【百線一抄】003■長い歴史を紡ぎさらに発展する北条鉄道
粟生と北条町を結ぶ北条鉄道は、合理化の対象となる国鉄北条線を
昭和60年に引き継いだ路線だ。大正初期から歴史を積み上げた日
々は、途中にある何駅かの駅舎からも感じ取ることができる。筆書
きの駅名板が現在もそのまま使われている駅もあり、古き良き時代
の雰囲気を沿線の田園風景と合わせて存分に楽しめる路線である。
やればできる!という言葉があるが、駅長になりたいという願いは
まず普通は鉄道会社に就職するところからでないと話にならない。
どこか一般人で駅長になれるといえば、有名人が何かのイベントで
臨時の駅長、いわゆる一日駅長を務めたというような話題ぐらい。
のっけから有名人に限定してしまって話の腰を折ってしまうところ
を、実は北条鉄道では「ステーションマスター」という制度で駅長
の公募を行っており、駅舎を活用して様々な活動が行われている。
しかも短い路線なりに多彩なイベント列車も運行されており、冬場
だとサンタ列車やおでん列車、夏場ならばビール列車が運行された
りと複数の日程を設定することで多くの利用者を集めている。日程
を調整すれば列車に増結というかたちではあるが、団体による貸切
の利用もできるように案内されており、これもまた楽しめそうだ。
なかでも最近の熱い話題として法華口駅の線路増設と運行本数増加
が挙げられる。もともと北条鉄道は途中に列車が行き違える場所が
なく、1本の列車が粟生と北条町を行きつ戻りつするだけのダイヤ
が精一杯だった。この場合、どうしても1時間おきよりも間隔を短
縮することは不可能だが、どこかに線路を増やして列車がすれ違う
ようにすれば可能となる。ほどよい中間地点である法華口駅に増設
をしたことで、朝夕の時間帯に約30分おきの運行が実現できた。
頻度を上げることによって、粟生で接続する加古川線や神鉄粟生線
との乗り換え機会も増え、加古川や新開地方面へ向かう場合は段取
りよく乗り換えることができる。帰ってくる時も日中と夕方はわず
かな待ち時間で北条町ゆきに乗ることができるようになっている。
もし初めて北条鉄道に乗ることがあるとしたら、調べて見どころを
狙ってみるとよい。日時が合えば、途中の駅で駅長さんが列車を出
迎えて、見送ってくれるという幸運にめぐりあえるかもしれない。
それでは次回の投稿まで、ごきげんよう。