同居解消への道 コロナがもたらす副益②
続き…
夫「今回のことを機に話し合ったんやけど、家を出ようと思っとる。やっぱり感染対策できんかったし、コロナが収まっても、俺らは医療従事者で感染のリスクは高いし、母さんにうつすわけにはいかん。毎回、向こうの実家にお世話になるわけもいかんし、別の場所があったほうがいいと思って…」
義母「え?そこまでせなあかんの?…まぁあんたらが決めたならなんも言わんけど…」
詳しいことを話そうとした夫の話は義母は聞いてくれなかった。そこから20分ほど無言の空間が続いた。夕飯の準備をして、出すと、義母は食卓につかずにリビングのローテーブルで食べだした。明らかに怒っているのがわかった。
夫「何で?そっちで食べるん?」
義母「一緒におらんほうがええんやろ?!」
気まずい中、ご飯を無言で食べる私と義母。夫は頭を抱えて、食事に手をつけない。また無言の空間が続いた。
私は自分の口を開くことはやめておこうと考えていた。大事なことだから、後々私が言ったからと言われるのが嫌だった。ただださえ悪いことは全部私のせいになっていた。
夫「母さんのため思って言うとるんやで?今回も迷惑かけたと思っとるし、数日でも家あけるのは嫌なんやろ?」
義母「何でそこまでせなあかんのかが分からん!別にコロナになってもええ!」
夫「何でそんなこと言うん?!死んでまうかもしれんのやで!!」
夫は泣いていた。義母も泣いていた。
私たちは元気だった患者さんがコロナに罹患して重症化していく姿を見ていた。コロナ罹患がどんなに大変で怖いものか身にしみていた。
義母「死んでもええ!なんも怖くない!」
夫「何でそんなこと言うん?父さんがおっても同じこと言うか?」
義母「お父さんがおらんからや!お父さんがおらんようになってもたから、どうでもええんや!」
これ以上、聞いていられなかった。黙っていられなくなった。辛かった。私は義母の横に座り、肩を抱いた。
私「もういいよ、やめよ。この話。ごめんなさい。寂しい思いさせてごめんなさい。勝手なこと言ってごめんなさい。Rさん、もういいよ。」
義母「やっと帰ってきたと思ったら、そんなこと言うから…」
私「そうですよね、すいません。だけど、私たちはお母さんのことが大事やからこの行動をとったんです。病院で、コロナで苦しむ人を目の当たりにして、やっぱり家族にはかかってほしくないって思いました。」
そこから、少し落ち着きを取り戻した義母は、私と話をしだした。私たちの気持ちはありがたいと思っていること、だけど別居しないといけないほどのこととは思えないこと。心配していたし、辛かったこと。ゆっくり話を進める中で、
義母「それやったら、ここに小さい家建てるのは?お母さんそっちに行ったらええ。」
私「お母さんはこの家におりたいんじゃないんですか?」
義母「トイレとお風呂と一部屋だけの小さい離れみたいなんやったら、ばぁちゃんもそうしとるし、ええんとちゃう?それくらい建てれるお金ある!」
敷地内に家を建てることは夫の希望でもあったことを伝えた。ただ、義姉たちの意見も聞きたいし、承諾がいることを伝えた。義姉たちの意見を聞いてから考えたいと。
義姉は近くに2人とも住んでおり、1人は一戸建てに住んでいたが、もう1人は借家住まいであり、夫婦仲もあまりよくなく、別居も考えているとのことだった。いつか、義姉がこの家に戻ってくるのではないかと私は常に思っていた。私たちが新築を建てようと考えていると伝えた時、
義姉「え?じゃぁ、ここに帰ってきてもいい?」
第一声がそれだった。それが義姉の本心であろう。だが、義母は反対した。私は義母だけならまだしも、義姉も同居することは敷地内だったとしても嫌だった。お互いに気をつかうことは目に見えていたし、相続の問題にもなるからだ。だが、義母は長男である夫が残ることにこだわった。たとえ義姉が戻ってきたとしてもそれは一時的なことであり、ずっとではないと言い切った。私は悩んだ。家を建てるということはもう後にひけなくなる。お金の心配もある。子どもができないかもしれない。いろいろ考え、夫婦で話し合った結果、敷地内に新居を建てる選択をした。
そうして、お互いの譲歩によって敷地内に同居へ変更となる。完全同居は解消となる。また私は強くなった。覚悟を決めたからだ。今はとても前向きで、新築ができるのが楽しみである。
未来がどんなものかはわからない。だけど、今を大事にすることを続けたい。
私は、夫が好きだ。だから夫の家族も好きだ。夫が大切だ。そんな夫の大切な人は私の大切な人だ。日々の生活で上手くいかないことやストレスもある。だけど、根本のこの気持ちがある限り、がんばれるのだ。
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