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リタイア後に「ゆるく」働くのはそんなに簡単ではない

私は、リタイアしてから2年半が経ちましたが、全く働いていません。
「暇でしょ。何でもいいから働いてみたら?」
「運動不足になるよ。働けば体動かしてお金もらえるし、一石二鳥だよ」
「働くと認知症予防になって、人とのつながりもできるよ」
「働くと、人から必要とされるし、生きがいにもなるよ」
などなど、いろんな人から、いろんなことを言われます。
共通するのは、全く悪気がない、ないどころか善意からの言葉だとは思います。一方で、言われる側に対して全く責任を持たない発言だとも思います。
こういうことを言われるたびに、少しだけ考え込みますが、また自分の本来の考えに戻ります。
今回は「リタイア後に働き続けることが正解か」について、改めて考えてみました。


過去にパートで働いた経験からわかったこと
:「ゆるく楽しく」働くのは無理

私は、学生時代から、いろいろなアルバイトを経験しましたが、学生のアルバイトと大人になってからのアルバイト(パート)は、仕事への向かい方が、まるっきり違います。
学生時代は、当然ながら本業が勉強ですし、すべてのことが「夢の途中」のような感覚でいられたので、アルバイトは完全に割り切ってむしろ経験を楽しむくらいの気持ちでした。
一方で、社会人になってからのアルバイト(パート)は、自分のアイデンテティティに直結するので、自分のプライドを大きく傷つけてしまうことがあります。

また、学生のアルバイトは、アルバイト先でも同じレベルの学生が集まることが多く、友達ができたり、クラブ活動感覚で楽しい思い出もあります。

逆に、社会人になってからのアルバイト(パート)は、育った環境が全く異なる人が、ごた混ぜになっていることがほとんどでした。
私の経験したいくつかのパートの職場では、理解不能な言いがかりをつけられたり、とんでもない悪口を触れ回られたり、思いもつかない嫌がらせをされたり、びっくりするような酷いことが度々ありました。
そんな感じで、長期で働くのはとても無理なところばかりでした。

それに加えて、賃金に対して、時間効率が非常に悪いことも大きなデメリットです。

その典型例が、私が正社員への転職前の短期間、最後に経験したパートです。
仕事内容は事務補助で、誰でもできる雑用係でした。
仕事自体は楽で、暇なくらいだったにもかかわらず、ストレスを感じることがとても多かったです。
その原因のほとんどは、ズバリ、人間関係です。
先ほど書いたようなことがフルコンボで起こりました。

週4日、9時から16時の仕事でしたが、感覚的には1日が丸々潰れる感じでした。時間が短いとはいえ、朝から夕方まで拘束されると、疲れもあるし他のことをする気力が出ません。
それでいて、賃金は、正社員フルタイムの半分以下です。
受けるストレスや拘束時間の対価としては、全く見合うものではありませんでした。

その後、正社員のフルタイムに転職できましたが、ストレスの面でも賃金の面でも、何倍も改善できました。
もちろん、仕事はハードになり、拘束時間もより長くなりましたが、自分の得意分野を活かせる仕事でしたし、多少のやりがいもあり、プライドを保つことができるようになりました。

アルバイト(パート)の良いところは、短時間でゆるくストレスなく働くことだとよくいわれますが、私は全くそうは思いません。
私の個人的な経験からは、短時間でゆるく楽しくなんていう職場は存在しないという結論に達しました。
特に私のようなコミュ障傾向の人は要注意ですね。

もし、短時間で週に数回働くなら、やはりいわゆる3K的なものになるのではないでしょうか。そういう仕事なら、今流行りのすきまバイト系のタイミーとか、いくらでもあるのかもしれません。
ただ、そういう働き方だと、仕事自体への目的意識がほぼない状態になってしまう気がします。要するに目的がお金のみということです。
それは、今の私が望む方向ではありません。

