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頼まれてもないのに。その53(令和六年大相撲初場所を振り返る)

 令和六年。
 まだひと月しか経っていないのだけれど。
 なにがあっても角界だけは前向きな話題にあふれ続けていてほしいと切に願います。

 大相撲ファンとしてうれしいことまずは二つ。
 横綱照ノ富士の堂々たる帰還。圧倒的強さをもってしての9回目の優勝。
 そして初場所後の大関琴ノ若誕生(※琴櫻襲名は5月場所以降とのこと)。

 感動は与えるものじゃなくて結果のひとつ。
 毎日毎日を人一倍必死に生きている人が時々もらえるご褒美に、私たちが共鳴のおすそ分けをいただいているだけ。
 努力がいつもいつも報われるわけではないから。
 努力してない人などいないから。
 それでも努力するしかなくて、努力を重ねることしかできなくて、そんな誰かの努力が正当に報われたとき、私たちもまた一緒に涙を流す。

 報われない努力のほうがずっとずっと多いから。
 努力の量では決まらないから。
 それでも結果を出すためには。

 今場所勝ち越したお相撲さん、勝ち越せなかったお相撲さん、とてもとても全部を追えるわけじゃないけれども、本当に今場所もお疲れさまでした。

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 強すぎる照ノ富士が本場所の土俵に帰ってきました。
 13勝2敗、優勝決定戦を制しての9度目の賜杯。
 関脇琴ノ若と大関霧島相手に見せた相撲を見る限りまだまだ力量は横綱のほうが上でした。
 序盤の展開次第では今場所で……と覚悟していたのですけれどなんのなんの、中盤あたりからむしろ調子を上げていき土俵入りも無事千秋楽までつとめあげ、よかった、よかったよう。
 いつの間にやら照ノ富士ももう32歳。VIVANTのドラムさんと(ドラマ見てなくてすみません)陽気なボイパを披露してた頃を知っているので感慨深いことこの上ありません。

 琴ノ若、ついにここまで来ました。同じく13勝2敗での優勝決定戦。大関霧島との一番にはしびれました。それでも本割、優勝決定戦と横綱にはほぼ歯が立たず。「出直してきます」とのコメント、いいですね。
 場所後の大関昇進。来場所一場所は大関琴ノ若として土俵に上がり、翌々場所の夏場所からついに「琴櫻」を襲名する流れであることが発表されました。
 これによって「大関琴ノ若」が存在したという記録が角界の歴史に刻まれるのですね。

 霧島は今場所の主役の一人だったけれど、終わってみれば照ノ富士、琴ノ若、両者の引き立て役みたいになってしまったのが残念。
 まあ最近はちょっと結果出したとたんなんでもかんでもすぐ騒ぎすぎだから。話題作りで無理に騒がずとも時期が来ればね。

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 新入幕の大の里はとんでもなかったですね。11勝4敗のうち役力士と当たって負けた3敗以外は阿武咲にしか負けてないって。いくら初見とはいえどういうことですか。上位で取ってる力士たちが普通に力負けしてるの。
 実は私、国技館の近くに用事があったので入り待ちしに行った日があるのですね。そこで生で大の里を見ましてね。
 なんだろ。新入幕でまだまだ怖いもの知らずってのもあるんでしょうけど、えらくぴかぴかしててはつらつとしてて、何より仰天したのが目の奥が笑ってるのよ。表情として笑ってるとかへらへらしてるとかそういうんじゃなく、なんていうのかな、顔は凛としてかつ穏やかなんだけど、楽しそうで生き生きした目なのよ。
 
 ここのところ学生相撲で結果を残した力士たちが当然のごとくプロでも結果を出して注目の的みたいなのが続いていたので、またかよはいはいざんばら髪でこの地位すごいですねと実はかなり食傷気味だったんですよね。強いの連れてきてんだからそりゃ強いでしょうよと。
 でもこのお相撲さんはなにかが違う気がしますね。入りの姿を見れたからというのもあるでしょうが。強さの前に人として面白そうなのでウォッチしていきたいと思いました(ていうか大相撲ファンのほぼ全員が注目してる逸材ですよなにをいまさらと言っておきたい)。

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 遠藤にとって今場所は実に大変な場所だったと思います。
 他の石川県出身の力士たちにとっても、もっといえば地域によっては同じくかなり被災している富山や新潟の力士たちにとっても今場所は大変な場所だったと思うのですけれども、遠藤の故郷である穴水町の被害状況は報道で伝え聞く限りでも。
 いつにもまして結果出したかったろうな。悔しい場所になってしまいました。

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 今場所はどういう場所だったかといわれるとこういう感じになるかなと。
 ほんとはもっといろんなドラマがあるんだけれど。
 ファンの人たち一人一人がそれぞれ受け取ったドラマがあるんだろうな。

 世の中がどれほど過酷であふれていても、角界だけは忖度も同情もなく、公正で明るく強くありつづけてほしいです。
 今年もあまり明るい年にならなさそうだから(この言葉が逆神であれ!)せめて角界だけでもどうか、という思いです。
 だからといって感動を与えようなんてつまんないことは言わないでくださいね。皆さんがただ目の前のことだけに集中して一日一日を過ごしている姿に私たちは勝手に安心し、喜んだり悲しんだり悔しがったり、そんで時々感動したりするだけのことなんです。

 目の前のことだけに集中して生きる。
 そんな一見単純なことが今の私たちには一番難しいのだもの。

 来場所は大阪。
 私たちを驚かせる数々の名場面が来場所もたくさん見られますように。


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たまやまめふく
武者修行中です。皆様に面白く読んでいただけるような読み物をめざしてがんばります。