
きっとだれよりもコロポックル §2
ーきょうはピクニックだからねー
今朝、大きな蕗の葉に声をかけられた。ふたりのビー玉みたいな眼をみて、やたらと涙があふれそうになり「空気が乾いていてああ空が青いですね」ばかりくり返し、同時にこれが蕗の葉に返す言葉だったのかと気づく。
「ヤマちゃんパン屋によってね」と彼女がたちまち羽の生えた妖精になった。それなのに「どこかでナイフをかってください、それもわりとしっかりしたものを」と、かなり怪しい言葉を発してしまった。彼と彼女は驚きもせず「まかせてください!いや、あれ?」と言いかけながらクイックルワイパーがどうのと話は脱線した。
わたしたち3人は、おいしいパンと、よく切れそうなナイフを買い、北海道らしい赤い葡萄酒と羊蹄山の湧水も買ってうきうきした。「アルテピアッツァにいこう!」とか「キタキツネに出会えるかもしれない」とか「焼き鳥たべようね」とか「ヤマちゃんは工房を新しくするんだ」とか「さやさんは蚊よけスプレーを持ってます」とか「たまちゃん明日の仕事はどこなんだ」とかみんなでぐるぐるメリーゴウランドなんだけれど、3人のあたまにずっと貼りついている「きょうはピクニックだからね」が言えないのだ。
蕗の葉っぱの下のね、ピクニック。
わたしたちは共通の場所を持っている。
⇒ものがたるコッチョリーノ「きっとだれよりもコロポックル」1
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