別記事でも書きましたが、早期退職した理由の1つは、「自分の時間を100%コントロールしたい」からです。
やはり、ほとんどの労働では時間を売ってお金を得るというシステムからは逃れられません。
ごくごく少数の好きなことを仕事にしている人以外はすべての人に当てはまると思います。

同じ時間を売る労働であっても、多少なりとも自分の能力が活かせたり、やりがいを感じられたりということがあれば働く価値はあると思いますが、50半ばでは、そんな仕事はよほど有能な人でなければ、まずありません。

「クソどうでもいい仕事で低賃金で働く老後は最悪だ」

以前に森永卓郎さんが、下のアベプラの番組で「クソどうでもいい仕事で低賃金で働く老後は最悪だ」とおっしゃっていたのが、すごく印象に残っていました。

森永さん自身が、余人をもって代えがたい存在になってしまっている人なので、ご本人には縁がない話のような気はするのですが、反対意見の多い中、1人で庶民を代表して熱弁をふるっていました。

代わりがいくらでもいる仕事しかできない庶民の私にとっては、森永さんの意見は、すごく同意できるものでした。

「クソどうでもいい仕事」という言葉は汚いですが、森永さんならではの聞き手を引きつける言い回しですね。
批判はあるかもしれませんが、実際の状況をよく表していると思います。
綺麗事ではなく、高齢者が就ける仕事のほとんどは「クソどうでもいい仕事」しかないんですよ。

また、この番組を見ていて、不快を通り越して憤りが抑えられなかったのは、森永さん以外の人が、上から目線の綺麗事ばかり言っていたことです。
特に「20代から50代までの間に専門性を磨いてこなかった人は老後に交通整理や管理人のような仕事しかできない」と言っていた佐々木とかいう人、何様なんだろうと思いました。
潜在的に自分が上流階級にいると思っているから出る言葉なんでしょうね。

まず、専門性を磨いて老後もそれを活かして仕事できている人が、いったいどれだけいると思っているんでしょうか。
しかも、自覚があるのかわかりませんが、交通整理や管理人の仕事をバカにしています。
「クソどうでもいい仕事」かどうかは、あくまで各自の捉え方であって、他者が具体的な仕事を指して公の場で言うべきではないと思います。

誰でも、自分の得意分野を生かして、かつ必要とされて仕事したいに決まっています。それができないから自分にとって「クソどうでもいい仕事」をせざるを得ないんです。

森永さんは、高齢者の労働実態を話した上で、国が年金支給時期をなんとか後ろ倒しにしようとして、「働きたくない人を働かざるを得ない状況に追い込もうとしている」ことに警鐘を鳴らしていました。

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ちょうどこの記事を書いている最中に、森永卓郎さんの訃報が飛び込んできました。
心よりご冥福をお祈りします。
森永さんにしかできない様々な問題提起をされ、それが国民にとってどれだけ有益なことだったかは計り知れません。
少しでも長く生きて欲しかったです。本当に残念です。

経済的な問題をクリアにしておくことは大前提

森永さんの意見には、いちいち同意なのですが、とはいえ働かなくてすむようにするには、経済的な問題が立ちはだかります。

やはり、早期リタイアするためには、最低限の経済的自立が必要です。
これだけは避けられない現実です。

ただ、これに関しては、特別な才能も自分の力だけで稼ぐ能力がなくても、日頃からの地道な節約・貯蓄・投資の習慣で、誰でも何とかできる可能性はあります。

私の場合も、会社員時代にコツコツと節約・貯蓄・投資を続けて、早期リタイアできる状態へ持って行きました。

上の番組内の世論調査結果でも「仕事をしている理由は?」という問いに対する答えは、7割が「経済上の理由」でした。
他の理由に「生きがい」「生活リズムをを整えるため」「健康のため」「時間があるから」という回答がありましたが、圧倒的に「経済上の理由」が大きいという結果でした。

