旅先見聞録(地理目線編)
北の大地の入場券86駅全部行ってみたシリーズ。
13本目のトピックは現地で見聞した話題について、
地理の知識にまつわるものをまとめてみました。
本稿の冒頭に載せた写真は特急「北斗」に運用されているキハ261系ですが
ちょうど投稿日が11月11日なので載っけてみた、というだけです(笑)
では本題です。
まずよく言われるのが、とにかく「北海道はデカい」。
表題の写真は新千歳空港駅に掲示されている、北海道と本州を重ねた地図ですが、レンタカーを借りるときの営業所には、さらにリアルな地図が掲示されています。
これは新千歳空港の営業所を結ぶアクセスバスの車内のものですが、営業所にはもっと大きなものが掲示されているところもあります。
釧路空港の営業所だとこんな感じで。
イメージとしては、札幌を基点とするとこんな感じでしょうか。
参考までに、札幌駅と新千歳空港駅は約45km離れています。
およそ100km……深川、占冠、白老
およそ150km……旭川、トマム、洞爺
およそ200km……名寄、上川、芽室(帯広の20kmほど手前)、長万部
およそ250km……音威子府、遠軽、池田、森
およそ300km……天塩中川、留辺蘂、白糠、函館
およそ350km……豊富、美幌、釧路、木古内
およそ400km……稚内、網走・斜里、厚岸、奥津軽いまべつ
およそ500km……根室、標津、青森
JRの営業キロを目安にまとめてみましたが、道路でも大差はありません。
北海道はおおむね菱形に近い陸地の形をしていますが、ざっくりと対角線を引いたとすると、南北・東西ともに700kmほどの距離があります。直線距離でそれですから、実際の道のりはさらに長くなると考えるとよいでしょう。
さて、北海道と言えば日本国内における北東の端に位置する陸地ですので、もちろん最北端や最東端のタイトルを持つ場所もたくさん存在します。島としての最東端は南鳥島が太平洋に所在していますが、一般人が往来するのはまず難しい土地なので、現実的なところを攻めてみます。
まず鉄道駅としては北端も東端も有名どころで、最北端は稚内駅、最東端は東根室駅となります。
最東端の東根室駅は道東を走る根室本線の終点1つ手前の駅。
終点の根室駅が最東端でないのはどういうことか。
これはリアルな路線図を見ると明らかとなります。
今回収集した「北の大地の入場券」の裏面には30万分の1の地図が掲載されているので、それを引用すると、
なるほど、線路がグッと東へせり出して、それから少し西へ折れるかたちになっているのがわかります。
同じようなところは最西端と最南端の駅にも当てはまっていて、那覇空港とてだこ浦西を結ぶ沖縄都市モノレール(ゆいレール)は最西端駅が空港接続駅の那覇空港駅であるのに対して、最南端駅は1つ隣になる赤嶺駅となっています。これも現地の土地利用や地形を見ると「なるほど!」となるところかと思います。
駅から離れてさらに移動すると、有名どころとしては最北端の宗谷岬がありますが、ここから少しだけ東に歩を進めると、最北端の郵便局である宗谷岬郵便局があります。入口の上に「日本最北端の郵便局」と掲示があります。
この郵便局の近くでは最北端のガソリンスタンドも営業しています。
一方で東側に目を向けると、本土最東端の岬である納沙布岬の手前に、やはり最東端の郵便局である珸瑶瑁郵便局があります。
こちらは入口どころか看板にズバリ「日本最東端の郵便局」と掲示されています。建物が新しいのは、数年前の自然災害による損傷で一度休止、解体されたものが営業再開となったためだとか。
他には別項で話題に挙げた幌延町にも北の果てを実感させるスポットがあります。
北緯45度線の通過点が道路上に示されています。
列車で幌延駅に来た場合は、駅から南に2.5kmほど進んだところにあります。徒歩だと30~40分ほどかかるかと思いますが、列車を待つ時間が多めにある場合は目指してみてもよいかと思います。
北海道で列車やクルマで旅をしていると、あちこちに絶景が広がります。
広い平原や緩くカーブを描く水平線、どこまでも水を湛える湖沼など、スケールの大きさに目を見張るところがたくさんあります。
個人的に推しなのは、鉄道旅だと函館本線の張碓海岸のあたりや、宗谷本線の北端近くで西側に見える利尻富士、室蘭本線で幾度も姿を見せる噴火湾も好みです。太平洋そのものは日高本線からも絶景が楽しめましたが、列車で再び楽しむことはかなわなくなりました。
