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【ためスモインタビューvol.8】八尾(やつお)は特殊で、面白くて、研究したくなる町ーー楠純太さん

山県富山市八尾には、長く受け継がれている行事があります。哀愁漂う音色の中、ぼんぼりを灯した石畳の道を艶やかな踊りで練り歩く「おわら風の盆」です。

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©︎とやま観光推進機構

毎年9月1日〜3日まで開催され、人口2000人のまちに20万人もの人が訪れるファンの多い行事。なぜ、この小さな町にこれだけ愛される素敵な行事が生まれたのでしょうか。

八尾の歴史についてよく知る、楠純太さんに八尾の魅力や八尾での暮らしについてお話を伺いました。

◎大学の研究テーマにすればよかった

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▲八尾の街並み

ーー楠さんは、生まれも育ちも八尾でしょうか。

はい。大学4年間は東京で暮らしていましたが、それ以外は八尾でずっと暮らしています。

ーーおわらを踊り始めたのは何歳くらいの頃ですか。

物心ついた頃から、としか言いようがありませんね。

毎年8月になると、毎晩おわらの練習会があるんです。9月の本祭り3日間はほぼ徹夜で朝まで踊ってました。おわらの時期はテストの時期でもあるんですが、テスト中、おわらの音が聞こえたような気がして窓の外を見たりしていました(笑)。

ーー1ヶ月間、毎晩練習されるわけですね。

はい。小さい時は練習終わりのアイスクリームが食べたくて、毎日練習に参加していました。今の立場から見れば、「子供たちをうまく集める良い方法だったな」と思います。

さらに、夏休みにしか会えない中学生や高校生のお兄ちゃんお姉ちゃんもいましたし、楽しんで練習に参加していましたね。おわらには豊年踊り・男踊り・女踊りの3種類の踊りがあるのですが、小学生の時は豊年踊りしかさせてもらえないんですよ。小学生の時は、自分も早く男踊りを踊りたいと思って一生懸命練習に参加していました。お兄ちゃんたちの踊りはしなやかで、あんな風にきれいに踊りたいと憧れてもいました。

ーー八尾には、なぜこれほどまでに美しい「おわら」が生まれたのだと考えておられますか。

「おわら」を語るには「越中八尾曳山祭」が欠かせないと思います。

曳山は八尾が昔繁栄していた頃の活気を残す、八尾のバックボーンのようなものです。曳山という文化があったからこそ、おわらが今のように素敵なものになっているんだと思います。おわら風の盆のことについては、おわら資料館をぜひ見学してみてください。

八尾曳山

©︎とやま観光推進機構

ーー曳山祭りはどのようなお祭りですか。

八尾はかつて、生糸、蚕種、和紙、木炭などの生産と取引で栄えていました。各町が豊かな財力を示すために曳山を造り、現在の絢爛豪華な曳山を6基造り上げたと言われています。富山県内の名工の技術がふんだんに使われていて、井波の彫刻、城端の漆工、高岡の彫金などが惜しげもなく飾られています。

曳山もおわらも、八尾の人にとって地域と自分をつなげてくれる、自分のアイデンティティを確立する大切なものです。

「なぜ八尾に豪華絢爛な曳山祭りと、日本舞踊を取り入れた美しい『おわら』が生まれたのか」については、大学で研究テーマにしなかったことを本当に後悔しています(笑)。でもこの奥深さに気づけたのは、30歳になった頃なのです。

ーー東京に進学された時から、将来は八尾に帰ってこようと思っていましたか。

いえ、東京で働くつもりでした。地元の生活が嫌だった時期もあって、「東京に出たら帰ってこんからね(帰ってこないよ)」と両親には話していたんです。国に関わる仕事について、地方に還元し、富山を元気にしたいとは考えていましたけどね。

しかし大学4年の時に少し体調を崩してしまったので、Uターンすることにしました。縁あってリハビリがてらアルバイトで八尾観光協会で働き始め、そのまま正社員として勤めることに。この仕事を始めてから、八尾のことがよくわかってきました。高校生の時まではここまで深く知ることはありませんでした。

ーーどんな風に、八尾の文化や歴史を学ばれましたか。

「八尾にこんな人がいたんだ」と思えるほど地域を調べている方から「八尾ってこんなところなんだぞ」と教わることで知っていきました。歴史書などの資料もありますが、八尾は、資料があまりにも少ないんです。こうやって地元の人と繋がることで、自分はこんな素晴らしい場所に生まれたんだと気づけました。

高校生の時は漠然と「こんな田舎出て東京行ってやる」って思っていたけれど、この町は本当に特殊で面白いんですよ。

ーーもともと歴史や文化について学ぶことはお好きだったんでしょうか。

誰も調べないことを調べるのが好きで、小学校の時から、地図を読みあさって誰も知らない国名を覚えたりとか、重箱の隅をつつくようなことをしていました。

まあ、観光案内する時にこの性格を出してしまってはお客さんを置いてきぼりにしてしまいますから出さないようにしていますが(笑)。

そういうところまで掘り下げたら、八尾は面白い町だと思います。

◎八尾に一年中人が集まる工夫を

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▲八尾は高低差がある地域

ーーこれまで、八尾観光協会で楠さんはどんな取り組みをされてきましたか。

おわらの時期だけでなく、年間を通じて八尾に足を運んでいただくためのアイデアを実行に移してきました。

例えば、八尾のまちを食べ歩くことができるクーポン「よばれっちゃを発行したり、八尾の風情ある街並みにクラシックカーを展示する「クラシックカー展」を毎年2回開催したり、桜の時期におわらを楽しめるように城ヶ山でおわらを踊る「さくらのおわら」を企画したり…。

ーー現在、特に力を入れておられる企画はありますか。

「ロゲイニング」ですね。

ーーロゲイニング?

