクイティの計算結果も大差ないことが多いので実践上は一つにまとめて考えてもよいかもしれません。
(5) any2
後ろにローカードが誰もいない状況でローを見せている時のレンジです。100%レンジなのでロールドアップもKKも含みます。
ただし、後ろがローではないとはいえTや9であったり、ヘッズアップでAnteが少ない場合はもう少しタイトなレンジを想定することになります。
実戦でコール判断をする際には、状況ごとの対各レンジのエクイティを覚える→相手の想定されるレンジを当てはめる→オッズに合うかどうかを考えるという流れになります。いくらエクイティの座学をしていてもこのレンジ想定を間違っては何の意味もないので、相手を観察することは座学と同じかそれ以上に重要です。
相手を過度にタイトに見積もってオーバーフォールドしてもEVロスはそこまで大きくないですが、スチールが少なすぎる相手にany2のレンジを当てはめるなど、過度にルースな想定をしてしまうと凄まじいEVを失うので特に注意した方がよいです。
この記事ではスターティングハンドの話はほぼしていませんが、一つだけ気になったので書いておきます。
「異なるローカード3枚」はプレーできるとして、A+33のようなペアを含むローカード3枚はどうなるのか?と思った方もいるかもしれませんが、ペアの片割れはピクチャーだと思ってプレーするのがよいです。
後ろにローカードがたくさんいるのにこのようなハンドで参加している人をたまに見ますが、かなり大きなミスだと感じています。 以下にエクイティの例を挙げますが、ペアの片割れは通常はQ、3枚目がドアに見えていればJ、4枚目もドアに見えていればTと同じぐらいの価値を持っています。
A33 vs Q64 … 49 vs 51
A33 vs Q64 dead:3 … 52 vs 47
A33 vs J64 dead:3 … 48 vs 52
A33 vs Q64 dead:33 … 56 vs 44
A33 vs J64 dead:33 … 51 vs 49
A33 vs T64 dead:33 … 47 vs 53
ローカードを2枚抑えているということ自体は強いのですが、7枚中大きい方から3枚目の数字で強さが決まる、つまり2回しかミスできないRazzというゲームにおいて、3rdの時点で1回ミスっているという罪はあまりにも重すぎるということです。
一方で、あくまでもエクイティという面ではA33=Q64なのであって、スチール成功率という面では明らかにA33の方が優秀であること、相手に3を引かれた際にペアになっている可能性が非常に低いという情報を得られるメリットなどを勘案すると、ピクチャーと完全に同一視してはいけないことは確かです。
・デッドカード
アップカードとして見えているカードのことです。デッドと言うと聞こえは悪いですが、ペアを避けたいRazzにおいては手持ちのカードが見えている(=デッドである)というのは有利なことです。
例えばQ1では3rd時点のデッドカードはKJ86なのでHeroの9765Aは1枚デッド、相手の432(xx)はデッドなしという状況になっていますが、これをKJ76のようにHeroのみ2枚デッドにした場合、エクイティは36%→39%に向上します。逆にKJ83とHeroデッドなし、相手1枚デッドにした場合、エクイティは36%→30%とエクイティは暴落してしまいオッズコールラインを下回ります。
スタッドゲームのカード暗記は難しいですが、最低限Razzだけは覚えたほうがよいです。StudやStud8と異なりハイカードとスートは無視でいいので、少し慣れればできるようになるはずです。
エクイティに影響を与えないもの
・ストラクチャー(Ante-Big比率)
要はAnteの額が大きいかどうかです。
一般にはBig Betの10%を目安に設定されてることが多いと思いますが、トーナメントではカラーアップの関係で10%から大きくズレることがあります。例えばWSOPのスタッドゲームのストラクチャーを見てみると基本は10%~12.5%の間ですが、中にはBig6000に対してAnte1000という歪なレベルもあります。これは8handedの場合、3000出してスチール成功すれば3倍返しの9000貰えるというボーナスタイムです。
Q3で5th込みでの必要オッズは33%と書きましたが、もしブラインドがAnte1000、Big6000のレベルである場合、必要オッズは9000/(7000+24000)で29%まで低下します。このオッズでエクイティ41%のハンドを降りていると話になりません。
微差といえば微差ですが、Anteが10%より大きい場合はやや広くスチールする、やや広くディフェンスするということはしっかり意識しておくべきです。
・バブルファクター(トーナメント)とレーキ(キャッシュ)
これらはともに得られるpotの価値を相対的に低下させるものなので、コールよりもフォールドに傾かせる要素になります。この影響がある場合、計算上ちょうどオッズに釣り合うようなハンドは降りてしまった方がよいです。当然ですがタイムレーキの場合影響はありません。
おわりに
Razzに限らずMIXゲーム、特にリミットゲームのエクイティ感覚やアクション判断というものは、
・ひたすら色んな相手とプレーする
・迷った場面を記録する
・迷った場面のエクイティを計算して、色々状況を変化させながらコールできるライン、降りるべきラインの感覚を掴む
ことでしか学べないと考えています。
MIXゲームをライブでたくさんプレーできる環境はなかなか限られていると思いますので、上記の経験を積むにはホールデム以外のゲームを一通りカバーしているPokerStarsでプレーするのが一番のオススメです。キャッシュゲームはお世辞にも賑わっているとは言えませんが、トーナメントは24時間様々なゲームが行われています。
今どきオンラインポーカーはマズいんじゃないか?と不安な方もいるかもしれませんが、この画像の通りPokerStarsは無料のプレイマネーを使うサイトなのでご安心ください。プライドを賭けたポーカーを楽しみましょう。
本編は以上になります。読んでいただきありがとうございました。質問や指摘、疑問に感じた点などございましたら、コメントあるいはTwitterで気軽にご連絡ください。
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