風情のある建物がすき
前に住んでいた家は、夫のおばあちゃんがずっと住んでいた家で、無駄に廊下があってその分部屋は狭かったりして、お風呂はタイルで冬は寒いし、台所のシンクは低いし、階段の傾斜が異常にキツかったりするのだが、サザエさんちみたいに縁側があって、そこに座布団敷いて、小さな庭に咲いているあやめなんて眺めながら、ほっこりお茶するのはなんともいい時間だったし、家じたいが古いけどかわいらしさがあるのだ。ここの家に夫の海外の友人たちが何度か遊びに来たり泊まったりしたが、みんな一様に「いい家だね」「ここの家の気がすごくクリーンで落ち着く」と、大変気に入っていた。古い日本の家が外国人には響くらしい。息子が小学校上がる前まで住んでいて、引っ越すとき息子は泣いていた。「ぼく、このお家がだいすきやったんや・・」
お伊勢さんに行って、おはらい町を歩いているとそういう古いけど風情のある建物が並んで、すごく落ち着いた。中でも、五十鈴塾左王舎という日本の伝統文化や、伊勢の暮らしのことを学んで体験できる文化施設があるのだが、その建物を見てるだけで物語が浮かぶというか、懐かしくて、生きてる建物やなあと惚れ惚れとした。こういう家に着物着て生活したくなるような。むかしに戻ったような感覚。そこの建物を「いいなあ、いいなあ」としげしげと眺めた。あとでHPを見てみたら、大変気になる講座を開かれていた。新春の茶歌舞伎を楽しむ、とか、松坂木綿手織りと豪住宅を楽しむ、とか、かまどのごはんを楽しむ、とか、神宮と雅楽、とか・・伊勢に住んでいたらぜったいに通いたいくらいだ。後ろ髪引かれながら後にした。住めば不自由な面もたくさんある古い家だけど、必要無駄なところがあとからじわじわ効いてくる楽しさもけっこうあったな、と今さらながら思うのだ。
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