LEVEL 3 「プレゼンテーションの評価項目」
私が医学生の頃、病院実習で思ったことです。
プレゼンテーションの型を教わらないまま現場に出て
何も分からないまま発表することになって
やったらやったでダメ出しをいっぱい喰らって
あまり良い記憶が残っていません。
そうなると臆病になるというか
やや消極的になってしまい
ますます負のスパイラルに陥ってしまうのです。
診療科が変わったり、施設が変わったりすると、
今度はルールが微妙に違っていて
前の実習先では善とされていたことが
次の実習先では悪とされてしまったりと
頭の中で整合性を図ることは
余力も無かったので自分には難しかったです。
時は経ち、今度は医学生を指導する立場になり
市中病院勤務医の立場で臨床実習を受け入れたり
オンライン臨床実習という形で指導に関わったり
違う視点で症例プレゼンテーションのことを
考えるようになりました。
もちろん、まだ明確な適切解は見つからず
模索・試行錯誤しながらの提案ですが、
現時点での案を紹介したいと思います。
今回、マシュマロの質問で
「自分で出来るプレゼンテーションの練習法」を聞かれ
プレゼンテーションとは?という考察の中で
指導者目線で、評価項目を提示したら
それを意識することでプレゼンテーションの質が
向上するのでは? という仮説が湧いてきました。
セルフチェックが出来るという点がメリットですが、
レベル分けされていないところに改善の余地があります。
プレゼンテーションの原稿を作る
↓
下記のチェックリストで評価する
↓
改善案を作る
↓
読み上げる
このサイクルだけでも
質の向上が図れるという期待を込めて
評価表の一案を公開しようと思いました。
学習者・指導者どちらにも
有効活用してもらえたら幸いです。
【教育カンファレンスにおける初回プレゼンテーション
〜評価項目の一例〜】
S情報
○ 元々の背景と現状とが聞き手に伝わるような病歴を伝えられたか?
○ 現病歴は時系列等に沿ったストーリーとして述べられたか?
○ 診断推論に関連した主観的情報を挙げたか?
○ 病勢変化を評価できる主観的情報を挙げたか?
O情報
○ 診断推論に関連した客観的情報を挙げたか?
○ 病勢変化を評価できる客観的情報を挙げたか?
○ 必要な理学所見・検査所見を残せたか? ★
○ 不要な理学所見・検査所見を省けたか? ★
アセスメント
○ プロブレムリストを列挙できたか?
○ 今、取り扱うべきactiveなプロブレムを強調できたか?
○ 病勢や重症度、初療の効果判定等の評価ができたか?
○ 根拠を踏まえて現時点の診断推論を言語化できたか?
○ 診断確定に至っていない場合、鑑別診断を適切に挙げられたか?
プラン
○ 現時点で実施している主な治療を挙げられているか?
○ その根拠を述べられたか?
○ 今後の予測を踏まえた上での明日以降の治療プランを挙げられたか?
○ その根拠を述べられたか?
○ 治療効果判定をどのように行うかがプレゼンテーションに反映されているか?
○ 診断や病型判断が途中のときには検査プランをどのように行うのか?
○ その根拠を述べられたか?
○ 退院までの見通しとそのための条件について言及したか?
クリニカル・クエスチョン
○ 十分にプレゼンテーションの準備をした上で、クリニカル・クエスチョンを捻出できたか?
※一人で練習するには★の箇所等で困難が生じるので、あくまで最終到達点あるいは目標として参考にしてほしいです。
これは、オンライン臨床実習で実践した症例プレゼンテーションの評価シートを少しアレンジしたものです。Student Doctor/研修医のプレゼンテーションの要件を述べていますが、やや要求が高度なのと項目が多過ぎるという点でハンドリングに難があります。評価が煩雑だと思った方は、以下の簡易版もご参照ください。
【簡易版】
○ 主訴・現病歴・既往歴・内服薬・社会生活歴・家族歴・理学所見・検査所見・プロブレムリスト・アセスメント・プランといったプレゼンテーションの型に沿って発表できたか?
○ 病歴・理学所見/検査所見とevidenceとを照らし合わせて「自分なりの」診断推論を発表できたか?
○ プレゼンテーションをやり切った後にクリニカル・クエスチョンを挙げられたか?
----- LEVEL3 まとめ ------------------------------------------
○ 症例プレゼンテーションの要件は何か?
○ 標準的なものを指導してくれ!本当にもうっ(医学生の声を代表して)
○ 評価項目は学習の指針になる
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