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【百線一抄】071■南会津で田家の四季を満喫しよう―会津鉄道

湯けむりただよう南会津を、阿賀川に沿って南下するローカル線が
奮闘している。会津若松から2駅先の西若松で分岐、阿賀川沿いを
さかのぼるように歩を進めて、終点の会津高原尾瀬口で野岩鉄道に
連絡して東武鉄道へつながる。浅草から直通の特急リバティに乗れ
ば乗り換えなしで到達できる、会津鉄道会津線について述べたい。

開業時期は昭和初期。現在の只見線とともに建設が進められて、ほ
どなく会津田島まで開通している。予定線としてはさらに南の会津
滝ノ原を経由、栃木県の今市方面と結ぶ路線となっていたが、戦争
の影響もあって延伸は戦後まで待たれることとなった。会津滝ノ原
以南の区間は着工まで時間がかかり、大川ダム建設による経路変更
どを経て現在の姿に近づく。凍結を経て開業した野岩鉄道やバスの
接続駅となる会津滝ノ原は、新たに会津高原と駅名が変更された。

大きな変化が起きたのは平成初期のこと。首都圏から訪れる登山客
と観光客をさらに沿線へ誘導することを目的として、会津高原―会
津田島間に東武鉄道からの電車が乗り入れできるように電化した。
列車が乗換なしで南会津を直結するようになり、会津田島を経由し
て会津若松を結ぶルートもアピールできるようになったのである。

会津と首都圏のアクセスについてはさまざまな取り組みが行われ、
車内を改造して観光列車仕立てとした「お座トロ展望列車」や会津
の主要駅と直通列車を直結するリレー列車が運行されている。駅の
窓口では自社線内に加えて浅草や日光への企画券も購入でき、直通
路線のスケールを存分に生かしている。普通の直通電車については
役目を特急リバティに譲ったことにより、会津線内の列車は気動車
によるものが中心となったが、接続線への乗り入れは続いている。

芦ノ牧温泉駅では長らく猫の駅長が在任しており、愛猫家にとって
気になる駅のひとつとなっている。春が訪れると駅舎周辺の桜が開
花して彩を添えている。同じく名所として有名な湯野上温泉駅は風
情のある茅葺き屋根の駅舎を組み合わせた写真が多数紹介されて、
増加傾向にあるインバウンドも巻き込んだ観光誘致も盛んである。
冬の雪景色に春の桜、夏の青空に秋は稲刈りを待つ水田が食事前の
空腹をくすぐる。首都圏から4時間で四季の風景を楽しめるのだ。

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