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髙橋と鈴木は玉利が寝泊まりしている宿舎を訪ねたが、宿舎の管理人によると、昨日から数日家を空けるので新聞を抜いておいてくれといわれただけで、出先は不明だということだった。銀行の支店にも足を運んだが貯まっていた有休を消化したいのでと、いきなり昨日休暇願を出されたと担当者がこぼした。理由を尋ねたところ、「家庭の事情で」とのことだったが、なにやら切羽詰まった状況だったという。休暇期間は4日であった。
「行き先は北海道でしょうか。浜名の所でしょうかね……」
鈴木は舌打ちをしながら言った。
一方、琴乃についても成瀬川が連絡を取ろうとしても電話がつながらず、念のため控えてあった管理人室の電話に尋ねてみると、夫の元の赴任先に急用ができたからと言って、玉利と同じく昨日から家を空けていると教えてくれた。夫の元の赴任先というのは札幌だったらしい。
「勝さん、動き始めたぞ」
「われわれも動きましょう。板井の殺害現場からですね」
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