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「旅する土鍋2018」チャンボッタとかチョケチョとか?!


「チャンボッタ」

オチャラケたくなるようなるような名前の料理は、どちらも「カポナータ」「ラタトゥイユ」に類似し、カラブリア州に限らず、ローマ以南で名前や材料を変えて『ごった煮』として肩ひじはらずつくられている家庭料理。この夏もカラブリアのマンマがつくってくれて無論美味。レシピも書いてくれたが覚えられるほど特別なことはない。使う野菜も前者の2つに似ているが、酢を入れる前者とは異なり、葡萄酒も入れないから後者とも似て非なり。いずれにしてもこれらの料理名は方言に由来する同類のものだろう。

国は異なるが、ニース発祥「ラタトゥイユ」のRataも語源は軍隊スラング『ごった煮』であると聞く。貧乏料理と呼ばれる類であるが、どれも今や贅沢な宝石料理だ。脱線するが、日本の冬の山小屋で食べた「闇鍋」という怪しい『ごった煮』もなかなか良いもんだ。

(写真:土鍋とDamiano Lazzarano)

「チャンボッタ」とは、古代フランス語chabrotに由来し 、イタリア語のmiscuglio(ごちゃまぜ)を意味する。(参照 mangiarebuono)

少し前の記事で「イタリアの夏は、旬であるナス、ズッキーニ、トマトをループで食べ続ける」と書いたけれど、「チャンボッタ」はその究極。

新鮮なものばかり食べられなかった時代、貧困な土地柄から生まれた料理であろうが、そこにある食材は一番おいしい宝石。元祖シチリアの「カポナータ」に魚が入っていたように、プーリアの「チャンボッタ」に魚が入る場合もあるらしいし、「チャンフォッタ」と呼ぶナポリのそれは、残存した牛肉を再調理するために茹野菜を加えるらしい。残り野菜や豆、硬くなったパンを煮込むトスカーナの「パッパ」(パン粥)もご存知のとおり再生料理。

(写真: チャンボッタに加水してパスタ投入)

旬の供給バランスが崩れて、台所でにらめっこするようなときにもそれらは有効で。2週間に1度は寂しい冷蔵庫を見渡して“旬の残り香”を煮て主菜にしたり、スープやパスタにアレンジして最高に贅沢!と目を細めている。

そろそろ世界は「ごった煮」で平和になればいいのに。南イタリアは決して豊かな土地ではないし、古くからマフィアと政治の問題が根っこにあり、現在のカラブリアに関しては難民問題が炸裂している。けれどもみんな元気。人々は激しく喧嘩をし、激しく愛をあらわす。とにかくすべてがチャンボッタ!(ごった煮)なのだ。


「カポナータ」については、タイムリーにも明快な記事を拝読。料理家 樋口直哉(TravelingFoodLab.)氏の記事をリンクしたい。

長くなってしまったのと、おなかが空いてしまったので「チョケチョ」ってなんだ?については次回。

我妻珠美 展-秋を炊く-

2018年 11月16日~11月24日 
東京都中央区銀座1-9-8 奥野ビル4F
Ecru+HM(エクリュ+エイチエム)
※かれこれ10年以上企画してくださっている老舗ギャラリーです


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