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ロストリバーデルタを楽しむ─かつての人の憧れを超えて
中央アメリカのジャングル・ロストリバーデルタは、世界中からの好奇の目に曝されている。
東京ディズニーシーの奥地・ロストリバーデルタを楽しむための視点を考えてみる。
パナマ運河のように
セオドア・テディ・ルーズヴェルトは、アメリカ合衆国の第26代大統領である。シエナ大学が継続して行なっているアメリカ大統領の「偉大さ」調査において、彼は30年以上トップ5を維持している。
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そんな彼が後押ししたのが「パナマ運河」の建設である。北米大陸と南米大陸の間に運河を通すことで、アメリカ東海岸と西海岸の海上での距離がぐっと近くなるのである。
さて、アメリカンウォーターフロントに停泊する豪華客船・S.S.コロンビア号の処女航海式典に、セオドア・ルーズヴェルトは現れたのである。
彼の名を冠した「テディ・ルーズヴェルト・ラウンジ」が存在するだけでなく、上のフロアの「S.S.コロンビア・ダイニングルーム」は、2年後に迫ったパナマ運河の開通を記録するような装飾になっているのだ。
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船内は水と草花を想起させる翡翠色の差し色が使われているだけでなく、エキゾティックな鳥の意匠が壁面に施されている。
パナマ運河への憧れが、既に当時花開いていたと言える。
Saludos Amigos
S.S.コロンビア号の処女航海からちょうど30年後の1942年、ウォルト・ディズニーは『ラテン・アメリカの旅』(原題“Saludos Amigos”)という映画を製作。
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ポスターは“WALT DISNEY Goes South America"「ウォルト・ディズニー、南アメリカへ行く」の文字がある。
この映画では、ディズニーのアニメーターや音楽家たちが実際に南アメリカの各地に赴き、現地の文化を作品に反映している。映画は実写の旅行シーンの後にその土地にまつわる短編映画がフェードインするという方式で、北米と南米の親睦を深める意味があったようである。
Saludos amigos
A fond greeting to you
A warm handshake or two
Good friends always do
Saludos amigos
A new day's waiting to start
You must meet it, wake up and greet it
With a gay song in your heart!
サルードス・アミーゴス
愛のこもった挨拶をきみへ
温かな握手を一度か二度か
良き友がするように
サルードス・アミーゴス
新しい日が始まる
絶対会いなよ、起きて挨拶しなよ
心には陽気な歌を共に
コロンビアの夜明け
さて、東京ディズニーシーにも表れている、当時のアメリカ人の南アメリカへの憧れを通して、ロストリバーデルタを見てみよう。
このあたりではメキシコ(北アメリカ大陸の南側)、中央アメリカ、そして南アメリカの雰囲気がふんだんに感じられる。
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S.S.コロンビア号のようなオーシャンライナーは、後の1950年代、大型飛行機の登場によって移動手段としての意味を為さなくなる。
後にクルーズ船としてロストリバーデルタのようなカリブ海沿岸地域を訪れる航路が発案されるのだが……あなたはディズニーのアニメーターのように空から行くか? それとも海から?
輝く水面
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19世紀後半、中米のジャングルをハリケーンが襲った。
薙ぎ倒された木々の中からは、河と周囲に栄えた古代文明が見つかった。
人々はその場所を“失われた河”「ロストリバー」と名付けたのである。
ウォルト・ディズニーがアニメの世界で描いた自然の世界が、まさにここに広がっているのだ。
Plenty of Color and Excitement
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古代文明の対岸に、人々はまるで戦のように基地を作って機会を伺っている。
『ラテン・アメリカの旅』でディズニーのアニメーターたちは、訪れたペルーの市場を"Plenty of Color and Excitement"「豊穣な色と興奮」があると形容している。
場所も物も全く異なるが、ロストリバーデルタの人々についても同じことが言えるようだ。
自然がある、人がいる
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ジャングルの木々や水面の輝きは、時に人々の営みと交わる。
こうした瞬間が見られるのも、ロストリバーデルタだけだ。
温かさを求めて
ところで、私は……ロストリバーデルタに謝りたい、と、ずっと思っている。
私は、ロストリバーデルタを理解するために、未だ全力を尽くしていないと感じるからだ。
東京ディズニーシーの中で、アメリカのように胸が広いわけでもなく、イタリアのように美しいのともまた違う、私の全く知らない世界がそこに広がっている。
私はロストリバーデルタを、かつての人々と同じ好奇の目で見ている。それは、好意でもあるが、奇妙なものを見る目つきでもある。
しかし……。
S.S.コロンビア号にパナマ運河の壁画が見事に描かれたのも、エキゾティックな南米の夢を、そこに住む人々を知らなかったからではなかろうか。
『ラテン・アメリカの旅』が公開された1942年、人々はそこに住む人々を知った。しかし、自国の外の文化は自国のものと違う奇妙なものだった。
ロストリバーデルタを訪れる我々は、1930年代と21世紀を同時に旅している。飛行機で空から見ても、海からやってきて大地を踏んでも、その土地は自分たちのものではない。我々の知らぬ文化があることは、冒険だけでなく対話の必要性を意味しているのだ。
だから、ロストリバーデルタにきたら、温かな握手と共に声をかけてほしい。
“Saludos Amigos!"
American Presidents: Greatest and Worst – Siena College Research Institute