ずっこけ歴史巡行②声援は心に届く編
こちらの記事の続編です
歴史衣装に身を包んだ我々は、ぞろぞろとスタート地点の小学校のグラウンドへ向かった。大通りが通行規制され、警察が忙しなく動き、歩道には巡行を観ようとカメラを構える見物客ですでにひしめき合っていた。
校区ごとに整列し、開会式を待つ。外の景色は現代なのに、自分達を取りかこむ人々は古墳時代から平安、鎌倉、江戸時代までの格好をした人ばかりで、映画の撮影のエキストラ気分になり完全に浮つき、常に半笑いになる。
白拍子は刀を装着しているので(これが結構な長さ)、周囲との距離感を考えずに動くと、刀が近くの人に当たりまくり、結果配慮する動きは自然とソーシャルディスタンスになる。後ろに侍女役のCさんがいて、彼女は竹の杖を持っていたので、「大丈夫、当たりそうなら、この杖で受けるわ!」と頼もしい一言をくれた。しかし、刀を付けて動くって厄介だなあ、武士尊敬。
刀問題でうろちょろできないので真顔でじっとしていると、保存会の方々がひっきりなしに白拍子姿を見に駆けつけてくれた。わーとか、すごーいとか、一瞬動物園のパンダ状態に。とりあえずお姉さん方に晴れ姿を見てもらえてよかったか。持ち道具は、刀以外に舞扇子がある。それを体の前で手を添えて持っていたら、関係者の方から「お姫様じゃないので、手は両脇に構えてください」と指導が入る。男装なので凛々しく演出したほうが良いらしい。だらんと腕を下げて歩くよりは、構えた方がそりゃあキレイに見える。市長の挨拶とともに巡行がスタート。
歴史ごとに順番に進んでいき、鎌倉時代の我が校区も歩き始め、グラウンドから沿道に沢山の見物客が押し寄せる、警察も若干ピリついている。大通りを出たその瞬間、「ヨーコチャーーーーーーン」とわたしの本名を呼ぶ大きな声援が響き渡った。見ると、通り挟んだ向こう側に、職場の同僚と利用者さんが応援に駆けつけて、一生懸命手を振ってくれているではないか。かなり、遠い、遠いけどすぐにわかった。みんな抜群の笑顔で手を振ってくれている。こちらも扇子を持った手を思い切り振り上げる。警護の警察官がジロリとこちらを見る。構わず手を振る。きゃー!と喜んでくれる。声援がこんなにも嬉しいものなんだと人生で初めて知った。
その時ふと、今度息子のラグビーの試合でいつもより大きな声援を送ろう、と思った。ただ歩いてるだけでもこんなに嬉しいのだから、試合に出ていたら勇気が湧いてくるに違いない。
つづく