【大人の遠足】浜田山〜阿佐ヶ谷編④
ついに到達した大人の遠足の集大成、阿佐ヶ谷駅の飲み屋街、その名もスターロード。街灯がスターをモチーフにしていて可愛かった。可愛い街灯とは裏腹に、右を見ても左を見ても、そそられる渋い飲み屋ばかり。まずはぐるぐると路地を巡回。
居酒屋の狭い店内では、客が肩寄せ合って酒や肉や魚を食らっている。レコードのLPが棚いっぱいのバー。ステンドグラスが綺麗な入り口ドアに寄りかかり、ジャズはお好き?と声をかけてくるお姉様。昭和の時代からそこにいたであろうマスターがいる喫茶店。立ち飲み屋のおでんの湯気。どれもこれもそそられる!た!たのちい!!
街巡りの好きな知人は「阿佐ヶ谷に住んだら当面、家に帰れませんね」と言っていたそう。なるほど納得である。
とにかく腹が減ったので、やっぱり肉!焼き鳥ですかね!と店先で可愛い女の子が焼き鳥を焼いている店に決めた。判断基準がおっさん。
ビールが止まりません。存分に食べ存分に飲んだ。満足。今日という日がいかに楽しく充実したものであったかを存分に語り合った。我らは大人である。
帰り道、相方が突然こんなことを言い出した。
「浦島太郎が竜宮城へ行き、その帰りに乙姫は浦島太郎に玉手箱を渡した。玉手箱を開くと浦島太郎は竜宮城で過ごした年月分、一気に老けた。乙姫はどんな気持ちで玉手箱を渡したのか?」
考えてみれば変な話だよね。昔話で太郎と名のつく者は、概ねハッピーエンドを迎えている。桃太郎、金太郎、わらしべ太郎、垢太郎。なのに浦島太郎だけ泣きをみている。
なんとなく、繁華街で、はしゃぎすぎると大変な目に遭いますよという教訓かなと思っていたけど。でも亀もたいがいじゃね?助けてもらったのに結果的に恩を仇で返してるし。亀は玉手箱のことを知っていたのだろうか。
玉手箱には「時間」が入っていたとのこと。乙姫はどんな気持ちで渡したのか?そもそも乙姫に感情はあるのか?玉手箱は乙姫の判断で渡したのか、上層部に指示されたのか、玉手箱は常備されているのか、亀はどこまで関与していたのか。
解釈①
乙姫恋愛至上主義説。浦島太郎に惚れた乙姫は、自分以外の誰かに取られるくらいなら…と玉手箱を渡した。
解釈②
アリバイ説。竜宮城は秘密結社なので、若いままの浦島太郎が、竜宮城の存在を口にすると信憑性が出てしまう。なので老人の戯言、と周りの人間に思わせるため、年を取らせた。乙姫は任務を遂行したまで。
解釈③
亀性悪説。亀の策略。むしろ亀が影の主役であり、人間を貶めることを楽しみとしている愉快犯。長く生きてると他に楽しみがなくなっちゃうのかね。この場合、乙姫の関与があったのか、なかったのかで、また解釈が枝分かれしていく。
解釈④
夢オチ。あるある。
そんな珍問答をしながら、スターロードを辿って駅に向かう。週末、阿佐ヶ谷と高円寺に中央線は止まらない。え!そうなの!?と封鎖されたホームへの階段をみて、ちょっと寂しくなる。
次はどこへ行こうかね、と新たな計画を立てながら、電車を待つ。楽しかったね。ここが竜宮城で、実は30年くらい経っていたとしても悔いはないね。などと思いながらホームのベンチに座る。夜風もひんやり、ほろ酔いが気持ち良い。見下ろす街の灯りが思いのほか暗くて、海の底のような浮遊感。ここはほんとに竜宮城かもね。なんつってな。
隣では相方が、ねえ、あのビルの窓の灯りぜんぜんついてないけど、ホテルかな?マンションかな?作りはマンションだけど、週末に真っ暗なマンションてどうなの?と喋り続けている。私は、ほんと、おもしれー女だなと笑いながら、グーグルマップを開いたのであった。
おしまい