クルマだと道の駅で一息つくときに駐車場近くの展望スペースから見晴らす景色はどこも素晴らしいですが、実際に足を運んだところで「おおー」と唸ったのは斜里町や国道12号の長ーい直線道路でしょうか。数10kmに及ぶ道路が真っ直ぐに視野の奥へ伸びていく。これはまさしく三次元で楽しみたい場所だと言えます。
さらに北海道といえば、ご当地の食材で提供されるメニューやスイーツの数々。今回の「北の大地の入場券を求めて」旅で大当たりだったと思うのが、清里町の「きよーる」で買った生どら焼き。
藻琴の小豆を使ったどら焼きで、「生」を謳うだけあって賞味期限が短い短い!要冷蔵なのも納得の食感&味わいでした。
もちろん海鮮ものをもとにした定食や丼物、駅弁も数多くありますが、自然の恵みをリアルに味わえる場所がたくさんあるのも、北の大地の魅力と言えます。
あとは北海道にいるなあ!と実感できるのが、旅先で出会う地名の数々。
言うまでもなく、北海道の地名はアイヌ由来のものがたくさんあるのですが、アイヌ由来に限らず、碁盤の目のような街並みからひたすら番地名が続くようなところがあちこちにあったり、駅名はもとより、バスの停留所や集落の名前、川の名前などまさしく枚挙に暇がない世界なので、ここではほんの少しだけご紹介を。
まずは駅関係から。
豊頃町にある十弗駅。読みは「とおふつ」ですが、字の組み合わせの妙で「10$」に見えることが昔からネタになっており、通過する特急列車からもしっかり見えるような大きな看板がホームに設置されています。
石北本線にある留辺蘂駅。読みは「るべしべ」。北見市の駅ですが、市町村合併までは駅名と同じ、留辺蘂町の玄関駅でした。
何といっても「蘂」が難しいですが、理科で学習する「おしべ」「めしべ」の“しべ”なのだと思えば、書けるようになってもいい字だと思います。
大ヒット漫画作品の登場人物の漢字が難しいと話題になっていますが、この目線で見ると案外、道内の人はサクッと漢字で書けちゃう人も多いかもしれませんね。
読みと漢字の結びつきがナナメ上を行くものとしては、村名でもある占冠駅を挙げておきましょう。読みは「しむかっぷ」です。
道内の地名では「冠」を「かっぷ」と読むところがいくつもあり、他の駅名だと日高本線には「新冠」(読みは「にいかっぷ」)があります。「占める」を「しむ」と読み込むところも、地名を充てた人の柔軟な着想による賜物なのだろうなと感じました。
ちなみに、今年(2020年)の春に営業終了となった札沼線には「南徳富」や「中徳富」という駅もありました。読みは「みなみとっぷ」「なかとっぷ」。近隣を流れる徳富川「とっぷがわ」が由来の駅名でした。
では、バスやクルマでの移動だとどうか。
例えば高速バスの停留所にはこんなところが。
輪厚(わっつ)。思わず「何?(what)」と顔を上げた地名でした。新千歳空港から札幌市内に向かうバスで通りました。
日高本線本桐駅の近くにある新ひだか町鳧舞。「けりまい」と読みます。
「鳧」がまず存じない文字でした(汗)。調べによると、東北地方を中心に近畿地方より北で見られる「ケリ」という鳥の名称で、鳴き声が「キリッ」とか「ケリッ」とか聞こえるのだとか。漢字検定だと1級の配当漢字なのだそうです。 ←ひとつ賢くなった!
街の番地ならば札幌が有名すぎますので、ここでは帯広のものを挙げておきます。街は南北整然とつくられているのに、鉄道路線だけがドバッと斜めに貫通しているという配置がここに。
他にもまだまだお伝えしたい魅力はたくさんありますが、文字通りキリがなくなるので、最後に地理らしい話題でまとめを。
黒松内町はブナ北限の里として、広葉樹の自生する地域の果てであることをアピールしています。道央・道北にも農産物の北限がさまざまな作物・土地にあり、それがその地域の名産品になっているところもあります。
「北の大地の入場券」を買い求めたまちで見つけた名産品が、もしかしたら単なるオリジナルではなく、その地域の人が手間ひま時間をかけて、その土地で生産できるように磨き上げてきた逸品なのかもしれませんね。
あと10年もすれば新幹線が小樽を経由して札幌まで到達します。
東京ー札幌間5時間になるとはいえども「やはり北海道はデカい!」このことは変わらないと思います。北海道が未踏の方、まずは地図や本などである程度調べていただき、その上でそのデッカさを実感するために、ぜひ機を見て訪れてみてください。
一度や二度では満喫しきれない、その理由が明らかになります。きっと。
それでは次回の投稿まで、ごきげんよう。
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