[噺のネタ]番外編 量と質、どちらが大事か?(噺家の「持ちネタ」について)
今回は番外編で「持ちネタ」について。
噺家が「持ちネタ」という言い方をする時は二種類あります。
広義には「覚えたことのある噺」のこと。稽古をつけて頂いたけれど、高座に掛けたことはないネタも含めます。
せっかく覚えたのに何故高座に掛けないんだ、と思われるかもしれませんが、いくつか理由があります。
①高座に掛けずとも絶対にウケないのが自分で痛い程わかる
②高座に掛けるのが嫌になるくらい出来ない箇所(仕草だったり人物描写だったり)がある
③覚えた時期に高座に掛けるチャンスがなく、そのまま忘れた…
などです。
そういうことも含めての、云わば「高座に掛ける資格があるネタ」という意味での持ちネタ。
よく「ネタ?200はあるよ」と得意げ…いや、胸を張って言う場合はこのパターンです。
一方、狭義では「今すぐに出来て、かつウケる、自分の得意ネタ」のこと。
ある程度キャリアがあって、きちんと修業している人が「10とか20しかないんだよ」と言ったら、こちらです。
同じ「持ちネタ」でも片方は量を、もう一方は質を重視した考え方なので、意味が変わってくるようです。
この量と質、どちらが大事か?というのはよく議論されます。
楽屋でも「あの人、ネタが何百とあっても、面白いの1つもないじゃない」と言われてしまう気の毒な方もいれば、「全国どこででもウケる噺が3つあれば、一生安泰だよ。だから数多く覚えても意味ないよ」と仰る方も(主にメディアに出ている方が仰る印象)。
どちらも極端な例ですが…
とくに二ツ目時代に、1つ1つ覚えたネタを練り込んでいくか、とにかく片っ端から覚えてしまうか。結構別れます。
アタシは後者。昔の名人上手と言われた師匠方の「30代までは仕込みの時期だと考えて、とにかく沢山覚えなさい。売り出すのはその後から」という言葉の影響もあって、とにかく覚えました。
お陰でネタ数は多い方のようです。
そんなアタシも来年は40歳。今まで覚えた噺の中から自分に合うネタを選んで、磨き込んでいかなくてはなりません。
ネタおろしもまだまだ続けて参りますので、応援の程よろしくお願い致します!
2020年11月19日HPに掲載
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