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第二章 ひがし北海道行脚旅(その3)

26 わがまちご当地入場券小話―場所編

 ここで実際にご当地入場券を購入するにあたって、調べたことや気づいたこと、実際に現地に行ってみて感じたことをざっとまとめてみた。このあとの展開におけるヒントや当時の雰囲気を味わう一助としていただければ幸いである。
 わがまちご当地入場券の発売場所は、基本的には駅の窓口となる。ところが北海道の駅は無人駅が多数あり、まちの中心にある特急停車駅といえども終日駅員がいない駅もある。JR北海道の路線が走る101のまちのなかには、そもそも有人駅がひとつもないというまちもあるのだ。そこで、駅に近接する観光案内所や乗車券類の発売委託を行っている商店、まちによっては町役場、さらにはセイコーマートやセブンイレブンといったコンビニエンスストアで取り扱うようになっていた。まちによっては、駅の窓口の営業時間が短い場合も考慮してか、駅の窓口と並行してコンビニでも扱うというところもあった。
 JR北海道の駅の窓口については、「みどりの窓口」と「きっぷうりば」の2種類があり、前者はJR駅係員がマルス(乗車券類以外にも旅行商品などの発券ができる)を操作して全国のJR駅を結ぶ乗車券や特急券などを発売し、営業時間に長短はあるものの基本的に年中無休で対応している。一部の駅では休業日が設定されているところもある。
 一方、後者は関連会社や契約団体による委託販売という形態をとるところが多く、窓口で常時取り扱う乗車券類は近隣のものに限られ、遠方のものや特殊な内容を含む乗車券類は発券に時間がかかったり(当日受け取れない場合もある)断られたりする場合もある。営業時間も場所によってまちまちで、休憩時間が何度か設定されるところや運営側の事情で臨時休業日が設定されることもある。よく言えば地元密着型の営業形態ともいえ、あえて濁して言えば外様、つまり旅行客は相手としていないともいえる。
 その意味でもコンビニが販売店となっているところは購入機会に幅を持たせることができるようになり、旅行者としてはありがたい設定であった。石北本線上川駅前のセイコーマートのように夜間でも入手が可能であったり、留萌本線石狩沼田駅のように駅から少し歩くものの、入場券購入と合わせて飲食物の入手や携行品の追加購入もできるという恩恵もあった。まちによっては妹背牛町や浜中町、むかわ町のように温泉施設で取り扱うところもあり、こういった場所では遅い時間までフロントで対応するところもあったことから、列車の時間に工夫をこらして旅の疲れを癒やすこともできた。
 ただ、厚真町のように駅近隣に商店の類いがないために、駅から相当離れたところにあるコンビニが発売場所になっていたり、冬期や正月、お盆は休業や営業時間が短くなるところがあったり、アクセスするコミュニティバスの運行曜日によっては公共交通機関で立ち寄ることが極めて難しい場所もあった。

