たまむし、コンスルになる
冬の風が吹き荒れている。
風は、大陸から日本海を経て雪となり、そこら中に吹雪をまき散らしていた。
寒い。
玉虫は温暖な山陽地方の出である。瀬戸内海は、稲を育てるより果物を育てるのに向いていると言われるほど雨が少なく、冬が来ても雪が積もる事はほとんどない。
寒さには強いと自負するこの男も、0度を下回るような気温の中では慣れぬ冷たい空気に苦しんでいる。
ウンバボ族の宮殿は静かである。朝早くに戦車兵が調練に出かけると、宮殿に残るのは官吏と大臣のみである。
宮殿の中庭を、その寒い風が駆け抜けている。その中庭を玉虫は独りで歩いてきた。副司令官クラスであっても、ウンバボの場合は護衛や秘書官を付けないのは慣例であった。
「副司令官たまむし殿が朝見される」
太鼓がなり、衛兵が敬礼した。
階段を上り、朝見の間に入ろうとした途端、衛兵が呼び止めた。
「申し訳ございません、お腰の剣をお預かりいたします」
玉虫はギラっと目を光らせた。
次の瞬間、剣を抜いてその一撃でその衛兵を切り捨てた。
「ぶれいものッ!」
「オイ、こいつを片付けろ。私は先日、宮殿内でも帯剣を許された。この者は族長の命が聴こえぬ愚か者である。」
玉虫は朝見の間に入り、一番奥の席に座った。
戦闘士官の1人が口を開いた。「族長はお出ましになりませぬか。」
玉虫は無愛想に答えた。
「族長は、趣味の野営の最中でございます。よって、御前会議は執政官の名の下に進めます。」
異を唱える者はいない。
先日、玉虫は副司令官としての任に加えて執政官の職務を賜った。
今やウンバボの首相的立ち位置にあり、権勢は族長に次ぐものであった。
「命令を出します。今後のウンバボの行く末がかかっている。」
命令書は以下の通りである。
「何かご意見は?無いようなら御前会議を終了する。募集要項については、また話し合いましょう。」
副司令官の半数が不在の会議では、もはや敵なしであった。
今や夕日となって沈むばかりのWoT界隈にとって、新人を獲得するのは至難の業になりつつある。
この難局を、なんとかクランを延命し続けるためには、綱渡りのような運営が必要であろう。
玉虫が朝見の間から出る時には、衛兵たちが先ほど切り捨てた者の始末を終えて、床を掃除しているところであった。
「ああ、血の穢れを残すなよ」
そう告げると、寒そうに身体を縮こまらせて去っていった。
インターネットを渡り歩いてまだ6年、色々なカテゴリを楽しみ、「消費者」として生きています。 そんな文化の消費者の毎日思ったことアレコレを書いていきます。雑記。