見出し画像

インディ・ジョーンズ・アドベンチャーのニセモノ造形をめいっぱい楽しむ 2DAYS

ジャングルの奥地や古き良き時代などが舞台になっていることも多いディズニーのアトラクションは、その舞台に合わせて建物のイメージを変化させている。金属が錆びついていたり、木々に飲み込まれていたり、埃が積もっていたり……。
これらはアトラクションがオープンしてから時が経って実際に古びてしまったわけではなく、あくまで演出の一環。「エイジング」「ウェザリング」と呼ばれる手法である。

これらの加工を最大限に活かした施設の一例が、東京ディズニーシーのアトラクション「インディ・ジョーンズ・アドベンチャー:クリスタルスカルの魔宮」である。
今回はこのアトラクションの「ニセモノ」にスポットを当てて、アトラクションの細部の楽しみ方を考察してみたい。


失われた河に突如その姿を現した

風化?

インディ・ジョーンズ・アドベンチャーの壁面はざらざらしている。
これらはもちろん、風化してこのようになったのではない。建設段階で、はじめからこのように造形されたものである。

苔の蒸すまで?

さあ、本当の恐怖はここからだ。
ジャングル奥地にあるインディ・ジョーンズ・アドベンチャーには、当然たくさんの苔や蔓がまとわりついている。
ただし、これらはすべてウェザリング加工によって再現されたもの……すなわち塗料を用いて描かれたものである。むしろ、本物の苔を探しても全然見つからない。
この神殿の緑の部分はほぼすべて、人力で塗り分けられたというのだから驚きだ。

絵がないという絵

神殿の壁画はところどころ剥がれ落ちていたり、黒ずんでいたりする。
これらはすべて、剥がれているように描かれたトリックアートのようなもの。近づいてよく見てみると、実は単なる一枚の板であることがよくわかる。

また、神殿に隣接するレストラン「ユカタン・ベースキャンプ・グリル」の屋外席では、風化して色褪せた壁画を見ることができる。これらの砂埃、黒ずみ、色落ちもすべて、絵筆で描き分けられたものだ。

恐怖はまだ終わらない

いかがだっただろうか。
ちなみに、ライド本編冒頭でクリスタルスカルの怒りに触れたのち、大きく左カーブをして迷い込む通路(ジョーンズ博士が扉を押さえている部屋)がある。この部屋以降すべての部屋の石垣は、すべて一枚の板に描かれたトリックアートだ。

私が思うに、このアトラクションの主眼は「1930年代の中央アメリカの古代神殿」にはないのではないか。
むしろ、「1980年代、ハリウッドで映画撮影に勤しむハリソン・フォードとジョージ・ルーカス」が主人公の、スタジオツアー系アトラクションだと解釈しても楽しめるのではないかと思う。

アトラクション積載のスピーカーから、これでもかとジョン・ウィリアムスのレイダース・マーチが鳴り響く中、機械仕掛けの骸骨や投影された虫たちに驚き、ルーカスが撮影現場に向けた眼差しを追体験する……ぐらい言ってしまってもよい。私は監督としてのジョージ・ルーカスに詳しくないので、違ったらご指摘ください。

インディ・ジョーンズ・アドベンチャーの魅力は、マヤやアステカの文明だけにあるのではなく、それらを再現しようと試みた人々の職人芸にもあるのである。

いいなと思ったら応援しよう!