北勢出師につき
まだ冬の明けない頃の話である。
ウンバボ族の領土は暖かく、冬でも雪が降ることは殆どない。ゆえに常夏の王国と呼ばれる。眠りについても風は通らず、朝も寒さから布団に引き籠ることはない。
しかしながら一歩でも領域を出れば話は別で、特に北方の空気というのは乾燥しつつ冷え込んでおり、雪が降るのも少なくないのである。ゆえに作物を育てるのに不適当であるとして領土に組み込まれないのである。
当然ながら北の地域にも人は多く住んでいて、しかも部族に反抗的であるものだから、度々朝貢を断るばかりか武器を取って反抗を企てるので、大変けしからんのだ。
先月は族長自ら軍勢を率いて北方征伐に及んだ。これがかなり手こずって、出征してから半月経っても、族長は戻られない。
私は少し危惧していたことがあった。それは族長の寝所の件でのことだ。
族長は普段は寝る時に立派な寝具を使わず、薄い布かゴザを敷いて横になるだけで、深々と眠ってしまう。ところが今は冬で、しかも北国に出征とあっては、さぞかし身も心も寒い気持ちをしているに違いない。
私は気を利かせて、すぐに羽毛入りの布団と樫の寝具を作らせ、多めの兵糧と一緒に族長の元に送らせたのである。
さらに半月後、族長が意気揚々と勝利を収めて帰国したので、私は早速宮殿に赴き「寝所の具合はいかがでしたか?」と聞いた。
すると族長は、「なんだか気分が悪く寝心地が良くなかったので、敵の死体を丸焼きにする燃料に使ってしまった。今後はあのような物は必要でない。」と少々ご立腹であった。
私は深く頭を下げて、その場を去るしかなかった。
インターネットを渡り歩いてまだ6年、色々なカテゴリを楽しみ、「消費者」として生きています。 そんな文化の消費者の毎日思ったことアレコレを書いていきます。雑記。