シドニーにて

画像1 青、な国だ。世界ってこんなに青いんだ、と月並みに驚くくらいには。単純に空や港、海の占める面積が広い。街にも青のフィルターがかかっている。加えていまは真夏。人々は陽気で、活動的だ。 燦々と降り注ぐ陽の下で、明るいうちからビールで乾杯し、テラスで盛り上がり、ダンスしている。緑豊かな公園がそこかしこにあって、子どもたちはシャボン玉などで遊ぶ。そばにはギターでクリスマスソングを歌っている若者がいる。学生は木陰でピクニックをしている。ベンチでひとり読書しているおじいさんもいる。毎日が休日のようだ。
画像2 日本ではあり得ない時間に仕事が終わり、その足でボンダイビーチへ向かうバスに乗り込んだ。インドアな私すら変えてしまう、自由な風が吹いている。人種が多様で言語的な障壁も少ない。ゲイカップルが街でキスしているのも普通。マイノリティという概念が希薄だ…なんとも生活しやすい!これぞ多民族国家のなせる技。しかし元々は移民政策が厳格で、同性愛だって違法だった。今の空気は、弛まぬ意識改革と勝ち取った権利によるもの。人々は新しい風を吹かせ続けた。その風の軽さには、物凄い重みがある。
画像3 オペラハウスまでの道は、最高のウォーキングコースだ。前方に、白のコットンワンピースを着ているお姉さんがいる。青に映えて本当に素敵だ。オーストラリアの港には白い鳥がたくさんいるが、そのようだ。私は日本で黒やグレーを好んで着がちで、プライベートですらそうだから、白のワンピースなんて持ってもいない。でも今はああいうの着たいなあ。あとでマーケットに行ってみよう。
画像4 エジプトとか砂漠にも行ってみたい。青の反動かもしれないけど。きっとまた違うことを考えるだろう。少なくとも今みたいに「わあ あの水着のお兄さん、背筋すごい マッチョとポリネシアンセックスしてみたい 夏っていいなあ」なんてことは考えないだろう。
画像5 シドニー名物は、世界一の朝食と言われるパンケーキ。火付け役となったbillは日本に進出していて、昔女子会で行った時はおしゃれさにはしゃいだ。今はひとり土曜の朝に来ている。多くの家族たち、友人たちが円卓を囲む。日常の一コマが、実家の食卓と重なった。まだ祖父母も元気で、私は母に起こされ、兄姉と大皿にのった朝ご飯を取り合った。幼い私は他愛のないことをただ話していた。今、「世界一の朝食」の意味を、少しずつ咀嚼する…朝食を味わう豊かさ、幸せな記憶、1日の始まりの柔らかな時間。私はそれらを一生大切にしたい。
画像6 美術館は、その地域の特色が現れるので面白い。文化、歴史、芸術だけでなく、その国では何に価値が見出され、何を美と感じるかという、美的感性が現れるのだ。その点で、シドニーも面白かった。そもそも絵画とか彫刻とかではなく、野生動物の標本や、先住民たちの自然に畏敬の念を払う呪術的装飾品、現在の主要業でもある鉄鋼業に即した、自然の産物・鉱石、宝石たちがこれでもかと常設されていた。さすがの自然保護大国である。写真中央の透き通ったブルーは、トパーズ。シェリー酒の色のものが高価だそうだが、この色味、とても美しかった。
画像7 こっちではライスヨーグルトなるものが流行ってる。文字通り、もち米みたいなものが、タピオカのノリで、甘めのとろとろなヨーグルトとミックスされている。味は意外と悪くない。いや、悪くないどころか、どこか癖になる味。これひとつ飲めばしっかり主食なのに、おやつ感覚で飲めてしまう。まずい。完全にハマっちゃった。でも、不思議と家で作る気にはならない。炊き立てのコメとヨーグルトを混ぜるなんて、って、なんか抵抗があるのだ。日本人としての血が受け付けないのか、知らないけど。
画像8 もし7億勝ったら。毎朝美味しいビュッフェ。その後、ゴルフ教室に行ったり海に行って、帰ったらスタインウェイのピアノで気ままに練習して、広くリノベしたアイランドキッチンでのんびりランチを作って、スマートホームにして、良い洗濯機やルンバ、コーヒーメーカー、大きなお風呂を揃えて、昼過ぎにはふかふかのベッドで昼寝をしてふわふわの猫に起こされる。それを全部やったってあまりある。親孝行だって一通りできるしコンプレックスも金で解決できる。しかし。賭け金が2倍になった時点で、スパッとやめた。夢想と夢は違うのだ。
画像9 見てこれ!2人分らしいよ。オージービーフならぬラムチョップだけど、シドニーといえばステーキ。このサイズで出てくる。美味しい。甘辛で、日本人にも馴染みがある感じ。なんというか、炊飯器ごとコメが欲しくなるっ…!
画像10 波の音…さらさらであったかな砂…人々の話し声、笑い声…おだやかだ… lullaboyのtime with myself、 最高のムードだ。やっぱり何もいらない、パンケーキも一攫千金もコットンワンピースもライスヨーグルトもイケてるマッチョとのセックスも天然石のジュエリーも…ねむたくなってきた あったかいし 死ぬ瞬間もこんな感覚なんだろうか。それなら、それほどこわくないかもな

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