2021/5/18-19(水)やせ我慢は美学というだけではなく
今日も大相撲の話。
今は武隈親方として後進指導に当たっている豪栄道という元大関がおります。彼が現役中に信念としていたのが「やせ我慢」。現役中、全勝優勝という快挙を達成した大関ではありましたが、大関在位中いつもいつも見栄えの良い成績を残せていたわけではありません。その当時には公表されていなかったケガ(骨折含め!)も数多くあったようです。しかし豪栄道という大関がケガを言い訳にした姿というのは、少なくともテレビ桟敷での一視聴者である私には見覚えがありません。
人前で負けるというのは気が強ければ強いほど、耐えがたく恥ずかしいことだと思います。誰だって負ける姿は見せたくないでしょう。つい「弱いからじゃない、ケガで本領が発揮できないだけなんだ」と言い訳したくなるでしょうし、勝ち負け以前にそもそもめちゃくちゃ痛いでしょう。痛みが来るとわかっていて力を出すのは怖いでしょう。よく土俵に立って戦おうという気力が保てるものだと、常人にはなしえない精神力の強さに恐れおののいてしまいます。
やせ我慢を貫くのは、個人レベルでは美学であり、プライドなのだろうと思います。人に負けても自分自身の弱さや恐怖心には決して負けてなるものかという。ただそれは個人の美学を超え、その力士を現役中ずっと、見えないものから守り続けてくれるよろいでもあるような気がします。
これまで好調だった力士がある日を境に突然弱くなるのは、十中八九、ケガです(突き押し相撲除く)。場所中か稽古中にどこかやっちゃったんです。
だからって本人も、それこそファンも、いちいち公表したり、そのつど察して同情したりしてたら、その力士はいつまでたってもそこから上にはあがれません。だって言い訳だもん。理由がなんであれ、勝てないことに言い訳を見つけてしまったら、人は満足しちゃうんです。本人もファンも。
言い訳を習慣にした力士は、徐々に支持も人気も失っていきます。