馬風師匠と寄席の神さま
九月上席は鈴本演芸場の交互の出番で
6日やかん
7日善光寺由来
8日つる
9日松竹梅
10日七段目
を勉強させて頂きました。
寄席は日々様々なお客様、何が起こるかわかりません。
実は9日にちょっとしたハプニング?がありました。
なんと馬風師匠が出番直前にトイレに行きたくなってしまったのです!
どうも帯を締めたらお腹を刺激してしまったそうで…。
いや、我々は可笑しくて仕方がなかったのですが、馬風師ご本人は大変です。
馬風師「どうしよう…。キレる…キレる…」
前座A「はい、もうすぐ高座がキレます」
馬風師「(お腹を抑えながら)違うよ!こっちがキレるんだよ!」
我々は前の高座の切れ目を「キレる」と呼んでいるのですが、馬風師はお腹の決壊も「キレる」と呼んでいらした様で…
いやぁ、寄席芸人だなぁ
なんてのんびり感想を述べている場合じゃありません。
アタシ「師匠!私が先に上がります!」
馬風師「そうか!すまない!ありがとう!」
そう仰るや否や(as soon as)トイレに向かわれる馬風師匠。
アタシは高座に上がってからも可笑しくて仕方なく、途中のくだりから始めようと思っていた『松竹梅』を、最初から入ってしまいました。おかげで、喋りながら噺のカットをするのに一苦労。
高座を降りたアタシに
「ありがとな。おかげで助かったよ」と満面の笑みの馬風師匠。
どうやら間に合った様です。
(良かった良かった。)
楽屋で紋之助師匠に
「いやぁ、よく着替えてたねぇ」
アタシ「何故か今日だけ、たまたま着替えてたんですよ。虫が知らせたんですかねぇ」
紋之助師「きっと寄席の神様が味方してくれたんだよ」
アタシ「今ですか!!もっと大事な時に味方して欲しかったのに!」
そんな会話をしましたが、よく考えたら、神様は馬風師匠に味方して下さったんですね。
馬風師は寄席の高座を普段からとても大事にされています。
アタシがまだ二ツ目の時、浅草のクイツキ(仲入り後)の出番を頂いたことがありました。
弟弟子に稽古をつけていて、楽屋入りが遅れたアタシ。
楽屋に電話して、自分の出番には間違いなく間に合う旨を伝えました。
仲入りの雲助師匠の高座中に到着したアタシを待ち受けていたのは、出番を終えられた馬風師匠。
アタシの顔を見るなり
「お、ちゃんと着いたな。じゃあ俺は帰ろう」
どうやら、万が一のことがあって高座に穴が空くといけないので、帰らずに着物のままで待っていて下さったのです。
二ツ目の到着を待つ落語協会前会長(当時)。
ありがたいやら申し訳ないやら。
それだけ寄席を大事にされているんですね。
そんな日々の思いや行動を、寄席の神様はご覧になっているのでしょう。
2023.9.11 18:00HPに投稿
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