AIと話すために本を読む(英語学習)
英語4技能のうち「話す・Speaking」が苦手という人が多いと思います。これはIELTSの統計でも明確にあらわれています。
Speaking / Overall を比較すると、スピーキングが弱い国は「ベトナム」「中国」「韓国」「日本」であることがわかります。どうやら漢字圏の国民にとっては、スピーキングはなかなか難しいようです。
1.オンライン英会話
私はQQEnglish(@qqenglishjp)のレッスンを2014-2020年で合計934回受けた経験があります。
QQはかなり先まで講師を予約できるのがとてもよかったし、講師がオフィスに出勤してレッスンをするので通信の質が常に高く、また講師の態度や身なりなどを含めた質が平均的に高かったと思います。要は快適でした。
当初は夜に週2回、その後は平日朝30分やっていました。
1レッスン50pt=500円です。
500 * 5 * 52 = 130,000円/年、943回は467,000円です。
レッスンはNews Alertで、開始時にネットニュースの記事リンクを送ってくるので、まずは音読します。音読では発音を指摘してくれます。
次に、単語リストをチャットで送ってくるので、「全部知ってる」「これとこれは初めて会う単語」みたいなやりとりをします。
ここまでで約10分経過します。ここから、講師が用意している質問に、英語で答えて会話をします。ここからはほぼ自由ですので、何を話しても大丈夫です。
オンライン英会話で良かったことはいろいろありますが、
1)講師が優しいと英語学習のやる気が出る
2)会話の呼吸に慣れる
3)異文化理解度が高まる
あたりが良かったかなと思います。QQの先生は早朝でもテンション高くて明るかったですね。適当に予約しても外れがほぼいませんでした。
オンライン英会話をやめた理由は、自分が話す内容が物足りなく感じたからです。自分の母語の知識と比べると、幼稚な話を浅くしかできません。オンライン英会話は「楽しいおしゃべり」ですので、講師も難しい話をする気はないのです。
2.英作文添削
オンライン英会話の話題がワンパターンになってきたのを感じて、2021年からはIDIY(@IDIY_ENGLISH) での英作文(100words)を365日やってみました。
日替わり英作文のお題はなかなか興味深く、回答していて楽しいものが多かったです。日本人講師もいましたが、すべてネイティブ講師の添削を受けました。
プランは「学べる定期券ライト(100語)」です。
13,530 * 12 = 162,360円/年
100語を超える分は別途ポイントを購入していました。平均5語オーバーとして年2000語ほど。
2000 * 8.9 = 17,800円
オンライン英会話よりちょっと高いですね。
添削のイメージを見てみましょう。
朝起きてすぐ書きますが、昼休みにスマホで書くこともありました。夜まで引っ張ることはほとんどなかったです。
100語だと自分の考えを書くのにはちょうどいいくらいです。お題についての知識が足りないことも多く、つまらないことを書いているなと思うこともありましたが、なるべくネイティブ講師が読んで面白いと思ってもらえる内容にしていました。
英文添削で良かったのは、文法への意識が以前とは格段に高まったことです。
・冠詞、複数形の選択
・現在完了を使うべきとき
・カンマやコロンなどのpuctuationへの意識
・前置詞の選択
これらの選択がかなり良くなります。話していても「いまのは間違ったな」と自覚できるようになります。
話すとなると、話しながら考えることになりますので、どうしても次の単語が出てこないということが起こります。言いたいことが英語で出てこない。日本語でなら言えるのに、英語では言えない場合、原因は3つあります。
(1)英単語を知らない
(2)英単語を思い出せない
(3)コロケーションを知らない
単語を知らなくても、会話なら「これ英語でなんていうんだっけ」と質問することは可能です。ただし(1)と(2)の差は結構大きいです。(2)なら音を聞けば「あ〜思い出した」となりますが、(1)では音を聞いても簡単には認識できないでしょう。ゆえに、「見たことある」レベルの単語を増やすことは大事です。
英作文でレベルアップするのは(3)のコロケーションです。
動詞から派生した名詞形(~tion, ~ment)は数限りなくあります。
the decision he made
the agreement we reach
the improvement we achieve
the settlement influenced other letigations
the destruction brought about the significant impact
「抽象概念+動詞」のコロケーションで、表現力が上がります。
3.話すためには語彙より知識
英会話でも英作文でも、自分のアウトプットの内容が制限されるのは、語彙不足というよりも知識不足だと感じました。
検定試験のために難しい単語を覚えるのが「語彙」の学習です。一方で、意味のある英語の文章を言えるようになることが「知識」の学習です。
辞書や参考書に載っているどうでもいい例文では、知識はつきません。次のようなことが「知識」です。
・SNSは便利だが個人のプライバシーを侵害している
・アメリカでは、新型コロナの死者数は、第二次世界大戦の死者数より多い
・先進国は率先して二酸化炭素の排出量を抑えるべき
これらを英語で言えるようになるには、2つのアプローチがあります。
(1)日本語の知識を英語に翻訳する
(2)英語で知識に触れる
