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人工林の科学(スギ・ヒノキの森と土砂崩壊のこと)

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シリーズで書いた『人工林の科学』講義編・調査編をマガジンにまとめました。林業に関わる方必読の内容です。
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#大内正伸

人工林の科学/調査紀行編1(紀南の崩壊地、那智川源流をを歩く—— 2013.5.23〜25)

古座川のスギ林を計測してみた 紀伊半島豪雨から1年9カ月後の5月、森林調査を目的に旅をした。まずは那智の滝へ向かった。途中「稲積島」や「江須崎」の天然林を見、そのあと古座川近くで人工林の山に入ってみた。地図上で赤点のあたりである。 山の外観は青々としているけれど、中に入れば写真のような感じで、超過密なスギ人工林だ。林内に他の雑木はほとんどなく、道際はわずかにシダなどが生えている。樹高はどのくらいだろうか? 根倒れした木を見つけたので、巻き尺で正確な樹高と胸高直径を測ってみ

人工林の科学/森林講義編7・最終回(日本の雨とヨーロッパの雨、道づくりと囲炉裏部屋)

日照の長い夏に雨が多く、ヨーロッパ諸国1年分が1日で降ってしまう日本の山 さて時間が来てしまいました。大事なところだけ残り時間でお伝えしましょう。この表は日本とヨーロッパの雨のちがいを見せたものです。『木を植えた男』(ジャン・ジオノ+フレデリック・バック/あすなろ書房 1989.12)という絵本がありましてね、一時たいへんに売れた本でブームになりました。これ、フランスのプロバンス地方で荒野に木を植えたという美談なのですが、プロバンスというのは雨の少ない乾いた場所でして、日本

人工林の科学/森林講義編6(風雪害のない山づくり、間伐こそ日本林業の核心)

スギ・ヒノキ林なのに地面がフカフカ、保水力抜群の山になる! これは四国高知県の魚梁瀬杉で有名な馬路村魚梁瀬の山です(下写真)。なすび伐りといって天然林の中から優良木を抜き切りし、幕藩時代から厳重な保護を受けながら森を育てていったところです。ここも雨が多く、何度も大きな台風が通過しているはずですが、これだけの太い木が混交林になって残っています(写真は同じ地点で上中下層を撮って並べてある)。このような森では土もフカフカして腐葉土が厚く、大量の雨を吸収・保水する機能を備えています

人工林の科学/森林講義編5(目指すべき森のかたち、風雪害・自然間伐の再生林と「伊勢神宮宮域林」)

紀伊半島の人工林の問題点 紀伊半島の森・人工林の問題点を整理してみましょう。 まず、土壌は世界最高といっていいほどの褐色森林土壌です。しかしその下の心土、岩盤、土が崩れやすい。軟らかい。もともと崩れやすい地質の上に広葉樹がしっかり根を張って防いでいたのではないか。 それを皆伐して人工林化した。それをきちんと間伐して、間に広葉樹を入れればよかったのだが、それができなかった(*23)。  ①吉野林業の影響下にあり密植林を真似る → 間伐が遅れるととたんに線香林化。 ②台風

人工林の科学/森林講義編4(荒廃人工林はどうしてできるのか? なぜ崩れるのか?)

道路工事で伐るまで解らない、緑麗しい荒廃林 紀伊半島に戻りましょう。これは私がブログで紹介している熊野の本宮の近くの人工林の写真です。2年半くらい前(2010年5月下旬)に撮影したものです。 これは崩れたのではなく、道路工事で林内の様子がよく解るという例なのです。道路工事でじゃまなので森林のキワを伐ったのですね。伐る前はこの緑が下まであって、一面緑の葉に覆われていた。森のことをまったく知らない人がそれを見れば「ああ麗しい緑の山だ」と思うでしょうけれど、ここを伐ると中があら

人工林の科学/森林講義編3(気候風土と森林の基本構造・紀伊半島の実像)

3つの写真、イチイガシのどんぐり・伊勢神宮宮域林・アトリエの囲炉裏前置きがちょっと長くなりましたが、スライドを映しながらお話をしたいと思います。 私は講演の度にスライドの表紙をオリジナルで作ることにしているのですが、今回は3枚の写真を使いました。左①は先日奈良に行ったときに奈良公園でイチイガシがたくさんあったのでどんぐりを拾って撮影したものです。 まん中②はこの講演の中で詳しく説明しますけれど、人工林施業の非常にすばらしい成功例である伊勢神宮宮域林のヒノキ林の写真です。昨日

人工林の科学/森林講義編2(プロローグ=熊野の森を歩いてみた!)

どうもこんにちは。たくさん集まっていただいてありがとうございます。後藤先生の作られた「熊野の森ネットワーク いちいがしの会」は以前からよく知っておりまして、すばらしい活動をされているなと思っておりました。このようなところに呼んでいただき光栄です。では講演時間は一時間半ということで、話をさせていただきます。 最初の著作は「林業の技術書」私は林業の専門家でも何でもなく、森林の学術的な勉強を大学でしたとかそういうこともなく、まあ自分で山を歩いて、それから森林ボランティア活動が入門

人工林の科学/森林講義編1(はじめに)

長らくお蔵入りしていた『人工林の科学』(スギ・ヒノキ人工林施業と土砂崩壊のこと、とくに紀伊半島の現状とその再生法について書いた文章)をnoteに無料公開します。講義編(7本)と調査編(5本)+「あとがき」の合計13本です。まずはイントロ「はじめに」です。 はじめに——クジラのひげとベルギーワッフル2011年(平成 23年)8月末から9月初めに日本列島を襲った台風第12号は、広範囲に強い雨を降らせ、全国各地に土石流・地すべり・崖崩れなどの大きな被害をもたらしました。特に紀伊半