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【百線一抄】055■すばらしいスパ・ライン-野岩鉄道

谷の合間を橋梁で渡り、阻む峰を隧道で貫く。下野と岩代の境を一
気につなぐ路線として計画された野岩線は、会津線の田島と日光線
の今市を結ぶ路線として、未来図に記された。山間部を結ぶ路線が
負う宿命ともいえる難工事と、僅少な沿線人口を背景として、着工
となったのは高度経済成長期に入ってからだった。安定成長期以後
は、他の建設線と同様に凍結が決まり、野岩線も工事が止まった。

大半の路盤工事が終わっていた部分を活かし、第三セクターでの運
営を福島県と栃木県が提示した結果、未着工だった区間の工事にも
手が入るようになり、路線計画の変更で東武鉄道との接続に決定。
非電化路線から電化路線となり、1986年に開業へこぎつけた。
最初は浅草や近隣からの直通電車の運行が中心で、東武の長距離型
車両が中心となる構成であった。両数は少ないが、野岩鉄道所有の
車も混ざって活躍しており、車両の番号で確認することができる。

内陸部を短絡する路線の実現によって、首都圏と会津若松がつなが
り、東武・野岩鉄道と会津線・只見線によって最速4時間台で駆け
抜けるルートが構築された。会津線が第三セクターへ移行した後は
連携が進み、1990年には電化区間が会津田島まで延びて急行な
どが浅草から野岩鉄道を経由して、直接乗り入れるようになった。

なおも観光客誘致の施策は繰り広げられる。鬼怒川温泉を代表に、
このエリアは温泉地が多くあり、周辺の道路整備などに合わせて、
それぞれの地域に近接している観光地や温泉地を駅名に追加した。
並べてみると線内9駅中の5駅に「温泉」「湯」、2駅に「高原」
が入っている。中三依温泉駅にあっては、生憎の無人駅ではあるけ
れども「なかみよりおんせん」と、どこの温泉駅にも抗えそうな不
敵な読みで存在を光らせる。まさに中身より温泉を押し出すのだ。

なかでも近年の話題として注目したいのは、新型特急リバティだ。
本線筋では6両で颯爽と快走し、下今市で身軽な3両となった後は
鬼怒川温泉からさらに奥へと乗り入れて会津田島へ直結する。実は
この列車、鬼怒川温泉以北のみの乗車であれば、普通列車と同様に
選ぶことができる。4往復あり、会津地区と日光を周遊する際にも
経路に組み込みやすい時間帯のものもある。沿線の温泉地を訪れる
列車の旅を、多彩な企画乗車券が楽しく盛り上げてくれるはずだ。

それでは次回の投稿まで、ごきげんよう。

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