「縮んで勝つ」河合雅司:問題は出生率だけではない。

「国会議員や首長、経済団体の幹部などには、いまだ『出生率が上がれば、出生数は増える』と固く信じている人が少なくない」と河合はいう。
私も何となくそう思っていた。
日本の人口減をなんとかするのは、出生率をあげる対策が政治の大きな課題だと考えていた。
しかし冷静に考えると、出生率ではなくその母体が問題なのだ。

だが、これらが事実誤認であることは2005年と2015年の゛ねじれ現象゛が証明している。

2005年とは合計特殊出生率が当時の底である1.26に落ち込んだ年だ。
その後の子育て支援策もあって2015年には1.45にまで回復した。
しかしながら、出生数のほうは106万2530人から100万5721人へとむしろ減ってしまった。
なぜ゛ねじれ現象゛が起きたのかといえば、出産期である25~39歳の女性人口が17.7%も減ったためだ。
出生数減少の真の原因は「母親不足」なのである。
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ちなみに「母親不足」は今後さらに加速する。
総務省の人口推計で2023年10月1日現在のこの年齢の日本人女性数を確認すると914万6000人だ。
一方、25年後にこの年齢に達する0~14歳は25.7%も少ない679万5000人しかない。四半世紀で4分の3にまで減るのでは「異次元の少子化対策」として莫大な財源を投じても、効果は期待できまい。

(「縮んで勝つ」河合雅司)

合計特殊出生率とは、15歳から49歳までの女性の年齢別出生率を合計したもので、1人の女性が生涯に生む子供の数を推計した指標だ。
年齢別の人口が一定に推移する世界なら、出生数はこの合計特殊出生率がただ一つのパラメーターだ。
しかし、母数が急激に減少する日本ではそこだけ見ていてもだめである。

河合雅司の本では、人口減はもはやどうしようもない現実として受け入れるところから、これからの国家戦略を考えなければならないという。
人口が減らないというメインシナリオで今の政策はできている。
何が変わるか、人口が減るので消費が減り、量だけを追求するビジネスがなりたたない。
量的成長から質的成長だという。
河合の本には、人口減を踏まえ、日本に残された7つの活路が提言されている。


真の大きな原因が語られずに、対策が打たれるいることが、最近多いように思う。
出生率低下が問題ではないというのではない、それは原因の一部であり、その対策も必要であるが、それが根本的な解決ではない。
崖に向かって群れが進んでいるのに、その速度を緩めることだけではなく、方向を変えることのほうがもっと大事だ。

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