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【Edge Rank 719】続くもの、消えるもの。【たまのみか】


個性豊かなブロガー集団による共同マガジン Vol.719

「Edge Rank」 2020年3月20日号

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こんにちは、Edge Rank(エッジランク)です。
本号は、たまのみかがお届けします。

取材先がなくなるということ

いきなり物騒な見出しですが…。

何度か取材でお世話になった会社が今年なくなります。

ブロガーさんの中には記事にしたお店が閉店してしまった、なんて経験をされたかたも多いと思いますが、今回ご紹介する「北神急行電鉄」は鉄道会社。

地域のインフラを担う会社がなくなることってあるんだなあという気持ちです。

北神急行電鉄は神戸市の中心部と北部の住宅地の間の7キロ半ほどを結んでいます。

その区間のほとんどが六甲山を貫くトンネルで、途中には全く駅がない(つまり1区間のみ)というとても変わった鉄道会社であり、またトンネルのみの路線ということから建設費用が膨大で、その結果ひと駅だけなのに運賃がお高い…、という特徴もあります。

そのため、神戸市に暮らす友人に北神急行についてたずねてみると、ポジティブなイメージを持っている人はあまり多くなく、また市街地を走る神戸市営地下鉄と相互直通運転をしているため、北神急行に乗るために切符を買い直したり改札を通ったりという乗換が不要なので、地下鉄の一路線と思っている人もいたりして…。

そして、今年の6月、ほんとうに北神急行は地下鉄の一部となるのです。

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わたしが北神急行を取材させていただいたのは主にユニークな広報活動による沿線地域との関わりについて。現在の担当者の青木さんはご本人のバイタリティと小さな会社ならではの機動性を生かし、北神急行の認知度をなんとか上げられないかと様々な活動をされてきました。

当初は「非公式」としながらも北神急行のツイッターアカウントを個人で開設したり、数々のマスコットキャラクターを生み出して沿線住民以外のファンを増やし、それを活用して地元の企業・団体とコラボ企画を立ち上げたり…。

中でも萌キャラの「北神弓子」ちゃんは、そのコスプレをした女性が「会える萌キャラ・リアル弓子ちゃん」としてイベントに登場するなど、同じくほぼキャラクター化しているリアル駅長の戸出駅長(北神急行唯一の本物の駅長さん!)とともに大変な人気で、地元の献血イベントとコラボするとたちまち献血希望者が激増するのだとか。

元々は、なんとか北神急行唯一の駅・北神駅に降り立つ人が増えないか(つまり駅の収入が増えないか)ということから始まった試みでしたが、今ではツイッターの中の人としての青木さんを含む北神急行のキャラクターたちがさまざまな人や団体、企業を繋いでいます。

*萌えキャラでローカル鉄道を盛り上げる 「北神弓子」の地域貢献とは
https://maidonanews.jp/article/12239513

*会える萌えキャラ、駅長、中の人…「公式さん」全員集合の鉄道イベント全貌は?
https://maidonanews.jp/article/12581426

*千葉と兵庫、鉄道マンの絆 台風でSOS「電線ずたずた大変です」
https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/201909/0012741325.shtml

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6月に市営地下鉄の北神線として生まれ変わる北神急行電鉄。もちろん廃線となるわけではないので、会社がなくなると言っても地域住民が困るわけではなく、逆に高かった運賃が大幅に引き下げられるのでこれまでよりも利用しやすくなります。

ただ、鉄道ってただの交通手段ではなく、その地域の発展や文化とは切っても切れない関係のものだと思うのですよね。地域の活性化なくしては鉄道路線の存続もなく、鉄道路線があるからこそ地域活動も成り立っていく。

今後、北神急行の路線が市営化されて、地域とのつながりや路線のファンになった人たちとの関わりってどう変わっていくのかな、淡白なものになっていくのか、ひょっとしてさらに深いものになっていくのか。わたしはまったくの部外者ではあるのですけど、気になっています。


3月の共通テーマ「インドアを楽しむ」

今月の共通テーマは「インドアを楽しむ」。

気軽に外出することが難しいご時世ですが、せっかくならこの状況ならではの楽しみを見つけたいものですよね。

わたしはもともとインドア派ですので今回の騒動では特に不自由を感じることもないのですが、どうにかこの非日常感あふれる世の中の流れに乗りたい、と不謹慎ながら考えた結果、久しぶりに小説を読む日々を送っています。「人類滅亡もの」の(ほんと不謹慎)。

