1930年代のハリウッド映画とファッション
前回、1930年代に大活躍をしたエルザ・スキャパレッリについて書きました。続いて、今回は同じ1930年代の映画とファッションの関係性について書いてみようと思います。1930年代のファッションの潮流を作り出したのはハリウッド映画でした。ヨーロッパのクチュリエたちは、ハリウッド映画の斬新な衣装を参考に新たな衣装を生み出していきました。
1930年代の映画といえば、無声映画からトーキー(発声映画)へと移り変わり、映画の可能性が広がった時代です。1929年の世界大恐慌から始まる不景気とヨーロッパで勃発する戦争から目を背けるかのように、多くの人々が映画館へ足を運び、華やかな映画の世界に想いを馳せました。そして、映画の中の登場人物のファッションは、多くの人々に影響を与え他のです。
『類猿人ターザン』(1932年、W・S・ヴァン・ダイク監督)が公開されると、ファッション界では動物柄のプリントが流行しました。ジーン・ハーロウが着用したバイアスカットのサテン製イヴニング・ドレスやキャサリン・ヘプバーンのカジュアルルックには、無数の追随者が現れました。
『令嬢殺人事件』(1932年、クラレンス・ブラウン監督)で、レティ・リントン役を演じたジョーン・クロフォードのために衣装デザイナーのギルバート・エイドリアンがデザインした白の絹モスリンのロマンチックな印象のドレスは、1930年代末まで流行を続けます。特徴は、大きな袖です。1930・40年代のスキャパレッリが始めたパッド入の入った服の流行に一役買いました。1939年の『風と共に去りぬ』(ヴィクター・フレミング監督)でも、衣装デザイナーのウォルター・ブランケットはレティ・リントン・ドレスを取り入れています。
レティ・リントン・ドレスを作ったエイドリアンは、『ザ・ウィメン』(1939年、ジョージ・キューカー監督)で主要な登場人物のそれぞれに特徴的な衣装を着せています。映画は白黒ですが、映画のファッションショーの短い場面だけはカラーです。ここでは、映画がエイドリアンの前衛的なファッションを紹介するPR映像の役割を果たしたのでした。アメリカで大流行した、おしゃれに傾けた小さな帽子も『ザ・ウィメン』から生まれた流行です。そして、エイドリアンがジョージ・クロフォードのためにデザインしたスクエアショルダーのスタイルは、大恐慌や戦争を背景とした緊迫した空気感とマッチし、1930・40年代の人気シルエットとなりました。
パリ・クチュール組合の会長も務めたデザイナー、ルシアン・ルロンは、「我々クチュリエは、もはや映画なしでは存在できない。同じく映画も、我々抜きでは存在できない。互いに支えあっているのだ。」という言葉を残しているように、映画とファッション界の関係は、なくてはならないものだったのです。
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