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風寒く、月光淡く地を照らす

冬の寒さは、常夏と言われるウンバボ族の集落にもやって来た。ほとんど半裸の彼らにとっては、この寒さは堪える。

冬を越すために蓄えた食料を少しずつ食べながら、家で暖炉を囲むのである。

と、いうのは末端の部族の話であって、高級官僚の暮らすウンバボ大神殿地区はそうでもない。

大晦日が近づき、宮殿では恒例の「冬の宴会」が開かれた。酒を飲んだり肉を爆食いする一大イベントである。

まごやん将軍は漏斗を口に挟んでスピリタスを流し込まれている。ずぴあー将軍はカップラーメンに入っている謎肉を抽出してハンバーグにしたものを美味しそうに食べている。

私は酒がほとんど呑めないので、温かい湯をお碗に入れて、宮殿の中庭に出かけた。中の喧騒が遠くに聞こえ、大変静かである。

中庭は広い。木々の葉は全て落ちて、寒々としている。ふと池を見ると、水面に月が反射している。ちょうど半月くらいだろうか。

目が暗さに慣れると、月明かりが身体全体を照らし出して影を作り出した。その影を足の先から頭の先に向かって視線を動かしていく。

その先に、人がたっていた。

「族長」と声をかけると、たかし族長は静かに寄ってきた。

「息子よ、今は冬だ。朝は鳥が鳴き、昼は風冷たく、夕方早くに日が沈み、夜は月明るい。季節は移り変わり、東から出た日は西に沈む。しかし我々は繁栄を享受し、冬でも夏日のように暮らす。今の我々は、東から昇った日がまだ沈んではおらぬ。」

「族長、そうですね。」

「しかし時勢というのは人を待たない。ウンバボの神は時々理不尽なのだ。今は楽しく、繁栄を謳歌し凱歌を歌う。そして昇った日は必ず沈む。ならば、今の繁栄も仮初めにすぎない。」

私は頷いた。

「息子よ、ならばなぜ、今を楽しもうとしないのだ。今は山の高いところに居て、後は降りていくだけだというのに。今をお碗一杯の湯で満足して、次に腹一杯の飯をいつ食らうというのだ。」

私は反省して言った。「族長、私が間違っておりました。宴会に戻ります。」

族長と私は一緒に大広間に戻り、朝まで外に出ることはなかった。

インターネットを渡り歩いてまだ6年、色々なカテゴリを楽しみ、「消費者」として生きています。 そんな文化の消費者の毎日思ったことアレコレを書いていきます。雑記。