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小学生にポケモンバトルを仕掛けられた話

小学生という生態を過不足なく説明することは難しい。


かつて、私たちも例外なく、小学生を経験した。
しかし、時が経つに連れ、かつての私たちがどうであったか、
何を考えていたのかを思い出すのは難しい。



私が覚えている、小学生の頃の記憶は何があるだろうか。


小一の私は、牛乳が大の苦手だった。



牛乳のあの臭みがどうしても無理で、登校拒否したくなるほどであった。


3時間目の授業中、給食が近づいてくる恐怖と、今日も牛乳と対峙しなければいけないのかという気持ち悪さから、ゲロを吐いてしまい、おはじきセットがゲロの海に沈んだ。


思えば、牛乳から逃げたその時からずっと、人生逃げ腰である。


そろそろ、今回のエッセイの話をしよう。


というのも、この前置きを書いたのは、ゲロまみれ小僧だった私と比較して、最近の小学生は「ちゃっかりしているな」と思うエピソードがあったからだ。


11月某日。友人とサウナのイベントに行くことになった。



私はサウナは意味がないと思っている派だが、イベント事は好きなので行く次第となった。



「サウナで茹でられて、冷水で締めるなんて、なんだかうどんみたいだなあ」と人間うどんを想像しながらサウナで蒸されていると、しっかり自律神経を乱して気分が悪くなった。


「サウナは整う」という言葉を鵜呑みにしていたら、自律神経を乱されて気分悪くなって一人だけ早く上がったり、「サウナはピアス熱くなるからしないほうがいい」と助言をもらい、ポケットにピアスを入れたら無くしたりと幸の薄い話が何個かあるが、今回この話はメインではないので割愛させていただく。


こういった流れがあった後、海辺で涼んでいたら、
小学生からバトルを仕掛けられた。


「僕がお兄さんにかけっこで勝ったら、ポケモンカードのbox買ってください!!」



ポケモンバトルは突然に!!!!



脳内で何度も聞いた戦闘BGMが流れる。



「リアルで初めて、ポケモンバトル仕掛けられた!」
と思いながらなぜか小学生とポケモンバトル(かけっこ)をすることになった。


ちなみに、ポケモンカードは何を所望か?と尋ねたところ
「スカーレットバイオレット 古代の咆哮 box 5400円」とのこと。



「絶対に嫌だぜ☆」と思った私はなんとか逃げようと、「いやあ〜」とか、「スリッパだし〜」とか「サウナで乱されて〜」など逃げ腰の姿勢を貫く。



「お兄さん逃げるんですか。もしお兄さんが、僕から逃げたり、負けたりしたら、お兄さんは一生彼女いないし、一生爪か鼻くそを食べないといけなくなりますよ」と言われた。



小学生最大限の悪口、「爪・鼻くそ地獄」の刑に処されてしまうそうだ。
(そして、少年よ、なぜ私に彼女がいないことがわかる。)


人生逃げ腰の私も、ついに克服する時が来た。


どうしても逃げられないということを悟った私は、やるしかない。
と決心を固める。



そして、やるからには、絶対に勝たなければならない。
小学生にわからせるのだ。社会の厳しさを、大人の本気を。


競技は50m走。
ルールは、少年がスタートしてから2秒のハンデを与えてのスタート。



「男に二言はないですよね。」
小学生がおよそ使わないような文言を使って、逃げる選択肢を与えない。


さっきまで鼻くそと爪を食べさせようとしてたのに、、、。



ちゃっかりしてるんだか、してないんだか。



位置について、よーい、スタート。

少年が走る。1、、2、、。

2を言われた瞬間、最高のスタートを切る。
途中スリッパが抜けそうになったが、ギリギリのギリギリで、勝利を掴んだ。


俺、歓喜の咆哮をあげる。

(「23歳、彼女なし、ピアス無し、自律神経乱れ男 歓喜の咆哮 BOX5400円」)



3秒差だったら絶対に勝てていなかっただろう。


少年は悔しい面持ちで、もう一回とせがんでくるが、「流石に疲れたのでまた後で、」などと適当にお茶を濁した。


次はその妹に、かけっこをしようと打診された。


『〇〇兄妹にバトルを仕掛けられた』


なんだか本当にポケモンバトルでありそうな展開で思わずワクワク。


妹ちゃんは何を所望か?と聞くと「メルちゃん人形!!!」とのこと。


ちなみにメルちゃん人形はAmazon税込4400円。


これまた負けるわけには行かない。
女・子供といえど、手を抜くことはできないのだ。

妹ちゃんには3秒のハンデとなった。


これはに、圧勝。
身長差100cm、年齢差15、精神年齢タメ。

圧倒的勝利に喜びを噛み締める。(最低です)


その後、ずっと再戦を申し込まれるも、
「いやあ、もう疲れちゃったから〜」とはぐらかし、向こうの親御さんが「そろそろ帰るよー」と声をかけてきたので、安心して手を振って送り返した。


後日談なのだが、一緒にいた友人は、妹ちゃんにこのようなことを言われていたらしい。


小学生にして、「子供の遊びに付き合ってくれた」ということを悟り、いい男だと称してくれる小学生に脱帽した。


精神年齢タメだと思っていたら、向こうのほうが上だったのかもしれない。


何はともあれ、愉快な兄妹とポケモンバトルができたので今回のサ活は成功だろう。


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