地図を手掛かりに、町中のチェックポイントを周り、制限時間内にどれだけ回れたかを競うスポーツです。ロゲイニングと観光をミックスした新しい観光アクティビティづくりを進めています。

例えば、八尾の町全体をフィールドに、走れる方は5時間、歩く方は1〜2時間を制限時間として観光スポットを巡っていただきます。コロナ禍で運動不足の方も多いでしょうし、こういうスポーツ要素が大切だと思っています。昨年は何度も開催しました。

ーーロゲイニングを思いつかれたきっかけは何だったのでしょうか。

八尾はアップダウンの激しい地形で、かつ雰囲気のある町。スポーツ会場としてはぴったりだとヒントをいただいたんです。もともと、富山には「健康」のイメージがありますよね。「薬の富山」として有名ですし。充実した医療にプラスして、「健康になる機会がある」というのも重要だと思ったんです。

マイクロツーリズム(※)の一種として、まずは県民の人に八尾に来ていただきたい。例えば、土曜の朝に八尾に来てロゲイニングのコースで運動し、ランチして帰る、というように普段から八尾を「訪問する動機」がある場所にしていきたい。

(※)県外旅行や海外旅行ではなく、地元の人が近場で過ごす旅のスタイルのこと。

◎八尾に”少しずつ”移住してほしい

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▲八尾の景色

ーー八尾は、どんな人が暮らすのにぴったりの場所だと思いますか。

八尾は良い意味で時間が止まっている町。東京はもちろんのこと、富山市街地に住む方々とも時間の流れが違います。その時間の流れに合う人が八尾に合っていると思います。

八尾の中心地は多くが町屋です。町屋での暮らしは正直ハードルが高いかもしれません。まずは八尾の近くに住んで、八尾に関わるところから始めるのも良いと思います。

まずは八尾に関わることで「この町いいね」と思ってもらいたいですね。周辺地域に住んでもらい、さらに八尾が気に入ったら町屋に住むーー少しずつ八尾に近づき、移住を完了させるのが良いのではないでしょうか。

ーー楠さんの周りには、県外からの移住者の方はいらっしゃいますか?

関東から移住してきた友人がいます。お子さんがいらっしゃるんですが、私の住んでいる町内のおわらに参加していますよ。

ーーお子様の話が出ましたが、八尾での子育てでいいな、と思う点はありますか。

このスローな時間の中、文化のある町で子供を育てられる場所はなかなかありません。文化、生活、近所付き合いが昔ながらの子育て空間のようになっています。

今、二人の子供がいますけれど、東京では味わえない子育てができている実感がありますね。東京でも「習いごと」でお金を払ってダンス踊りを習うことはできるけれど、この町ではおわらを習うのにそういうお金のやりとりはありません。教えてもらったおわらの踊りを大きくなったら次の世代に教える。お金を介さず、気持ちで繋がる関係を体験できるのは大きいと思います。

ーーためスモを利用する方をどのようにサポートしていきたいと思っていますか。

八尾のいろんな方をお繋ぎすることができます。八尾の歴史的なお話もできます。気軽に尋ねていただければ嬉しいです。

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©︎とやま観光推進機構

八尾の歴史には、まだ誰も答えの出せていないたくさんの問いがあるようだ。

文化の担い手となりたいなら。
文化的な町で子育てしたいなら。

ぜひ、富山市八尾に足を運んでみてください。ためスモパートナーはあなたの富山での滞在を全力でサポートいたします。

<今回ご紹介したためスモパートナー>
楠純太(くすのき・じゅんた)
「おわら風の盆」で全国的に有名な富山市八尾に生まれ、物心ついた頃から踊る。東京の大学に進学するも、卒業後Uターン。八尾観光協会に勤めながら、八尾の歴史や文化を学び、その奥深さに感動した。おわらの時期以外にも人が集まる場所にしたいと、八尾のまちを食べ歩くことができるクーポン「よばれっちゃ」の発行、八尾の風情ある街並みにクラシックカーを展示する「クラシックカー展」の開催、桜の時期におわらを楽しめる「さくらのおわら」の企画などに携わる。さらに昨年からは、八尾全体をフィールドに観光スポットを巡るスポーツと観光を融合した企画を開催するなど、八尾の魅力を伝えるために活動している。現在は八尾にある『楠亭』に勤めている。


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