「新歓コンパ」と聞いて色々よみがえってきたので成仏させたい。
みなさんが季節を感じるのはどんな時ですか?
移り変わる花々、旬の食材、はたまた街中のイルミネーションなど、感じる瞬間は人それぞれ。
私が一番季節を感じるのは、運営しているBBQ施設の予約フォームにある「ご利用目的」を見ている時です。
夏は「会社仲間とBBQ」、秋は「カップルで焚き火」、冬は「友達家族と忘年鍋パーティー」といった感じで、お客様を見ながら四季の移ろいを感じています。
2月に入るとぼちぼち増えてくるのが「卒業記念のクラス会」に「部署の歓送迎会」そして「新歓コンパ」のご予約です。
卒業に歓送迎会に新入生歓迎コンパ、まさに春は出会いと別れの季節ですね。
「新歓コンパ」という言葉を発したのは20年近く前だなと思いながら予約メールに返信していたら、新歓にまつわる思い出が蘇ってきたので、ここで成仏させたいと思います。
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私は高校時代、どちらかというとおとなしめの公立高校に通っていました。
ステューシーを着ている男子が「おしゃれ!素敵!」ともてはやされるような、そんな心温まる高校でした。
でも、大学は東京のど真ん中。
東京でリア充(当時は"陽キャ"なんて言葉はなかった)になるにはやはりテニサーかと悩みながら、入学式後に行われるサークルの新歓ブースを巡っていました。
すぐにテニサーのブースを通りがかりましたが、遠目で見ただけでもリア充感が半端なくて、
眩しい・・・!
見えない結界が張られていて近づけない・・・!
誰もステューシー着てない・・・!
と盛大にひより、そそくさとその場を後にしました。
まさにそのとき。
「こんにちは〜!英語サークルって興味ありますか?」
と声をかけてきた2人組がいました。
そしてそのうちの1人が、
とんでもないイケメンでした。
そして同時に、「こんなにキラキラしているのに真面目なサークルに入っているというギャップ」がかっこいいと思ったのです。
授業をサボったり先生に反抗するようなちょいワルなのに「実は村上龍の"限りなく透明に近いブルー"が愛読書だった」みたいな、薄っぺらいギャップにいちいち感情が揺れ動く多感な年頃だったんです。
私が目指すべきは「見た目はキラキラしているけど実は知的な学生」だと確信し、英語サークルの新歓ブースについて行きました。
そのイケメンによると、英語サークルの正式名称は「ESS(English Speaking Society)」。
ドラマ(演劇)、ディスカッション、スピーチ、ディベートの4つのセミナーにわかれており、そのイケメンはドラマセミナーに所属しているとのことでした。
各セミナーの紹介ブースを周り、最後に行った「ディベートセミナーのブース」で、私の大学生活を変えてしまう運命的な出会いがありました。
そこにいたのは、流暢な英語で死刑制度について堂々と討論している美女でした。
目が釘付けになりました。
こんなにも美しくて、英語もペラペラで、華のあるプレゼンで相手を圧倒している知的な先輩がいる。
先ほどドラマセミナーで出会ったイケメンのことはすっかり忘れ、私の脳内メーカーは「美女・英語・ディベート」で埋め尽くされました。
その後残っていた新入生みんなで新歓コンパに誘ってもらい、ギトギトの唐揚げと、しなびた枝豆しか出てこない居酒屋で、その先輩(以下A先輩)とお話しをしました。
A先輩は黒目が大きく澄んだ瞳で、「ディベートって難しいイメージがあるけど、本当はね」と話し始めました。
「英語で相手を説得するから、自然と英語力がアップするんだよね」
「他大学との交流も多いから、すごく世界が広がるよ」
「論理的思考力が鍛えられるよ。これは一生モノのスキルだよね」
と、ディベートのよいところをたくさん教えてくれました。
新入生にこんなに真剣に話してくれるんだ、という感動もあり、ディベートどうこうよりも「A先輩についていきます!」という気持ちでディベートセミナーに入ることを即決。
その後入会届を出して、無事ディベートセミナーのメンバーに仲間入りしました。
しかし、問題はここからでした。
当初は「サークル参加は週1からOK」と言われていたのですが、いざ入ったところ活動は毎日あるとのこと。
「ブラック企業あるある」みたいな話ですが、友達もできそうだし、まぁいっか、とおとなしく毎日通っていたのですが、行けども行けどもA先輩の姿は見当たりません。
どうしたのかなと他の先輩に聞いてみたところ、驚きの事実が発覚します。
A先輩は、「帰国子女の幽霊部員」だったのです。
A先輩は流暢な英語と堂々としたスピーチスタイルを買われ「新入生を魅了する要員」として、新歓の時期だけ毎日来ていたのでした。
私は、膝から崩れ落ちました。
これを詐欺と言わずに、なんというのでしょう。
A先輩に憧れて入ったのに・・・まさかA先輩も特殊詐欺グループの一員だったなんて・・・。
また、最初に話しかけてくれたドラマセミナーのイケメンは大道具の担当で、結局英語を一言も話すことなく引退したことも後で知りました。
世の中には表と裏があるということを、身をもって知った新歓の出来事でした。
結局引退するまでディベートを続けたのですが、あの日々は涙なしには語れません。
いや、引退後も涙なしには語れません。引退した時、「これからはマンガ喫茶でマンガを読めるんだ」と感動して泣いた記憶があります。
意味がわからないかもしれませんが、「マンガ喫茶でマンガを読む」という一般的には当然の権利が、英語ディベートをする人には一切認められていなかったのです。(注:2000年頃のこと。今は違うと思います)
その理由と思い出は、また別の機会に書きたいと思います。
今年TamariBaarで新歓コンパを開催される新一年生の皆さんが、素敵なサークルに出会えることを心から祈っています。
2024年3月1日追記:
マンガ喫茶でマンガを読めなかった日々について書きました。こちらです。