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【百線一抄】064■豪雪地帯を駆ける雪うさぎ―北越急行

新たな路線の計画が時を重ねるとともに生き物のごとく書き換わる
さまは、変更時点における世情を重ねると興味深いものとなる。要
望や目的も当世の事情とともに変化していくのは必然とは言いなが
らも、60余年の期間のうちにこれほどまでにありようが変わった
ケースはそうないように思う。北越急行ほくほく線のことである。

浦川原から日本海側に出る路線は早期から開通していたが、雪深い
地域である松代や十日町を経由して上越線へ結ぶ路線の構想が地元
の請願や陳情によって動き始めた。当時の情勢から軍事用にも対応
可能な路線として計画の具現化が進められたが、経路設定に関して
は信越線側と上越線側ともに複数案が浮上した。一部区間建設にこ
ぎつけるところまで来たのが戦局悪化の時期に重なって、終戦とな
り建設は中止に。計画レベルでの見直しが図られることになった。

大戦終結後は複数案の対立構造が顕在化し、路線計画の一本化が見
えたのは高度経済成長期に入ってからだった。首都圏と北陸地方を
ダイレクトに結べる路線として、貨物輸送を中心とした考え方が反
映された設計とされた。輸送力を高めに設定したこともあり、線形
に余裕を持たせた構造が、後の大きな飛躍に寄与することになる。

改めて建設が再開されたときは規模の見直しが盛り込まれたが、さ
らなる計画の変更によって高規格路線に変貌する。かくて北越北線
は国内最高速を誇る特急電車が走る第三セクタ―路線として注目さ
れるようになった。ただ、開業後まもなく北陸新幹線の金沢延伸が
話題となり、新幹線延伸後の展開を見据えた中長期的な経営計画を
立てることも求められた。新幹線の開業後は普通列車の充実をはか
る一方で、高速運転に必要だった設備の縮小や撤去を進めている。

線形と性能を活かして超快速という高速列車を運行したり、一方で
全線をのんびり走破する超低速という列車を設定したこともある。
乗ると楽しめる列車としては、長大トンネル内を走る区間で天井を
仰ぎ見るとCG画像と音楽が流れる「ゆめぞら」号がおすすめだ。
実際の映像をwebで見ることもできるが、快走する車内で繰りひ
ろげられる様子は、実際に乗って体感してほしい。新幹線を乗り継
ぎ約90分の非日常空間を味わいに、ほくほく線に乗りに行こう。

それでは次回の投稿まで、ごきげんよう。

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