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種別のものさし2023(JR西日本・大阪環状線編)
今回は(JR西日本編)と謳うだけあって、1つの会社に着目しますが、大きく分けると京阪神を中心とする近畿圏とその他の地域に区分することができます。
そしてどちらも一般的に「すべての駅や停留所で乗客が乗降できるもの」を
【普通】と呼ぶのですが、これはこれで、もの申したくなるところがあるからたまらない。
ともあれ先にその他の地域についてまとめておくと、こちらは基本ができていまして。
【特急】―乗降口が1両あたり1か所か2か所の車両を用いて、
主要駅に停車する。特急料金が必要。
【快速】―主要駅とそれに加えていくつかの駅に停車する。
追加料金は不要だが、通過する駅は同じ路線でも
列車により異なる場合がある。
【普通】―すべての駅や停留所で乗客が乗降できる。
ごく一部に駅の利用状況によって通過する駅がある。
路線ごとに語るとそれぞれの事情がありながらも、だいたいこれで収まるかと思います。
ところが近畿圏に行くとこれが、もう。
今回は1つだけ、大阪の中心を周回する大阪環状線に足を運びます。
この路線には【普通】が2種類と【快速】が7種類、
【特急】が2種類走っています。
???
普通が2種類?
快速がななな、7種類?
特急が2種類?
説明しますね。
まず、【普通】については正確に言うと「内回りだけ2種類」「外回りは1種類」になります。
大阪駅で電車を待っていると朝のラッシュ明けや深夜を除くと、【普通】と呼ばれる列車の行先は2種類、「西九条・弁天町方面」と「ユニバーサルシティ・桜島」に絞ることができます。
そしてこれらの電車には、前者は「O普通」、後者は「P普通」と表示されています。
JR西日本の大半の路線にはアルファベットで路線記号がついており、大阪環状線は「O」、JRゆめ咲線(桜島線)は「P」で案内されます。すなわち、内回りの場合は大阪環状線を周回する「O」線の電車と、西九条からJRゆめ咲線(桜島線)に入る「P」線の電車に分けることができるというわけです。
そして、これらの路線記号はその電車がどの路線にいるかにかかわらず、その電車の最終目的地が所在する路線の記号を示すことになっているので、内回りであれば京橋だろうが鶴橋だろうが変わりません。
別の言い方をすれば、大阪環状線の駅にいてユニバ(USJの略)に行きたければ「P普通」に乗れば、乗り換えなしでユニバーサルシティ駅に行くことができるとも言えます。
それでは【快速】の7種類とは何なのでしょう。
とりあえず路線記号を無視して列挙してみましょう。
【快速】【関空快速】【紀州路快速】【関空/紀州路快速】【直通快速】
【大和路快速】【区間快速】
以上です。
大阪環状線をよく利用する方はわかると思うのですが、上の5種類は阪和線とつながるもの、そして下の2種類は大和路線(関西線)とつながるものとなります。
さらにここに路線記号を加えると、阪和線は「R」、関西空港線が「S」、大和路線が「Q」となるので、前述の原則となる「その電車の最終目的地が所在する路線の記号を示す」にもとづくと、大阪環状線に向かって天王寺に入る電車はすべて「O」、大阪環状線から各線に向かう電車は行先によって、奈良方面であれば「Q」、関西空港に行く電車は「S」、阪和線の駅が終点の電車が「R」となることがわかります。
ではなぜこんなに種類が多いのか。
それは通過する駅がどの区間にあるかで分けられているからです。
ざっと分けると阪和線に入る快速はこんな感じになっています。
・ ┌――――――和歌山
大阪―西九条―天王寺―鳳―日根野―関西空港
【快速】 ■======■===■====■=======■
【関空快速】 ■======■===■====■……………■
【紀州路快速】 ■======■===■====■…………………………■
【関空/紀州路快速】 ■======■===■====■……………■
└…………………………■
【直通快速】 ■……………………■===■====■……………■
└=======■
「……」は各駅に停車する区間、「==」は通過駅がある区間です。
すなわち、日根野―和歌山間を各駅に停車するものとそうでないもの、大阪環状線の西側もすべて停車するものとそうでないものが組み合わされてできているというわけ。
そしてこの5種類が同時に走る時間帯は存在しません。
日中と土休日の大部分は【関空/紀州路快速】1種類でまかなわれており、【直通快速】は朝の外回り、つまり大阪方面に向かう電車だけであり、【快速】は朝と夜間の一部に関西空港や和歌山まで行かない電車があてはまるにすぎません。
