Endurance
やぁ、こんにちわ。
ベランダの王の家令です。王への奉仕の日々の中、今日はこちらを読み終えました。
書名:Endurance
著者:Chris Wraight クリス・ライト
長さ:短編/28ページ相当
分類:Warhammer 40k
時代:正確には不明 今作には書かれていないが、M39-40ごろ+M41末期
主要題材:Death Guard デスガード兵団 Dragan ドラガン
副次題材:インペリアルタロン戦団 プレーグゾンビ 転向
関連書籍:The Lords of Silence
Lords of Silence(静寂の主人達)という長編がありまして、その作中に出てくるドラガンDraganというデスガード兵団の指揮官の過去を描く話です。
物語としては、インペリアルタロン戦団のサリエンSarrienという戦闘者の視点とドラガンの視点を交互に描かれて行きます。
まず惑星リストラLystraで、本隊より遠く派遣された分隊の一員として、サリエンの絶望的に続くプレーグゾンビとの戦いから始まります。彼の下で戦う同惑星の連隊兵の面々も際限のない動く屍の津波を前に精神的に病み疲れています。ボルターの弾も3週間前に尽き、戦闘者の超速の新陳代謝でも処理しきれない乳酸の疲労感と負傷の克明な描写から、その過酷さが窺い知れます。
星外から帝国の増援が来るという話もあるが誰も本当だとは信じていません。そんな中、サリエンはこの死が帝国領土の失陥を一月やそこら延ばせることには意味があると自分に言い聞かせながら、無表情になった兵士たちを叱咤激励します。しかし、内心このような無価値な敵の数に圧殺されて死ぬだろうという予測は、彼に不快感を覚えさせていました。
一方、場所が変わって宇宙空間を征くドラガンの航宙船Incaligant(デストロイヤー級程度の比較的軽量な艦;艦名の意味は、おそらく「怒り」)。大きな作戦が始まるまでは気ままな破壊と放浪を楽しんでいましたが、眼前に護衛艦もつけない帝国海軍の艦艇がワープ航行から出現したのを見て、これ幸いと攻め込みます。数千人程度の弱小な乗組員達を部下に片づけさせながら、帝国艦の演算機を調べ、そこに登録されていた惑星リストラの地名を見かけます。まぁ気晴らしにここに向かって見るかとなります。
こうして、「ああ、サリエンはドラガンと戦って死ねるのかな?」と思いながら読んでいたのですが、読み進めるうちに、サリエンの身体は疲労と負傷と蟲の寄生にボロボロになってゆき、緑の目をした男の姿とその人物からの挫折を促す言葉を幻覚するあたりで妙な雰囲気があり、一方ドラガンが惑星リストラで会うのも帝国の戦闘者たるサリエンではなく同じ大逆者のアイアンウォリアーのウォーバンドで妙な掛け違えがあります。
そして最後に同じ舞台となる壊れた古い大聖堂の状態描写から、全く違う時代が交互の描かれていたことが、そしてサリエンがいかにその不屈ぶりと力への潜在欲求の強さからナーグルの寵愛を得て蠅の卵を植え付けられ、精神汚染から記憶を失ってドラガンになってしまったかがわかります。これはサリエンがせめてもの名誉ある戦死を得た話ではなく、全てを失った話なのです。
彼は自分が堕ちた場所に2000年ぶりに戻ってきたのですが、かすかな脳裏の疼きだけがあるのみで、一顧だにせずこの地はもはや無用と去って物語は終わります。
【コメント】
・ドラガンは兵団内でGallowsmanという渾名があります。Gallowには絞首台の意味があるので、そのまま読めば首吊り大将といった感じになりますが、意味が転じて「どうにもならない状況」「絶望の極み」みたいな意味があります。実際、サリエンとしての最後の時は物資はなく、仲間も遠く、救える人はおらず、そしてその惑星を維持する戦略的意義も見えないなかで、いつかただ死ぬのみ、という絶望の中にありました。誰が名付けたかは分かりませんが、「絶望の男」というのが正しい意味となるでしょう。
・彼はもともとレイブンガード系らしきインペリアルタロン戦団出身なので、デスガードの遺伝種子は保有していません。その上で現在は兵団に加わっている例となっています。
・ドラガンの言ですが、40k時代では、大逆者の中では有象無象の集まるブラックレギオンが最大多数ですが、それの次ぐ数を誇るのがデスガードらしいです。
【感想】
これは実にナーグルらしい話でした。
なぜ突然アイアンウォリアーが出てくるのか?あと数ページで話が終わらなくない?と思わせるあたりが、流れ上の起承転結の転として上手く機能しているので、さすが物書きですねと感心しました。
冒頭に出てくる帝国軍艦艇、演算機のディスプレイに惑星リストラの名前がぼんやりと光って表示されている描写なんですが、2000年遅れで来た救援隊だったとしたら悲劇の上塗りで、こいつぁ…となっています。
真実はどうでしょうね。
さて、王への奉仕に戻ります。それではまた。
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