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石垣であるということ

WoT界とは閉じたコミュニティだ。新入りが入れば、あっという間に食い尽くされる。
昨日と同じ人が、同じような内容を喋っているのを見かける。誰もが顔見知りだ。
毎日同じ内容のツイート、同じ人が同じ愚痴を吐き、同じ人が同じ人をブロックし、ケツブロされたらケツブロ仕返し、SPGはSPGを撃ち、4式は未だにHEを撃っている。
永遠に終わらない輪廻は全ての戦車がルノーFTに収束することを示している。

ウンバボで拠点戦を回すときは、大抵新しい要素を挟むのが定番になりつつある。そのくらいマンネリ化している。
つい先日のことだった。
私の友人"はっちーびー"は資格試験が終わって、ちょっと余裕ができたようだった。
それで、久々に拠点戦を回さないかという話になった。なんでもダメージを多く取ったら報酬を出すと言うんだ。 

なんだ6拠点戦か、何も用意することなんてあるまい。いつも通りTOGⅡを出して、「魚っ!魚っ!」と叫んでいれば勝てるわい。

そんな悠長に構えて、部族数名を適当に召集して、マッチング開始を押したんだ。

ところが、10分経ってもマッチしないではないか。
待ってくれ。
今日は金曜日で、いつもなら散々やっているじゃないか。やろうぞな6拠!

しかし運が悪かった。
今日はWG🍆がTier8拠点戦を回していて、他のクランも全部Tier8を回していたのだ。
なんてことだ。

ウンバボが6拠点を回すって言ってるんだから、世界はそれに合わせて回転すべきである。世の中狂ってる。涙で震えて怒りが止まらない。

私は何もかもが許せなくなっていた。
いい加減にしてくれ、俺が出せるTier8はKV-4クレスラスキーしかないんだ。Defenderもあるけど、クレスラスキーが僕の全てなんだ。あの得意げな、274aと同じ貫通の主砲は装填が9秒かかり、可愛く四角い後部砲塔は課金弾を弾き返せないだけの装甲厚だ。

あぁTier8なんて乗りたくないよ。
僕はTOGⅡに乗りたいだけなんだ。CGCでも良い。糞みたいなTier6車両をドバーっと出したい。
それでも必死の気持ちで、僕はTier8拠点戦の準備完了ボタンを押した。

次の瞬間、余りの事に僕は言葉を失っていた。
目の前には死骸になったクレスラスキーが転がっている。弾薬庫が爆発して、可愛い砲塔が吹き飛んでいる。
こんな、こんなことってないよ。例え隠蔽が死ぬほど低かったって、マリノフカ開幕30秒で見つかるなんて。

苦しい。

息ができない。

いやだ。

そこで思い出したんだ。あー 
人間ってちっぽけな存在だって。
この世界で、人間が作り出したゲームの世界でさえ、独りの人間の前には無力に爆散していく。その刹那、どんな奇声で叫んでも、「ダンヤクコガー!!!」とズピアーじみて叫んでも、爆発して消えていく命を止めることはできない。

空虚な時間だった。
一人の人間は石垣の石っころと同じだ。ちっぼけで、けれど在ることで、幾重にも重なることで強靭な壁を形成している。
けれど本人の意思で動くことも消えることもできない。
それに気づくことが、遅すぎただけだ。
死んだ戦車はガレージバックしても暫く帰ってこない。

静かに時は過ぎる。
外の空は、次第にオレンジに明るくなり、セミの声が響きわたる。鳥の鳴き声。
空はオレンジからブルーに変わり、雲の隙間に光が射し込んで大地を照らしている。

今、僕が見ている景色は、凄まじい勢いで変化している。

ああ!これだ!

やっと見えた!WoTの向こう側…静かでどこまでも綺麗な・・・僕が見たかったもの・・・

そう僕が・・・いや、私が、私こそがサイレンス・・・

インターネットを渡り歩いてまだ6年、色々なカテゴリを楽しみ、「消費者」として生きています。 そんな文化の消費者の毎日思ったことアレコレを書いていきます。雑記。