ちなみに【関空/紀州路快速】は8両編成の電車のうち4両が関西空港行き、残り4両が和歌山行きとなるのが一般的で、たまに和歌山より奥に行くものが存在します。
では、なぜわざわざ【関空快速】【紀州路快速】が別に分けられているものがあるのかというと、【関空/紀州路快速】のように「別々の行先になる」わけではありませんという意味があるのだとか。実際に平日の朝には8両全てが和歌山まで行く【紀州路快速】があるので、それなりに意味はあることになります。
さて、そうなるとひとまずまとめなければいけません。
結論から言うと、阪和線はもともと天王寺と和歌山を結ぶ単独の路線で、呼び方はいろいろ変わるものの【普通】【区間快速】【快速】の3種類で、時代に応じて【新快速】や【B快速】などが現れたり消えたりしました。そこに「大阪環状線との直通」が実現したことによって、大阪環状線と関西空港を結ぶ【関空快速】が生まれました。
そして阪和線の利用客が増加するにつれて阪和線直通の快速を増やすことになり、大阪環状線と和歌山を結ぶ快速を【紀州路快速】と名づけて【関空快速】と連結して走らせるようになった次第です。
ただ、朝のラッシュ時は大阪環状線の本数がもともと多いためにスピードも出せず、途中駅の利用も多いことから、平日朝の外回り直通に限り【直通快速】と名前を分けて、「大阪環状線内は各駅に停まります」としたわけです。
では、大和路線はなぜ2種類で収まっているか。
これも、もともとは日中に大阪環状線へ直通する快速があって、朝夕は大和路線(関西線)だけを快速として走っていたところから話を始めることになります。
大和路線は国鉄の時代から大阪環状線とつながっていたので阪和線より早く直通が始まっていたのですが、あくまでもラッシュ時を避けたものだったので、朝夕・夜間は天王寺や新今宮で乗り換える必要がありました。
そして国鉄からJRに変わり、さらに便利にするために大阪環状線を直通する電車を増やすことになり、合わせて新型の電車を入れることにして、並行する私鉄に対抗することにしました。
このときに登場した種別が【大和路快速】だったというわけです。
すなわち、いままでの【快速】とは異なり、「大阪環状線と奈良を結ぶ快速です」ということをしっかりアピールするために登場した種別だったのです。
ただ、阪和線のところでも述べたとおり、大阪環状線の朝夕は利用者そのものが多く、スピードも出せないため通過駅をたくさん作るメリットがありません。
そこで「大阪環状線内は各駅に停まる」快速が現れて、【区間快速】として区別されるようになった、とまとめることができます。
そうすると、疑問が1つ残ります。
ではなぜ、阪和線の【直通快速】は【区間快速】と呼ばないのか。
答えはやはり、さきほど触れた阪和線の歴史にありました。
阪和線には国鉄時代から「天王寺―鳳の間が快速運転」となる【区間快速】があり、現在もそのまま走っているのでした。なるほど。
疑問ついでにもう1つ。
では大和路線の【快速】というのはあるのか。
はい、あります。
大阪環状線に入らずにJR難波発着とする通過列車が【快速】となります。
たかだか「快速」といっても、早いか遅いかだけではなく、どこを目的地としているかでも分けられているということがおわかりいただけたかと思います。
他の路線にも【丹波路快速】【みやこ路快速】とあるのも同じような理由から生まれたもので、ただの【快速】よりも停車駅が少ない列車としてデビューしたのですが、利用状況の変化によって、【快速】とほぼ同じ路線が大半になってきているのが気がかりです。
最後に【特急】の2種類ですが、これは「くろしお」が名乗る、単なる【特急】と「はるか」が名乗る【関空特急】の2種類。時刻表では単にどちらも【特急】として掲載されていますが、駅での案内では区別されています。
2023年3月のダイヤ改正までは天王寺と「くろしお」の一部が西九条に停まるだけというスタイルが長く続き、大阪環状線における特急列車は“見るだけ”のイメージが強かったですが、“新しい大阪駅”、つまり「うめきたエリアの大阪駅」が開業したことにより、のりばこそ高架と地下には分かれますが、大阪駅と天王寺駅をノンストップで結ぶ列車が大阪環状線を走るようになりました。なお、これにより「くろしお」の西九条停車はとりやめとなっています。
何気なく利用する路線であっても、「違いがあるからには何か理由がある」と少し推理してみるのも面白いかもしれませんね。
それでは次回の投稿まで、ごきげんよう。
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