原発事故の避難指示遅れは行政の「不作為」責任か
訴えの利益のある人々→東電
「東電が原発を管理できていないことによって損害を受けた」という訴訟はイメージしやすい。損害を与えたのは東電であって,損害を受けた人々は東電を訴える。
訴えの利益のある人々→国 過失責任
「国がちゃんと東電を管理すべきであったのにも関わらず,管理できていなかったので損害を受けた」という訴訟。国会中継なんかで総理大臣,各大臣が追及されている様子を見ると,あたかも国だけが悪いように感じてしまいがちだけれど,国が追及されているのは原発という仕組みへの規制権限の行使であって,そもそも損害を与えたことへの追求ではないという事は整理しておくべき事項。損害を与えたのは東電であって訴えの利益のある人々は正攻法では東電を訴える必要がある。国へ追求できるのはあくまでその規制権限の行使である。これは感情論でなく,あくまで仕組み上の問題として。
ちなみに,これに対する国の見解はこちら。簡単に言うと予見できなかったから規制のしようもないよね。2021年3月現在,東京高裁(2021/03/04)と仙台高裁(2020/09/30)で国の責任が認められている。簡単に言うと,ちゃんと予見できるだけの要素がそろっているから予見できたはずだよね,規制権限を行使しきれていなかった国にも過失があるから賠償してね。
今後の最高裁の判決が興味深い。
訴えの利益のある人々→国 不作為責任
これが今日見た記事でひっかかったパターン。
行政が成すべき行為を成さなかったことにより損害を受けた場合は,その不作為を追求して国家賠償請求することができる。不作為にはいくつかのパターンがあり,原発事故の「避難指示遅れ」の責任追及は,このうち危険管理責任型タイプ(損害の直接の原因は自然現象や第三者の作為等であり,国が損害の発生を防止すべきであったと考えられる場合)にあたる。
こちらも今後の判決が気になるひとつ。