同調圧力は、日本だけではなく米国など他の国でもあるという。
著者はハーバード大ロースクール教授で連邦最高裁判所や司法省勤務もあるキャス・サンスティーン氏だ。
日本では、なぜか空気を読んで同調すると言われていた。
理由は日本人の特性か、で終わっている。
著作では同調は、心理学者の社会実験で17か国で存在が確認されているという。
これを知り筆者としては霧が晴れるような心境だ。
太平洋戦争の開戦の決断を調べているが、その決断で空気が関係しているという話があり、これは日本人の特性だといわれて先に進めなかった。
同調圧力として、①他人の意見に単に同調することや②先行する少数意見に次々と同調していくカスケード、③同じ考えを持つ人の集団が極端な考えに至る集団極性化なども明らかにしている。
いずれも問題によっては誤った考えが通り、時としては大惨事になることがある。
カスケードは興味深い研究がある。ダイカン・ワッツと共同研究者が2006年に発表したものだ。
なにやらヒットチャートの秘密の一端が見えてくるようだ。
しかし、このようにカスケードは確たる判断で選ばれたもので起きるわけではない。
きっかけは先行する人たちの考えや行動なのである。
カスケードは同調と同じく、それ自体は問題とはならない。
本当に問題なのは、カスケードが生じると、人びとが他人に有益となるような情報を公にしないことだという。
その結果、個人としても公共・民間を問わない集団としても、時として大惨事をもたらすような間違いをおかしうる。
つぎは集団極性化である。
討議している集団内で何が起こるのか。
集団内で歩み寄りが起こるのか。個々の構成員がもっている傾向の真ん中に向かうのか。
集団極性化の現象は、これまで米国やドイツ、フランスを含む12か国以上の国々が関わる何百もの研究で明らかにされてきたという。
同質な集団での議論は、極端な考えに向かうという。
日本の歴史でも、何やらよくあったなと納得される結論である。
集団の構成員を両極端の考えをする人を同数の選ぶと、極端なことは起こらないという常識的な話は、集団極性化を考えるとき大事な視点である。
最後に法律家である著者キャス・サンスティーン氏が、最も言いたかったのは合衆国憲法の諸制度は同調やカスケード効果、集団極性化に対する懸念を反映したものだという。
起草者たちはその点を明確に懸念していたという。
明治憲法は合衆国憲法と比べるどうであったのだろうか。
ポイントになるのは、多様性をもつことができることや言論の自由はもちろん少数意見をどうくみ上げられるかではなかろうか。