27 わがまちご当地入場券小話―時間編

 この項では場所に続いて時間について述べてみたい。時間というのは二つの見方があって、ひとつは営業時間に関連する見方、もうひとつは現地での購入にかかる時間に関連する見方である。
 まず、営業時間についてはJR北海道のwebページでも掲載があったとおり、駅の窓口は5分単位で駅ごとに時間帯が異なっており、函館本線深川駅や岩見沢駅のように初発から終発までのほとんどの列車の発着時間帯において窓口が開いているところもあれば、大沼公園駅のように観光客が出入りする日中を営業時間として、朝夕の通勤通学時間帯は窓口が閉じているというところもある。きっぷうりばに至ってはさらに多様で、室蘭本線の栗山駅のように土休日のみ昼休みがある駅もあるかと思えば、日高本線の様似駅のように数時間ごとに窓口を閉じる時間が設けられている駅もあった。委託場所においては他に類例がないものとして、石北本線女満別駅併設の図書館(図書館の休館スケジュールにあわせてあるため原則月曜日は取り扱いがない)や駅から遠くなるほど営業時間の幅が大きくなる根室本線幾寅駅などと、下調べなしで現地に行こうものなら舌を巻く場面ばかりの旅になったに違いない。それぐらい多種多様の設定になっていたのであった。
 そして、現地での購入にかかる時間である。これは購入にあたりどのような対応を係員がするかで物理的な時間が決まるのだが、それ以前に「列車やクルマを降りてから窓口までどれぐらいの時間がかかる」ことが案外、旅程の成否を左右するという点に触れておかなければならない。
 単純化すれば一般的に大きい駅であれば歩く距離も長くなりやすいし、窓口も混む可能性が高い。小さい駅であればそのリスクは小さくなる。概ねこの視点に誤りはない。ところが、列車が少ない時間帯だから客もいないだろうと思っていたら先客が複数名いるというのも、当然あり得る。もちろん、その場合は先客がはけるまで待つことになる。
 では窓口やカウンター、レジまで到達すればすぐかというとそうでもなく、オーダーから代金のやりとり、受け取りまでは短くても1~2分ほどかかる。理由のひとつは日付印にある。発売箇所によって日付印の仕様がバラバラなのに加えて印肉の性能が今ひとつのところでは、インクが乾くのに時間がかかってしまう。そこで乾くまで気をつける旨の説明を受けたり、印字面をメモ用紙に押しつけたりする時間もあった。発売開始当初は販売員が不慣れで、一連の処理にあれこれ手こずるという場面もあったようだ。
 そういうわけで、列車の停車時間内に購入するというのはかなりの無理がある。列車の運行を妨げてまで買い回るやり方は、まさに言語道断。この話に限らず、ゆとりをもった旅行計画を心がけたいものである。

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28 183系入場券のハナシ

 前半の方で本編の中に登場する「183系入場券」の話もここでまとめておきたい。正式名称は「キハ183―0系 記念入場券」というもので、2018年6月を目途に引退することが決まった特急形気動車183系の初期型(昭和50年代に製造されたもの)を題材としたものであった。先頭車両の角張ったデザインは「スラントノーズ」と言われ、厳寒地域を走行する北海道の車両に相応しいものとして、40年近くの間、北海道専門の車両として道内各地に足跡を残した車両なのである。毎日運転の特急列車としては根室本線の「おおぞら」で釧路、石北本線の「おおとり」「オホーツク」で網走、函館本線や室蘭本線の「北海」「北斗」を主軸として、のちには宗谷本線の「サロベツ」として稚内にも足を延ばした。臨時列車としては東端の根室や南端の江差にも入線を果たしており、その実績も相まって発売箇所は道内各地の全17か所に及んだ。道北は北端、宗谷本線の稚内(特急サロベツ)に石北本線の遠軽(特急大雪)と網走(特急オホーツク)、旭川(特急旭山動物園号)、道東の根室(特急まりも)に釧路(特急おおぞら)、帯広(特急とかち)、道央は富良野(特急フラノラベンダーエクスプレス)と岩見沢(特急おおとり)、小樽(特急北海)、倶知安(特急ニセコ)、室蘭本線にまわって東室蘭(特急北斗)に長万部(特急ワッカ)、そして道南の森(特急ヌプリ)、大沼公園(特急大沼)、函館(快速ミッドナイト)、木古内(特急えさし)と運行回数の少ない臨時列車も多数巻き込んだ錚々たるラインナップなのであった。当時のプレスリリースでは東室蘭駅を除く16駅ではわがまちご当地入場券の取り扱いもある旨に触れており、実際に取り扱いのある駅ではこの183系入場券とご当地入場券の両方のポスターを窓口近くに掲示しているところもあり、場所によってはコルクボードやホワイトボードを別途用意してアピールするというところもあった。この文化はのちに発売となった「北の40(ヨンマル)記念入場券」や「北の大地の入場券」でも継承されている。
 これらのJR北海道が発売する入場券シリーズにはキリトリ型の応募券がついており、一定の枚数を応募用紙に貼付して応募すると抽選で行先表示幕の一部が当たったり、もれなく記念品がもらえたりするようになっていた。また、主要駅のキオスクや一部のセイコーマートなどでは、これらの入場券類をファイリングするための専用ブックレットやバインダーファイル、リフィルなども販売されるようになり、とりわけ後者は販売部数が限定的であったため、発売が決まるとすぐに品切れになるという隠れた人気商品であった。ちなみに183系入場券の専用ブックレットの場合は6枚3ページの18枠の余り1枠を埋める別デザインのカードがついてくるという特典もあったため、反響も大きかったようである。

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