「想う時間」-ハタチのお酒と音楽-
Bar Bossaの林氏が書かれていた記事(一部よめます)にハッとして。少し前に書いて秘めていた自分だけの「記録」を公開することに決めた。
きっかけに感謝。
15.2℃ 晴れ
20年前のあの日。
「想う」という意味の名前と、テーマ曲「イマジン」を贈った。
フニャアと一発泣いて、透明な箱に入ってしまった。現実なのだろうか?と、朦朧とした意識のなかで、窓から陽ざしをあびた黄色い葉っぱをたしかにみた。
「母性」というのは、甘い味のミルクか、 ほわんと香る洗濯物なのか?
実際そんな味や香りはまったくやってこない。まったくの認識ちがいにうなだれた。クリスマスのサンタに失望するかのごとく。
そして、水のなかで眠っていたころ好きだった「ジムノペディ ピアノ曲」 を流してあげたいなあと思っただけだった。
その透明な箱に入っている
小さな生物を眺めたんだった。
「時には昔の話を」
病棟では宮崎駿映画サントラがリピートされ、半ば強制的BGMにもかかわらず、不覚にも「時には昔の話を」(紅の豚)で涙を流した。あれはね、母性を発露させるより、じぶんのために毎日を過ごした甘ずっぱい青春に帰りたくなる曲だった。
倒れかけていた母ロボットは、
ガクガク膝をならしながら立ち上がり、
早い復帰を望んでしまったのだよ、瞬間的に。
20年前のあの日、はじめてしゃべった言葉は、五味太郎の絵本「ぽっぽっぽっぽっ」で、電車をまねた。「イマジン ノ ヘブン」「イマジン ノ カントリ」と、めちゃくちゃな英語でジョン・レノンをまねて、世界平和を歌った。
最小登山シューズを履いた3歳、トーマスのまねをしながらとても高い山に登り、自分がとてもチビだということを知った。イタリアでは、高校生のあなたにも注がれたぶどう酒を大人のまねをして、軽く飲み干した。
自分の名を誇りに持ち、一行目に堂々と名前の謂れをつづってくれたのはうれしかったけれど、いわゆる受験生をまねて書いた小論文は不合格だった。まねせず自分にしかできないプレゼンで憧れの大学に入ったけれど、楽しすぎてはじけたあの晩、救急隊から電話があった。
真夜中にベルが鳴る1秒前、奇遇にも受話器を見つめたそれが、苦い味の「母性」だったのかもしれない。
わたしたちは
たくさんの失敗をして
成功を体験しているんだった。
「イマジン」
この20年間。
世界に住むみんな、偏りすぎた。
ニューヨークの高層ビルから煙をあげる街を見ながら「飛行機がぶつかったんだよ」「それは人間の怒り」「平和じゃない方法」と説明した。「イマジン」はどうしても歌えなかった。
想像してごらん 国なんてないし
殺す理由も死ぬ理由もないし宗教もない
(イマジン)
生意気坂をのぼりはじめたころ、くだらない口げんかをしながら一緒に外た。この先が思いやられるなぁと思った瞬間、大きな揺れに遭った。
突然ふってきた粉雪が不思議で空を見上げていたが、我にかえり工房の様子を見に一緒に走った。
子に映像を見せてはならぬという声もあったが、生きとし生けるものとして、未来を担うものとして「現実」と「現実の裏」があることを知って欲しいので、津波や原発のニュースを見せた。
想像してごらん
天国なんてないし地獄もない
ぼくたちの上には空があるだけ
(イマジン)
日本はダメ、あの国はダメ、この国はイイという話は好きでない。言いわけも好きでない。後悔しても仕方がないけれど、反省しなくてはいけない。成人になった青春に贈るものは、本当はプレゼントより何よりも「安定した地球」だとわかっているけれど、それが見つからない。
シングルモルトにハレルヤ
これから20年。
イタリアを一緒にまわって飲んだぶどう酒の数々。しかし、正式な日になにを飲もう。
北イタリアの霧が生んだ発泡系、リグーリアの塩の香りがする白、友人が手がける乾いた地ヴィンチのバイオダイナミック、マルケの丘の風をあびた自然派、ボローニャの食通たちにすすめられた血潮のような赤、カラブリアの家族が一年分持って帰れと無理なことを言って買ってくれた赤と白。迷いに迷ったのに。
けっきょく近所で買った
エミリア・ロマーニャの
ランブルスコで乾杯。
そんなもん。
一番の贈り物「安定した地球」が手に入らなかったので、おそらく「安定した環境」で、ゆっくりつくられたであろう1999年スコッチを。ハタチになったら渡そうと、シングルモルト好きな家族が選んだものを、クローゼットにずっと隠しておいた。
これからの地球を想いながらゆっくりとなめて欲しい。ひとり想いを馳せて、好きな音を聴きながら飲むのも良い。
きょうも、となりの国では、同年代の青年たちが「安定した地球」を強く望みながら、高く強く旗をふっている。(追記: 今朝ローマ教皇は長崎で核兵器からの解放を唱えた)
人を想い
自分を想う人であれ
あとがきコッチョリーノ
▶︎プライベートな記事はあまり書いてこなかったのだけれど、うつわや料理のプロモだけでは「気持ちの記録」にならないと思いボチボチ。「うつわと料理」はいつも通りツイッターやコッチョリーノブログに。▶︎育児書は一冊もなく「アッコちゃんの曲で子育て」と決めたあの日から20年。▶︎ハタチから3日後、奇遇にも彼は矢野さんと会って話をした!と帰ってきました。ハタチというのはそういうものです。運も不運も、切り拓く力を持つかどうかなのです。▶︎贈り物のおまけとして「スーパーフォークソング」を大きなスクリーンの最前列で一緒に観ました。あなたがいなかった時とはちがう曲で涙があふれました。「あなたが今日も明日もいつまでも愛につつまれているように」(「PRAYER」曲 Pat Metheny 詞 矢野顕子)
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