きっかけは「新型ウイルスが南極大陸を除く全世界に広まった」というニュースを見たこと。

「それって『復活の日』やん!」とSF好きなアカウントさんの多いわたしのツイッターのタイムラインが一気に活気づきました。

『復活の日』とは、昭和のSF作家・小松左京さんの小説。映画化もされ、『日本沈没』と並んで小松さんの、というか日本SF界を代表する作品です。

研究所から持ち出された新型のウイルスが事故で拡散してしまい、南極にいた人たち以外の人類が絶滅してしまう、というお話。途中、核戦争も勃発したりとなんだかめちゃめちゃドラマティックなストーリーで、なんとはなしに冷戦時代、そして日本の高度経済成長期のど~~んとした豪快さを感じたストーリーでした。

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同じく冷戦時代を舞台としたSF小説『渚にて』(ネビル・シュート著)も、人類滅亡後の南半球・オーストラリアに取り残され暮らす人たちを描いた作品。

北半球で起こった核戦争により汚染された大気がじわじわと地球全域に広がる状況下での物語です。オーストラリアやアメリカの海軍、原子力潜水艦が登場して話を進めたりもしますが、ダイナミックな『復活の日』とは趣が異なり、登場人物たちの淡々とした日常生活が丁寧に描かれます。

そして『復活の日』との最大の違いは「復活しないこと」。

困難な状況下でどう生き残るかではなく自分たちの人生を、世界を、どう終わらせるかというのが最大のテーマです。

いやはや、こちらの小説は読むのがつらかったですねえ…。映画化されたものを何度も見ていたのでストーリーは知っていたのですが、登場人物たちのほんとに何気ない日常の描写が、かえって過酷な状況を浮き立たせていて、想像以上に美しくもやるせない物語でした。登場人物が20代から30歳前後と若いことも、本来であればその先に当たり前の幸せがあったはず、と思わせて心が苦しくなります。

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今回読んだ滅亡もので最も今の状況に置き換えて読めたのは、大原まり子さんのSF短編小説。

『銀河ネットワークで歌を歌ったクジラ』という短編集に収められている『有楽町のカフェーで』と『薄幸の町で』の2篇は同じ世界で起こる物語。『有楽町-』は東京に住む若い男女のなんでもないお話なのですが、その後を描いた『薄幸の町で』では新型のウイルスにより人類が滅びつつあります。

舞台が日本ということももちろんですが、『復活の日』や『渚にて』のように世界の状況を俯瞰的に描写する小説ではなく、主人公が一人称で身の回りの状況を語っているので、実際世の中がどうなっているのかがはっきりわからず、またはっきりわかろうともしない普通の人物を取り巻く話であることが現実世界の自分とリンクします。

今回のウイルスが人類の生存をどうこうするというものではないとは思いますが、先の見えないまま世界がはっきりしないものに静かに翻弄される様は、もっと不気味さを感じるのかと思いきや、意外と静かなものですよね。

もちろん、トイレットペーパーがなくなったり、イベントが次々と中止になったりという直接的な影響や騒動はありますが、日々増えていく感染者の数を示すグラフを見てもいまいちピンとこない。

国際ニュースを見ると大変なことになっていることは理解できるのですが、どこか別の世界のできごとを見ている気がして、まさに小説の中の作り話を傍観しているような感覚です。

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3月の共通テーマは「インドアを楽しむ」です。
新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大を抑えるため、不要不急の外出を控えるようにとのこと。自宅で過ごす時間が増えた方も多いと思います。そこで、みなさんのインドアの楽しみ方をぜひ教えてください。

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編集後記

今回紹介した『渚にて』。

映画版は『ローマの休日』などで知られるグレゴリー・ペック主演の名作なんですが、スリラーサスペンス映画の名作『サイコ』でキレ過ぎな演技を披露したアンソニー・パーキンスが爽やかな好青年役で出演しているのも見どころなんですよ。

最近の映像につけられている字幕がちょっと大味なところが少しもったいないのですが、見終わったしばらく映画の世界観に惹かれるステキな作品ですので機会があればぜひ!

次号は3月24日(火)。奥野さんの登場回です。どうぞお楽しみに!

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次号もお楽しみにっ!!

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発行責任者: 奥野 大児
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