梅村氏の思い込み

 この人に、国会議員としての適性があるかどうかという判断は、個々の有権者に委ねられるだろうが、自分の思い込みと、事実を区別できておらず、おそらく彼女は今でも、「売国奴である左翼勢力と対決し、自分は真実を追求しただけだ」と信じているだろう。

梅村氏の言う、ハンストの根拠となったのは、ウィシュマさん死亡前に診療した医師の診断書だろうが、この診断書にかかれていること自体に嘘はないと思う。

医師は、与えられた情報として、「支援者から『病気になれば仮釈放(仮放免)してもらえる』と言われ、詐病の可能性もある」という入管職員から医師に伝えられた言葉をそのまま書き込んでいるに過ぎない。この医師は精神科医であり、おそらくウィシュマさんの肉体状況を診察するだけの知識はないと思われる。

 入管職員にすれば、おそらくだろうが「どうせバカ左翼に吹き込まれて、ハンストでもやっているに違いない」「病気のフリして、わがまま言えば仮釈放されると思ってるだけだ。食事を出してやってるのに、文句ばかり言いやがって、先生こんなのどうせ仮病だよ!」という程度の認識なのだろう。

ネットでの情報伝達には、まともにソースを確認して自分で調べるという手順が無視されていることが実に多い。 これはもちろん、保守に関わらず、リベラルでも左翼でも同じだろう。 時には、意図的に誤った結論を導き、印象操作のために、事実を切り取って流布することも当然行われる。

 よくネットリテラシーという言葉が大人の常識のように言われるが、なんのことはない。 ネットの情報を鵜呑みにできないとしか、言いようがなく、自分でソースを調べて、関係者の発言を取れない限り、一般人は情報を受け取るしかできないのだ。

梅村氏の個人的イデオロギー(おそらく政治家としての立ち位置)から見れば、「左翼系ボランティアという、誠に怪しい集団が、ウィシュマさんになにか吹き込んだから、ハンストして体調を壊したんだ!」という、本人の願望のような思い込みが、まずある。 

そして、この診断書の内容からの勝手な断定は(入管職員の言葉をただ信じ、都合よく解釈する)同じイデオロギーを持つ人たちにとっては、なんの精査もなく、「はっきりとした証拠はないが、おそらくそういうことだろう、どうせ左翼ボランティアだからなぁ」と、解釈され、「証拠のない既成事実として共有される」

大手マスコミで、本当にこの診断書に書かれた「「支援者から『病気になれば仮釈放(仮放免)してもらえる』と言われ、詐病の可能性もある」というところが、どのような経緯で書かれたのか、しっかり確認して報道しているところなどない。 

入管されている外国人の待遇をよくしようと活動しているボランティアの人の活動は、一部愛国者にとっては、左翼による売国活動の一環としか考えない。 

仮に自分がウィシュマさんと同じ立場であったとして、(例えばどこかの国の入管に拘束され、仮釈放してもらえないとき)、体調が悪化してまで本当に死ぬような仮病を続けれるだろうか? 無理だろう。 

入管職員が放置した、ウィシュマさんの公開された映像を見て、あれを仮病と考えたいのは、罪に問われるべき入管職員であり、ボランティアの活動を売国活動としか考えることができない人たちだけである。

梅村氏の発言は、全てが「自分がそうであって欲しい」という思い込みに基づいていて、それがいかに危険で政治家としてあってはならないことなのか、おそらく彼女は理解できないだろう。

 最初は言葉を選んでいたが、批判されたら、もはや彼女にとっては「売国奴との対決」だと言わんばかりに、ボランティアの方々への批判がテーマになった。自分にとっての答えがきまってしまっているので、「事実はないが、疑いはある」などと日本語の習得を疑われるような発言を連呼してしまったのだろう。

左でも右でも、リベラルでも保守でも、政府や国に過ちがあれば、それをただしよくしたいという気持ちは同じだろう? 自分の思考にとって都合のいい情報なら、しっかりソースも確認せず信じ込んでしまうのは、一般人なら仕方ないとは思うが、せめて政治家の皆さんには、事実の精査をしたいと願うなら、イデオロギーからいったん離れて欲しい。




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