当たり前といえばそうですが、経済的な問題がクリアされれば、精神的な面の充実度はさておき、とりあえず労働から解放されることは可能です。

「経済上の理由」以外の理由

次に、世論調査の回答にあった、「経済上の理由」以外の理由についてみていきます。
これらが「経済上の理由」よりも多くを占める人は働いた方がいいのでしょうね。
以下は、それぞれの理由に対する私見です。

「生きがい」

生きがいを仕事にみいだせる人は労働すればいいと思います。
私は、生きがいに見合う仕事には出会えませんでした。
私にとっての生きがいは、仕事ではないところにあるようです。

「生活のリズムを整えるため」

私の場合は、犬の散歩とジムに通うことで、生活リズムは十分整えられています。
確かに仕事で生活リズムは整えられますが、かなり強制的ですし、強いストレスがかかります。
犬の散歩やジムは、ほぼノンストレスで、プラスアルファの充実感も得られます。
仕事でなくても、工夫次第で生活リズムは整えられると思います。

「健康のため」

仕事すると、体を動かすことで運動にもなり、お金も稼げて一石二鳥だと、よくいわれますが、はたしてそうでしょうか。
仕事では、なかなかバランスよく十分な運動はできていないことが多いですし、精神面では、職場の人間関係や仕事上の対外的なストレスが必ず付きまといます。
これは人によるとは思いますが、私はこれまでの仕事では、健康面で良いことはありませんでした。むしろ辞めてからのほうが健康になりました。

「時間があるから」

時間に余裕があるから、何もすることがないから仕事する。
これはよく言われますが、余裕のある時間を漫然と仕事に移行してしまっていいのでしょうか。
その仕事が、自分にとって本当に有意義なものであるか、十分に吟味するべきだと思います。
仕事に当てる時間を、仮に自分の好きなことするのに当てたらどうなるか、自分の中で吟味して、それでもなお仕事をしたいなら、すればいいと思います。

貴重な健康寿命とトレードオフになってしまうような労働はしたくない

私は、働くことが好きで、生きがいになっている人を否定しているわけでは全くありません。むしろ、そう思える人が羨ましいです。
ただ現時点では、私は勤め人としてどこかに所属して働く気はありません。
まず、正社員で前職と同じレベルの仕事や環境で働ける可能性はほぼゼロであること。
そして、先ほど書いたように、私のようなタイプの人間では「ゆるく楽しく」働けるような職場はあり得ないということ。
この2つが、働かないことのネガティブな理由です。

現在も、働くことが正義であり、働かない人は怠け者という感覚が、特に日本人には根強くあります。
でも、だからといって、残り少ない健康寿命をすり減らして無理に働くのが正解なのでしょうか。

我が家は裕福ではありませんし、節約してなんとか細々と生活できている感じです。
働けば、もっと生活に安心感は出るかもしれませんが、何とか生活できている限りは、無理して「クソどうでもいい仕事」で時間を浪費したくありません。
もうすぐ50代も半ばを過ぎてしまいますし、それほど長くない貴重な健康寿命とトレードオフになってしまうような労働はしたくないんです。

リーンFIREで目標を持ちつつも
リタイア生活を楽しむ

目標としては、個人事業主として、本当に自分がやりたいと思う仕事を、小さくゆるくしていくことですが、全く目処が立たず迷走中です。少しずつでも形にしていけるといいのですが…。世の中、そんなに甘くはないですね。

仕事のほうは、全くうまくいっていませんが、趣味や生活に関しては、そこそこ楽しくできています。
もともと、趣味もあり、主婦でもあるので、毎日やることは何かとあって暇で困ることはありません。
何より、自分で時間をコントロールできていることだけでも納得感と充実感があります。

小さな目標は持ちつつも、今までのように「こうでなければならない」と強迫的に自分を追い込むことはやめました。

これまでは、経済的自由(リーンFIREだけど)を得るために辛い仕事もそこそこ頑張ってきたので、これからは、リタイア生活を楽しく充実させることを最優先にしたいと思っています。

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