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春先

「族長の命である!全ての文官武将は拝謁せよ!」

3月1日、ウンバボ族の宮殿から太鼓が鳴り響き、家来たちが一同参集した。
月初めの賀詞を述べるのである。

有力な部族たちは族長の前に進み出て挨拶を述べた。

ほぼ全ての人が挨拶した時、最後まで黙っていた一人の男がいる。
この男、部族の軍師にして常勝将軍のみょんだぜである。

皆、彼が挨拶するのを待っていた。
隣にいた人につつかれて、彼は進み出た。

みょんだぜが言った。
「族長、梅の花は咲き誇り、風は暖かく、大気は陽気に満ちています。寒い冬は過ぎ去り、大地からは生き物が芽吹き、花は蕾を大きくしています。これらは全て天が喜び、地が感謝しているのです。族長、どうかこの喜ばしい春に、徳政をお命じください。民は喜び、みな族長に敬服するでしょう。」

徳政、徳政令とは、簡単に言うと祝い事があった際に天からのお祝いとして借金をゼロにするという命令を出すことである。

すかさず私は進み出て言った。
「族長、みょんだぜの進言を聴いてはなりません。その昔、室町時代に足利将軍は何度も徳政令を出しましたが、結果として将軍家の力を弱め、ついには滅びました。今徳政令を出しても、民は訝しみ、族長に対して疑心暗鬼になります。どうか徳政令を出さないでください。」

さらに闇雪氏が進み出た。
「みょんだぜの言葉、信用なりません。みょんだぜが債務超過になっているのは周知の事実。つまり彼は自分の債務を帳消しにするために、民を救うためと嘯き、徳政を出すよう上奏しているのです。彼の言葉を聴いてはなりません。」

部族の面々は闇雪氏に同調し、口々に「そのとおりだ」と言った。

族長も頷いた。

今度はまごやん将軍が進み出て言った。
「族長、みょんだぜは族長に嘯き、皆を欺きました。即刻処刑し、軍紀を正すべきです。」

族長は「そうだな、やれ。」と言った。

すると部族の中でも比較的穏健派の武将たちは跪いて言った。
「お待ちください。みょんだぜはウンバボ族の中でもCWEの勝率が一番高い常勝将軍です。殺せば今後の禍になります。どうか斬らないでください」

族長は少し悩んで、机の上のお茶を飲んだ。そして言った。
「この茶は、梅の香りがする。梅の花と一緒に淹れたからだ。このように春爛漫として、雲も静かに流れ、大気は喜んでいる。今、人を斬れば必ず天を怒らせ、禍が起こることは確実だ。みょんだぜは私を欺こうとしたが、まだ罪を犯していない。よって罰は免れる。」

族長からの暖かい命令に、皆、春の訪れを感じるのだった。

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