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NO MOUNTING, NO LIFE 『人生が整うマウンティング大全』は意外と本気だった
マウンティングと聞いて好意的な印象を抱く者はおそらく少ない。
私ももちろんそうであったし、今も良いこととは思えていない。『人生が整うマウンティング大全』を書店で見つけたとき、「(自分と同じで)底意地の悪い人もいるな」と思ったが、嫌みなだけでなく、存外タイトルの通りその効能を認めていたのは意外だった。
紙幅の半分以上は予想通りマウンティングの用例紹介に費やしている。「あれ、今Facebook見ていたっけ?」と思うくらいリアリティがあり、クスクス冷笑していると、不意に自分にも心当たりがあるもの(古典愛読マウント、俗世解脱マウント)が出てきてグサッとやられる。偏執狂的な網羅性のため、誰が読んでもワンサイドゲームにはならないだろう。
マウンティングは人に優しく、自分に厳しく
「人と比べるのは良くない」とは言うものの、メリトクラシー蔓延る世では比べるなという方が無理というか矛盾している。あからさまに、あるいは密やかに自身の優位性をアピールすることは、時に自己同一性を保つための藁をもつかむ行為ともなる。そもそも他者との交通において一切のマウンティングがないことなどあるだろうか。教育や老婆心でさえ、少なからずその要素を含まざる得ない。
ただ一方で、良いマウンティングと悪いマウンティングはあるように思う。例えばほとんど無自覚に垂れ流すものや、誰かを貶めるものは悪手である。相手に不快感を与えるばかりか、自身もマウンティングの恩恵を受けづらくなってしまう。
良いマウンティングの好例は、ピースの綾部氏が示してくれている。綾部氏は著書『HI, HOW ARE YOU?』の中で、日本では原宿や表参道に住んでいたし、ニューヨークでもトランプタワーとティファニーの間に暮らし、セントラルパーク大好き!と衒いなく言う。彼のマウンティングは率直で嫌みがない。もはやマウンティングではなく、皆に聞こえるだけの独り言なのかもしれない。
話をマウンティング大全に戻す。著者のマウンティングポリス氏は、ビジネスの成功にはマウンティングエクスペリエンス(MX)が重要だと指摘する。それはユーザーが気持ちよくマウンティングでき、自己肯定感を回復できるような設計であり、それこそFacebookやStarbucksを思い浮かべると分かりやすい。
MXはミクロなやり取りにも当然活用できる。自身がマウントをとる側の場合、相手に不快感を与えずに自身の優位性を誇示することは困難で、MXの設計はミリ単位の精緻なものとなる。
逆に相手のMXの最大化には相手にマウンティングさせてあげるという鷹揚な視座が肝要である。私は仕事柄人の話を聞く機会が多いが、その際に用いている技術もMXの設計と換言できる部分がある。
争いとマウンティングはなくならないけど
本書を読んで「マウンティングしてみたくなった!」みたいな感想は中々抱かないと思うが、迷惑なマウンティングをしないよう意識できたり、人のマウンティングに対して大らかになったりとプラスの効果はあると思う。好むと好まざるに関わらずマウンティングはこの世からなくならないので、良い付き合い方を考える必要はありそうだ。