サンヨード®について
サンヨード
手術時の灌流に使用される殺菌消毒剤のヨード製剤が、少し前の2022年9月に市販化されました。
日本眼感染症学会からの依頼で参天製薬がOTC化をしました。医療用のPAヨード®はロートニッテンが販売しています。
スイッチ化の目的は、殺菌、抗ウイルス作用の有効性と安全性が知られているが、用事調製が求められる薬剤のため、使用に際し通院がネックとなる現状に対し、患者自身で調製できる形での販売が求められたことによります。
サンヨードは要指導医薬品に分類され、使用予定者と薬剤師の対面販売に限り(適正使用の指導や販売記録の義務があります)販売されています。また、現時点では販売店は眼科の処方箋を扱う薬局に限りたいようで、プロモーションは控えめです。近所のドラッグストアを覗いても、眼科の処方箋受付が多いところでなければ置いていない可能性が高いです。
内容は?
サンヨードの箱をあけると、薬剤液1mLが入った小瓶と、希釈液4mLが入った点眼瓶があります。
薬剤液:1mL中にヨウ素2mg、ポリビニルアルコール80㎎、添加剤としてヨウ化カリウム
希釈液:生理食塩水
つまり、PAヨード1mLと生食4mLの『PAヨード5倍希釈キット』として市販化されることになったようです。
要冷蔵、要希釈、遮光、使用期限3日間のハードルはあります。希釈方法等については、写真付きの指導箋をメーカーが用意しています。
希釈後の安定性
PAヨードの添付文書によると、使用直前に4~8倍希釈し、希釈後速やかに使用の記載があります。ヨウ素の安定性により、日持ちはしない印象があります。
サンヨードの希釈後の使用期限は3日間です。
安定性と言えば、PAヨードの回収が2008年にありました。
PAヨードは、室温保管、使用期限3年間で販売されていましたが、保管中にヨウ素の含有量が低下したことを理由に回収され、冷所保管2~8℃、使用期限1年6か月に添付文書改訂の上で販売が再開されました。
PAヨードのインタビューフォームを見てみると、希釈後の保管条件と安定性のデータがありました。
サンヨードの溶解後3日間の使用期限は、冷所保管を指示しているものの、室温保管に置かれる状況を考慮したのかなと思います。
厳密な保管であれば、溶解後も結構もつのでは?と思いますが、厳密な保管を購入者に徹底させることは困難です。
また、副作用被害救済制度等の事情を考慮すると、認可された使用期限を守っていない場合に起きた事故について制度の対象とならない可能性が高いため、安易な判断や指示はできません。
要指導医薬品を販売する薬剤師として、3日間の使用期限について指導した上で販売しましょう。
高いよね?
結構高いです。現時点で販売価格は税込1500円だと薬局の大赤字になると思います。もちろんOTC医薬品なので健康保険は適用外です。
使用者目線で考えると、3日しか使えない、刺激のある、調製も面倒な点眼を2000円近く支払って購入するか?と心配になりますね。
その点は、現状の眼科医の指示があって購入するパターンであれば、さほど問題にならないかもしれません。
販売基準は?
現時点では、基本的に眼科医の推奨に基づき販売する医薬品であり、これまでの要指導医薬品とはまた別の括りのOTC医薬品な気もします。しかし、私個人としては、要指導医薬品に処方箋医薬品がどんどん降りてきた方が薬剤師の仕事が楽しくなりそうなので、試金石としてアリだと思います。要指導医薬品(スイッチOTC、S)、要指導医薬品(ダイレクトOTC、D)みたいな分類があったほうが分かりやすいのかも。
薬剤師の判断で販売する?
眼科医の推奨がなく薬剤師の判断で販売すること自体は、要指導医薬品のくくりとしては問題はないはずです。では、診察終了後や日祝日の駆け込み患者さんに対応して販売するのは現実的でしょうか?
サルファ剤(スルファメトキサゾール)のOTC抗菌点眼薬を販売する場合とサンヨードの販売が適切と判断される場合の区別は、流行性角結膜炎などウイルス性が強く疑われる場合や、コンタクトレンズの不適切な使用によるアカントアメーバ角膜炎が疑われる場合などが相当すると思います。検査なしで肉眼のみでの鑑別は薬剤師には難しいと思われます。
現時点で、積極販売はしないでしょう。
将来的には、薬剤師がアデノウィルス検査などできるようになれば、サンヨードがOTC現場での武器になるのかなと思います。
新型コロナウイルスの抗原検査キットが第1類医薬品に降りてきましたし、そういう未来もなくはない、かもしれません。
こんな場合は積極的にサンヨードを販売してねと眼科医から薬剤師に対して提言があると、購入者のメリットは大きくなると思います。