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はい、ボツ、書き直し!/嘘くさい文章
高校生のころ、書いた作文が学年代表で選ばれてスピーチコンテストに出ることになった。(テーマは偏見と差別だった)それを嬉々として母に伝えたら、びっくりするくらい辛辣に批判されて、引いた。傷つくとか通り越して引き潮警報発令!的のど真ん中をつかれすぎてぐうの音も出ない。たしかに格好つけすぎて、優等生的文章だったし、それは自分でも薄々でも気づいていたし、こういうことを書けば先生に評価されるだろうな、ということもわかっていた。多様性ということばがまだ行き渡ってない時代に、多様性のことを書きたかった。それがきれいごと過ぎて、核心に迫ることが書かれていなかったことにも気づいていた。簡単に言うと、おもんなくて嘘くさいってことだ。けっきょく全校生徒の前でしたスピーチもどこかの政治家の演説みたいでめちゃくちゃ気色悪い気分のままで終わった。吐きそうだった。萎えた。そこを母はついてきたのだ。あんた、うわべでは真っ当なこと書いてるけどそんな人間なのか?とど真ん中直球で投げ込まれた。「ほんとうのこと」を言われると、人間は傷つかない。切れ味のいい刀でスパッと斬られた感覚になるのだ。はい、ボツ、書き直し!
その生き方、かっこいいんですか?かっこよくないんですか?どっちなんだい?と急に問われた気がした。文章通り越して哲学!くっそ、と思いながら白目で奥歯をギリギリさせた。
わたしはあのとき、誰のために何のためにあんな格好つけた文章を書いたのだろうか?誰かに認められるために?自分に自信がなかっただけ?たぶん両方。でもよく考えたら全校生徒の前でぶるぶる震えながらスピーチして、自分にがっかりして、挙句の果てに母に真実直球を放り込まれ、踏んだり蹴ったりじゃないか?自作自演気味でちょっと笑える。
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