英語教師の中にも「単語がすべて」という人は多いです。スコアに直結しますので、大学受験やTOEICは結局は単語な気もします。しかし要素還元主義(reductionism)の発想は、いわば力任せのやり方であり、多くの人は学習が続かないのではないでしょうか。正直、単語暗記学習は楽しくありません。
会話の場合、重要なコンセプトを伝えることができれば、あとは聞き手が補完してくれます。上の例でいえば、
"infringement of privacy"
"death toll of COVID-19"
"carbon dioxide emissions"
が言えれば、後は適当でも伝わります。実際の会話もそういうものです。
もちろん打ち解ける会話も必要ですし、ビジネスではそこまで難しいことは言いません。オンライン英会話で雑談力を上げ、英文添削でメール作成能力を鍛えることは大切です。
学校の教科書で「太字」になっているような用語、「現代用語の基礎知識」の見出し語は、重要なコンセプトの一例といえます。私たちの知識の多くは、重要なコンセプトに関するアイデアです。
そして、人類の知識のほとんどは「本」にあります。知識を得るにはたくさんの本を読むのが近道であることに異論のある人はいないでしょう。
4.洋書を年100万語読む
私は英作文添削と並行して、洋書を年100万語を目標に読むことにしました。100万語というとすごそうですが、実は大した分量ではありません。読むスピードは「音読できるくらい」なので、私は実際に音読して読んでいることが多いです。仮にかなりゆっくり目で100WPMだとすれば、
1,000,000 / 100 / 60 = 167時間
これは週4時間あれば十分足りるのです。
多少自分の単語レベルを超えようとも、自分がその知識を得たいと思う本を読んでいます。もちろん、すでに日本語で知識があるものも含まれます。
本から得た知識を英語で話す環境はなかなか見つかりません。残念ながら、英語講師は英語にだけ興味があって、知識に無関心なことが多いです。
自分が話せているかはおおよそわかりますから、「独り言」にも少しだけ取り組みましたが、すぐ嫌になってしまいました。それはこういう風に言えばいいんだよと教えてくれるようなお手本が欲しいと思いました。
そんなとき、ちょうどいい相手が登場しました。2022年12月に登場したChatGPTです。
5.ChatGPT Voice と会話する
ChatGPTが登場してから2年、2025年1月現在ではAdvanced Voice Modeが導入され、会話のテンポは非常によくなりましたし、音声も感情がこもっていて極めて自然です。Standard Modeでも十分に使えますが、1〜2秒待つ感じはしますので、かなり大きな改善です。
また、最新情報を検索してくれるようになり、会話を続けやすくなりました。
本を読んでも知識はまだ「うろ覚え」の状態です。うろ覚えの知識を人に話すことで自分の知識に変えていくのは、母語でも英語でも変わりません。
例えば「infringement of privacy」というコンセプトだけを伝えても、AIは次のように答えてきます。
AIの発言を参考に自分の表現を修正していけます。AIの発言には、concern, social media, personal information, sharedといった語句が出てきましたので、これらを使えば話しやすいです。
ちなみにAIは最後の文で質問してきていますが、無視してOKです。何を話してもいいです。
これまでは、英会話の講師がそのトピックに詳しくないことや興味がないことが多く、私がその話題を引っ張って長く話すことができませんでした。AIはむしろ、断片的なこちらの発言を広げてくれます。
また、ChatGPTに質問をすることも有効です。
"Tell me an example of a case of privacy infringement in Japan."
ChatGPTは最新の情報も調べてきてくれます。検索中の音が流れて2〜3秒で戻ってきます。回答のなかに、自分の考えを刺激するヒントがあることが多いです。
このように話題がなくなったら質問することができ、話題がそれても人間のように文句は言いません。
習慣化するのには朝がいいです。ストレッチなど軽い体操をしながらとか、トレッドミルで歩きながら、などの「ながら英会話練習」がお勧めです。通勤の車という手もありますが、集中を欠くかもしれませんので、十分に注意しましょう。
6. 本を読む楽しみで学習が続く
英会話にレベルがあるとすれば、それは「話題の幅」と「発言の深さ」で表すことができます。
英会話や英作文は話題の幅を広げるにはいいと思います。私も英会話では、セブ島のビーチのローカルネタからフィリピンの大統領の話まで、話しました。英作文のお題もバラエティに富んでいました。浅いけど幅は広かったと思います。
学習は継続できるかどうかが重要です。オンライン英会話や英文添削はとてもよい学習方法で、お金をかける価値はあります。しかしある程度やると飽きることも事実です。本を読んでAIと話す学習方法は、知的な受け答えができるので、飽きずに楽しんで学習を継続できます。
漢字は少ない字数で意味を明確に伝えられます。また、英文はスペースだらけですが、中国語や日本語はスペースで語を区切る必要がありません。視覚で得られる情報が多いので、漢字圏の強みは「読み書き」で発揮されます。
ゆえに日本人にとって、「本を読む」からスピーキングを伸ばしていく学習法は、継続しやすいのではないかと思います。
みなさんの英語学習の参考になれば幸いです。長文をお読みいただきありがとうございます。