ずっこけ歴史巡行③身にまとう衣装が人をつくる編
こちらの記事のつづきです!
大通りの歴史行列の巡行がはじまった。沿道には手を振る人、カメラを持ち構えている人、大勢の人々が詰め寄せる。わたしは白拍子になりきり、前を向いて堂々と歩く。手をぶらぶらとさせながらは格好がつかないので、男舞のように腕を構えながら歩くのだが、これが結構きつい、しかもこの日はすこぶる天気がよく、日差しも照りつけ、十一月とは思えない温度感。あついあついあつい。だが目の前を歩いているのは、平安から鎌倉初期の武将、熊谷次郎直実である。兜に立派な甲冑姿はたいへん勇ましい。彼も役になりきっているのだ。これは後で気づいたことなのだが、他の方々も、衣装をまとい、化粧をし、カツラを被ってその役の姿形になるだけで、口数が減り凛と佇み、もう、その時代のその人に自然となってしまうものなのだ。身にまとうもので立ち居振る舞いも変化する、人格もひょっとすると多少変わるかもしれない。後ろの侍女役の小学生の女の子を見ると、かなり疲労が出てしんどそう、この暑さに着物姿に長時間はきつい、ご両親が沿道を並行して付き添う。がんばれ、あと、もうちょっとだよ、みんなで励ましながら歩き続ける。半分終わった地点で、沿道から手を振る女性の姿。ママ友だ。大きく手を振りながら笑ってる。調子にのって舞扇子を広げてポーズを決めてみる。ママ友大爆笑。その先をゆくと、恒例の祇園の舞妓さんが見物客としてずらりと立っていた。去年祇園東の舞妓さんとお会いする機会があって、そういえば寄せてもらいます、言うてた。かわいい舞妓ちゃんたちを見たいが白拍子が真顔でガン見するのも気色悪いので、チラ見程度にとどめておいた。
やがてゴール地点のお城が見えてきて、たくさんの人たちの拍手とともに終えた。我々はぐったりと疲れ果て、配られたお茶のペットボトルを5秒で飲み干した。そのあと侍女役のCさんと写真を撮ろうということになり、これまた大変調子にのりながら記念撮影。すると見物していたおっちゃんやおばちゃんが写真撮らせて〜、と駆け寄ってきて、撮影と握手する。ああ、芸能人ってこんな気分なのか。いろんな体験が濃縮されて脳みそが揺れるのだった。
つづく