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EPAD Re LIVE THEATER in PARCO 〜時を越える舞台映像の世界〜 「笑の大学」上映とトークショー

三谷作品や野田秀樹作品、劇団☆新感線などの美術を手掛ける堀尾幸男さんの舞台美術のイベント関連で、「笑の大学」上映と堀尾さんと三谷幸喜さんのトークショーが7月16日にありました。トークショーはとにかく濃い内容。しかも無料イベント。

今年の春に上演した「笑の大学」を、8K+ドルビーアトモスで大迫力上映。しかも実際に公演があったPARCO劇場で。舞台に合わせたスクリーンであたかも目の前で演じられてるかのような臨場感。

三谷さん「色んな席に移って観たんですが、変な感じになる所はありますね。でも地方公演とかこれなら騙せるんじゃないですか?」(おいおいw)
演劇をこういった映像で観られるのは面白い試みだが、ハプニングが無い、起こりようがないのがつまらないと堀尾さんと三谷さんは口を揃える。

でも三谷さん「内野さんはいくつか噛んでますけどね。彼はいつも同じ所で噛むんですよ。」

舞台美術で一番大切なのは、役者の出入りの場所と堀尾さんは言う。それは舞台袖なのか中央なのか、それが決まる事で舞台全体も決まると言って過言ではなく、三谷さんは出来てきた舞台美術のプランから当て書きする事もあるとか。

あと、高貴な人が必ず上手(かみて)に座るとか舞台の上下(かみしも)の話も面白かったな。堀尾さんがその話をしたら、上手に座ってた三谷さんが交代を要求したり。

以下、三谷舞台でのエピソード

「笑の大学」で、稽古期間中に堀尾さんが突然折り畳み式のカラスの小屋を作ってきて、これはカラスの入るサイズじゃないと三谷さん困惑。折り畳みにしたのは、持ち込んできた時に小屋だと悟られないようにするため。後に、「小道具の堀尾さんが作ってきた」のセリフを追加。

「笑の大学」のセットの床、向かって斜めにして奥行きを出す事も考えたが、1ヶ月以上の公演で役者の足腰に負担がかかるのでフラットにした。

そういえば、と、三谷さん。思い出したエピソードがあって、三谷さんが12人の優しい日本人に出演した時がその斜めの床で、手遊びで鉛筆を回してたら落としてしまいコロコロコロ…。
役者たちの「鉛筆が転がってる!」のアドリブに救われたとか。

「決闘!高田馬場」のブレヒト幕(幕をシャッと左右に動かすと役者が出てくる)は、経験豊富な堀尾さんのアイデアによるもの。公演当時、この演出に驚かされました。

「三谷文楽 其礼成心中」では、初めて取り組む伝統に苦闘。三谷さんが「主役以外の人形を動かしてみて」と提案したら、太夫が誰の声を当ててるか分からなくなったり、堀尾さんはデカい人形を作ったら怒られたり、カーテンコールの序列が本当は、太夫>三味線>人形遣いなのを初めて知ったり。でも、太夫を先に出そうと思うと時間が掛かるので、伝統だがそこは飲んでもらって、人形遣いから出てきたみたい。

「大地」のソーシャルディスタンスVerは、コロナ禍で何とかしないと中止になると聞き、稽古直前というギリギリにセット変更があった。(三谷さん「中止という考えはなかった」)でも、コロナで前の舞台が中止になったことでPARCO劇場で稽古ができた。

印象深いのは「コンフィダント・絆」で、中井貴一さんが絵を抱きしめたら衣装に絵の具がつくという稽古中のアクシデントも演出に取り入れた。

堀尾「中井貴一さん、いい役者ですよ(客席に)知ってます?」

三谷「みんな知ってますよ」


堀尾さんが感じる三谷さんの舞台の良さは、セットから一歩も外に出ない事。他の舞台のように場面が変わると発生する新しいセットを、メインのセットのサイズと違和感ないよう合わせなければならないので大変だとか。ただ、台本は遅い。でも、台本が途中でも美術は作ってしまうとか。

今や舞台美術のベテランである堀尾さんの原点は、ディズニーランドのホーンテッドマンション。(お客さんからヒエ~っと驚きの声が)

ほか、イッツアスモールワールドなどいくつかのアトラクションを手掛けたとか。シンデレラ城はまず、モデルのノイシュバンシュタイン城を実際に建てたら…と費用を計算する事から始めたとか。

最後の最後にこんな凄いエピソードぶっ込んで来るんだもんなあ…時間が足りませんでした。

トークショーの後は舞台上で笑の大学のセットや小道具を見学できる自由時間もありました。


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