第2章 「エルム」第1の犯行声明
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翌朝、昨夜と同じような形で課員が席に着いた。昨夜と違う点といえば、宝田課長が別の上役会議に出席していて、この部屋にはいないということと、人間関係を簡単に表した模造紙が机の真ん中に置かれているということだった。
成瀬川から話が始まった。
「今日確認しておきたいのは、仮にこのリストの中にいる誰かが『エルム』だとすると、誰がどのような動機でもって、誰を狙っているのかということなんだ。確実な情報がほとんどない状況の中で、成果を上げられるかどうかは分からんが、目標がないと動きにくいのも事実だ。みんなの意見を出してほしい」
鈴木が言った。
「絞り込んでいくとしても、よく考えていくと誰もシロとは言えないんですよね。琴乃は養父が死んだことで施設生活を強いられているし、板井は晩年の唐真氏に悪くいわれていたことが気に入らないようだし、守屋は板井とつるんでいる可能性がある。玉利は狙う側ではないとは思うものの狙われる可能性は十分にありますよね。狙う側になるとすれば、誰かに唐真氏のことでゆすられているとかぐらいしか思いつきませんが」
高橋が続けた。
「あとは警部がおっしゃっていた浜名という女ですが、この女については他に情報はないんですか?関係はありそうですか?」
勝浦が答えた。
「28年前の事件とは関係がないんだが、10年ほど前に玉利と関係があったらしい。ただ、不確かな情報だという話だがね」
「それだけだと、あまり関係はなさそうですね」
「それでは、まずは今判明している範囲での人間関係を整理しておこう」
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